25

「そう……ですか……」

ソフィアはそう返ってくることがわかっていたのか、驚くこともせずに再び顔を伏せた。

「……襲ってくるのはクロックナンバーだけじゃないんだ。あの大統領サマと関わりがあるのかわからないけど変わった服装の奴らも襲ってきてた。そいつらはなんというか……。クロックナンバーみたいに引き際がわかってなかった。殺して……。動かなくなるまで攻撃を止めない連中でね。……そう。そうするしかなかった」

雫はどこか自分に言い聞かせるかのように話した。最後の方は呟くような声量になっていた。

「私……。本当に大変なことに首を突っ込んじゃいましたね……?」

再び顔を上げたソフィアは雫に向かって力なく微笑んだ。

「そうさ。何度も言うけど、恨むんなら自分の好奇心を恨みなよ。もう引き返せない。文字通り、死ぬまで付き合ってもらうよ」

雫は意地悪そうに笑うと、ソフィアに手を差し伸べた。

「えへへ……。頑張りますね……」

ソフィアは雫の手を取った。どこか力の籠らない手で。

 ◇

「なぜ……!? 何故です!! どうして急に、こんな……!」

苦しそうに肩で息をしながら、シサキが3人と1人の傍までやってきた。男3人が驚いて振り返る。

「おーおー、タフじゃねえか。もう歩けんのかよ」

カービーが拳を振り上げる。

「クッ……!!」

安易に近づいてしまった自分に心の中で毒づきながらシサキは防御しようとする。

「カービー。もういいっしょ。決着ついたって」

振り上げたカービーの手首をケインが掴んで止めさせる。

「不用意に女の子に暴力振るっちゃダメだぞ☆」

「女って言う前に敵じゃねえか」

ウインクするケインを見てやる気を失くしたのか、カービーがケインの手を振りはらう。

「決着がついたって……!? ば、バカにしないでよッ!!」

先ほどまで尻もちを着いてアワアワしていたミサキであったが、隙をついて立ち上がった。再び3人に対して構えを取る。

「ミサキさん……、だっけ? 無理しないほうが……」

「無理してないし! まだ全然元気だし!」

本当に心配そうに声をかけた勝平の言葉を遮ってミサキが吼える。まるで喧嘩のときの猫のようである。

「てめぇじゃなくて、自分の姉貴の方を見ろよ」

カービーが親指でクイックイッとシサキの方を指す。

「あっ……。し、シサキッ!! 大丈夫!?」

本当に気づいていなかったらしく、ハッとしたミサキは勝平たちを押しのけてシサキの元まで向かった。

「そこまで大事にはなっていません……。ですが、この状態で戦闘を続行しても勝ち目は……」

「ど、どうしよう……」

シサキの手を取り、自分の肩に回すミサキ。またしてもオロオロし始めた、刹那。

「グオッ……!!」

突如として森の中から黒炎の塊が一直線に飛んできた。それは、完全に油断していたカービーの身体に直撃した。

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