17
◇
「クソがッ!!」
そう言いながら放ったカービーの右こぶしは空を切った。
「隙だらけよ!」
ノーガードのカービーの背中にミサキが鋭い回し蹴りを打ち込む。
「ぐゥ……!」
クリーンヒットしてはいたが、小柄なミサキの攻撃では屈強なカービーを倒すには至らなかったようで、カービーの身体は揺らいだだけであった。
「こ、この子たち、随分とすばしっこいこと……」
「褒められているのかわかりませんが、一応ありがとうございます」
先にカービーのパンチをかわしていたシサキはケインの側面に回り込み、ケインの顔面に向かって裏拳を放つ。ケインはそれをギリギリのところで頭を後ろに引き、回避した。
「す、スピードで負けるなんて……」
勝平が動いているミサキに向かって蹴りを打った。素早いキックモーションであったが、明らかに素人とわかる、慣れていない蹴り方であった。
「へへ~ん。当たらないわよ!」
「うわッ!?」
ミサキは勝平の軸足を足払いで引っ掛ける。するとバランスを崩した勝平は地面に尻もちを着いてしまう。
「いててて……。……ってうわぁ!」
勝平は自分の顔に影が重なったことに気付き自分の上空を見上げた。すると目の前まで『靴の裏側』が迫っていた。
「ヒィッ!!」
勝平は慌てて横方向に転がって回避する。勝平の頭があった場所を凄い速さで靴が通過した。
「かわされましたか。聞いた通りのスピードですね」
攻撃の正体はシサキであった。倒れた勝平の顔目掛けて踏みつけによるストンプ攻撃を仕掛けていた。
「容赦がない!」
慌てて勝平は立ち上がる。このまま寝ていたらいい的である。
「カービー君! 神機使わせてよ! このままじゃどうやったって────」
「うるせぇ! 情けないこと言うんじゃねぇ!」
疲れ切っている勝平とケインに比べて、未だに闘志を宿した目をしているカービーが一喝する。
現在、カービー、ケイン、勝平の3人は雫たちから離れた場所にて、ミサキシサキコンビと戦闘中であった。
それもお互いに素手で。
男3人という圧倒的に有利とみえる条件であったが、カービーたちはミサキたちに翻弄されていた。
「荒舘彫耶さん。あなたも話に聞いた通りの人ですね」
シサキが少し距離を取り、カービーに話しかけた。
「あぁ!? なんだ話って」
パンチやキックを繰り出し続けていたカービーの動きも止まる。正直、休みを貰えるのはありがたかった。
「イーリス先輩に伺ったとおりという意味です」
「イーリス……先輩……だぁ?」
途端にカービーは噴き出して大笑いをした。あまりの大声に、ミサキ、勝平とケインの3人も驚いて動きを止める。
「ぎゃはははははッ!! あのクソガキが先輩だって!? 笑える冗談だぜ!」
カービーは腹を抱えて笑っている。
「お前ッ!! イーリス先輩に向かってなんてことを言うのよ!」
それを見たミサキが怒ってカービーを怒鳴る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます