18
「ハッ。見たまんまのこと言って何が悪いんだか」
変わらずにバカにしたような口調でカービーがしゃべり続ける。
「あなたたちは知らないだろうけどね! イーリス先輩は凄いいい人なのよ!」
ミサキも相変わらずプリプリと怒っている。
「『なんでも好きな物頼みなさい!』ってよくご飯奢ってくれるし、よく一緒に訓練してくれるんだから!!」
「ゲームで貴重なアイテムも頂きましたし」
ミサキ、シサキがそれぞれ簡単にエピソードを話した。それを聞いて男3人は────
「なんか……しょぼくなーい?」
「初めての後輩で凄い張り切っちゃってる先輩みたいな……」
「あとあと空回りするパターンじゃねぇのか?」
散々な言い様であった。
「ムキィーーーー!! それ以上イーリス先輩をバカにしないでよッ!!」
「おう、そのキレ方やめろや。あのクソガキと話してるみたいでウゼェ」
怒っているミサキを冷ややかに見つめるカービー。
「絶対に許さない! 泣いて謝るまでボコボコにするんだからっ!!」
明らかに頭に血が上っているミサキは再び構えて戦闘態勢に入る。
「落ち着いて下さいミサキ」
だがそんな今にも殴りかかろうとしているミサキの肩に手を置いてシサキが静止させる。
「その状態で闘ったら相手の思うつぼです」
「あイタッ!?」
シサキがミサキのおでこにデコピンを喰らわせる。
「イーリス先輩から話を聞いてるでしょう? あの3人のこと」
「そ、そうだった……。ご、ゴメン、ミサキ……」
「落ち着いたならいいです」
ミサキがシュンとしたのを確認するとシサキが男3人の方に振り返る。
「流石ですね。ミサキの性格を見抜いて、挑発して怒らせ、冷静さを失わせる」
「さて? なんのことだか?」
カービーがとぼけたように首を傾げる。
「イーリス先輩が言っていたとおりです。あなたたちの中で黒川雫さんの次に厄介なのが荒舘彫耶さん、あなただと」
「……俺は頭を使った戦い方は苦手なんだけどなァ」
「……ちなみに参考までにオレっち達のことなんてイーリスちゃんから聞いてるん?」
ケインがふと疑問に思ったのか、シサキに訊ねる。
「……まあ別に構いませんが」
シサキは顎に手を当てて考え込むような仕草をすると、最初にカービーを見た。
「荒舘彫耶さん。気性が荒く、馬鹿」
「いきなり言ってくれんじゃねぇかクソガキィ!!」
「……ですが、脳筋に思わせておいて意外に頭の回転が速く、周囲の状況を把握することに長けている」
「……」
「そしてイーリス先輩には劣りますが、一撃必殺のパワーを活かした攻撃には注意するように、と言われています」
「……俺の腕力がクソガキに劣ってるだァ!?」
「やっぱりそこに噛みついた!!」
今にも飛び掛かろうとしているカービーを勝平が羽交い絞めにする。「カービー君、落ち着いて! 今話聞いてる最中だから!!」とカービーを宥めようとする。
「……そしてあなた。須藤勝平さん」
シサキは今度は勝平の方を向いた。
「ぼ、僕?」
「あなたは闘いに慣れていなくて、素人同然の動きをしてくる。人なんて殴ったことがないような動きですらあると」
「そ、その通りだけど……。なんかショックだなあ……」
まだカービーを抑えつけながらショックを受けた表情を返す勝平。
「……ですが、とにかく足が速く、すばしっこいと。スピードを活かした死角からの攻撃と速度に乗ったときの攻撃の速さには十分に注意しろ、と言われています」
「褒められている……のかな……?」
勝平が複雑な表情になった。
「少なくとも今の私たち2人では荒舘彫耶さんのパワーを真っ向から受けることも、須藤勝平さんとスピード勝負をしても勝てない、と。だから私たちは私たちにしかない姉妹だから出来るコンビネーション活かして闘っているのです」
「言われてみれば……」
勝平は先ほどの戦闘を思い出した。戦闘中、勝平はこの2人が自分よりも素早い動きをしていると感じていたが、よくよく考えてみると、この姉妹が縦横無尽に目まぐるしく動き回り、強制的にターゲットを変えられていたことによる錯覚なのではないかと思えた。
「ねーねー! オレッちは? オレッちは?」
一人、取り残されていたケインが、子供のように挙手をしながらアピールしてくる。それを少しうっとおしそうに見ながらシサキが話し出した。
「長合ケインさん。あなたは────」
「うんうん!!」
「……イーリス先輩からはただ一言、とりあえずナンパに気を付けろと……」
「それだけ!?」
先ほどの勝平よりも明らかにショックが大きそうなケイン。普段から表情に出やすいが、それ故にわかりやすいほどショックを受けていた。
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