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「……そもそも『使う』ってことは、闘わなくちゃいけないってことですよね……」
ソフィアは緊張してか、ゴクッと喉を鳴らす。
このあいだの学校での事を思い出す。自分は結局一度も戦闘行為にならなかったが、話を聞くかぎりではケインたち男三人と美智はすさまじい戦闘を繰り広げたというではないか。たった一度しか模擬戦をしていない自分がついていけるのだろうか。
「そう不安がらなくても大丈夫だ。今後どうなるかわからないが、今回はただ目的物を回収するだけだから。任務だとか考え込まずに、軽い旅行だと思って行ってくればいい」
「はい……」
ソフィアは今になって自分の置かれている状況を考え始めた。最初は、ただの好奇心で首を突っ込んで行ったことだが、気付いたら大ごとになっているのではないか。
……もはや自分の意思で自由な行動をすることが出来なくなっている時点で、置かれている状況はよくないのだが。
ソフィアは首を振って考えることを止めた。もうどうやったってなるようにしかならない。自分の好奇心のせいでこうなっているんだ。誰かを責める気なんてさらさらないし、そもそも理不尽な怒り自体を感じない。
だが
(死ぬのは嫌だなぁ)
このあいだのテトラとの会話で、護身用の神機くらい持たせてやったらどうか、ということをテトラが雫に言っていた。
つまりどうやっても今後、護身をしなくてはいけない状況がやって来るということではないのか。
不安を覚えながら、帰ってきたら雫にまた模擬戦をしてもらおうと考えるソフィアであった。
◇
「それじゃあ起動する」
「あいよ。頼むわ」
雫たちは研究室に設置されている直径三メートル程の円柱型の台の上に立っていた。その台の下でマーベルがなにやら機械を操作している。
「この異世界渡航機で回収物の近くまでは送れるが、目の前というわけにはいかない。到着したら参考資料とやらを頼りに探すんだ」
「オッケー。……ところでマーベルちゃん。こんな大きい異世界渡航機どうしたのん?」
ケインが自分の足元とその周りを見渡す。先日、神霊世界で見た異世界渡航機と似ている形をしていた。大きさはこちらの方が少し大きいが。
「造ったんだよ。……どうもこのあいだ神霊世界から帰って来てから雫が躍起になっててね。私も徹夜で手伝わされた」
「マーベル!! 余計なことは言わなくていいんだよ!」
雫が唇に人差し指を当てて「シーッ! シーッ!」と静かにするようにジェスチャーをする。
「気にしてんじゃねぇか……」
「ど、ドンマイ! 雫君!!」
「ば、バカにしやがって……」
カービーから憐みの籠ったまなざしを、勝平から励ますような眼差しを向けられ、雫は恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。
「……いいかな? 転送開始しても」
「オッケー」
再びケインが返事をする。
「よし。それじゃあ────、無事に帰ってくるんだ」
そう言ってマーベルが画面画面に触れた。すると雫たちが光の球に飲み込まれ、一瞬後に光が消え去るとそこには誰もいなかった。
「……なにか妙な胸騒ぎがするが……。何もないといいんだが」
ソフィアを安心させるためとはいえ、無責任に大丈夫だと言ってしまった。
実は今日朝起きてから妙な胸騒ぎを覚えていたマーベルであった。こういう時に限って嫌な予感が当たることが多い。
「……? 連絡? ……ミヤコからか」
ポケットの中で着信音を鳴らした神機を取り出すと、マーベルは電話に出た。
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