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「そもそも神具ってなんなんですか? 神機とは違う……んですよね?」
ソフィアは不思議そうにヴァルハニーロを見つめながらそう聞いた。今思えば、貰ったものではあったが、ヴァルハニーロについてなにも知らないままであったことを思い出した。
「そうだね……。どう説明したらいいのだろうか。……神機は『現在』作られた物で、神具は『過去』に作られたもの、とでもいえばいいのか」
「はあ」
いまいち理解出来ていない様子のソフィアであった。
「もっと詳しく言うと、神機はどこの誰がいつ作ったかわかっているもの、神具は気が遠くなるほど過去の時代に誰かわからない人物が今となってはどういった目的で作ったのかもわからない物、ということになるかな」
「えーっとつまり……。化石とか土器的なものなんですか?」
「その認識で間違ってない。実際に古代の地層から掘り起こされるものも多いものでね。今回、キミたちが回収に向かう物も、おそらくは何かしらの原因で地上に現れたものだと思う」
「へぇ~。じゃあこのヴァルハニーロもどっかの遺跡から出てきたんですか?」
マーベルはヴァルハニーロを持ちながら難しい表情をする。
「いや、これは少し特殊でね。私の恩師から譲り受けたものなんだが……。扱える者がいなかったらしく、長い間博物館で誇りを被ってたらしい」
「扱える者……?」
ソフィアは首を傾げた。その辺の情報も自分は何も知らないでヴァルハニーロを受け取ってしまった。
「特殊な神機はともかくとして、神具というものは誰でも扱えるわけではない。精霊が生まれつき備わっている、神機適合係数というものが、その神具に合った数値に達していないとまともに使用できない」
「わ、私は大丈夫なんですか……?」
ソフィアが不安そうに尋ねる。
「キミは驚くほど神機適合係数が高い。『波長』もそのヴァルハニーロにピッタリと合う。……この神具がキミに何か語り掛けてくる。そんな感じはしないか?」
「……」
そう言われたソフィアは真っ直ぐにヴァルハニーロを見つめる。……そう、なにか意識が吸い込まれそうな、そんな感じが────
「まあ冗談なんだが」
「えぇ……」
「神具に意識なんてあるわけない。所詮は機械だ」
「はぁ……」
ソフィアは気の抜けた返事をする。……確かに今妙な感覚を感じた気がしたのだが。
「さらに詳しく説明すると、神機、神具には用途、神機適合係数、希少性、性能を踏まえてランク付けされることが多いんだが……。この話はまたいつかでいいだろう」
「そ、そうですね……。これ以上知識が増えたらこの後のことに集中出来なくなっちゃいますし」
「ちなみにそのヴァルハニーロは『S+以上』というランク評価になっている」
「えすぷらす以上?」
内心で(説明するんだ……)と思いながらソフィアは聞き返した。
「つまり、最高級品ということだ」
「なんかそんな感じはしましたけど……。でもいいんですか? そんな貴重なモノを私にプレゼントしちゃって。さっき恩師から譲ってもらったって言ってましたけど」
「ああ、いや……。さっきも言ったがもともと博物館にあったものらしいんだが、そこが閉館になって、館長の知り合いの私の恩師に譲られたみたいでね……。そもそも私の恩師が神具には興味が無くて、成り行きで神機の研究をしていた私にくれたものなんだ。だけど私ではまともに使えなくてね。雫や他の三人もダメだった」
「それで……使える私に、ってことですか?」
「ああ。もちろん譲った手前、データは取らしてもらうが構わないかな?」
マーベルはヴァルハニーロをソフィアに差し出した。
「それは別にいいですけど……。本当に私に使えるんですかね……」
ソフィアは自信なさげにヴァルハニーロを受け取る。このあいだと変わらず、見た目より軽く感じる。
「それを片手で持てている時点でだいじょうぶだろう。神機適合係数が合わないと、そもそも持ち上げることすらできないから」
「はあ」
ソフィアはヴァルハニーロを持った右手をダンベルのように上下に動かす。特に振り回しても支障はない重さに感じた。
「あっ」
そう言えば、とソフィアは先ほどの光景を思い出した。マーベルがヴァルハニーロを持ち上げたとき、少し重そうにしていたことを。
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