ファーストミッション!!

「楽にしていいわよ」

そう言うとユノはソファの背もたれに寄っかかり、足を組んだ。

「……別に気を張ってたつもりはないんだけどな」

ユノの正面にある高級そうなテーブルを挟んだ反対側、どこか不機嫌そうな表情をした雫がソファに座っていた。

「……」

その雫の左隣にはユノを睨みつけているカービーがおり、そのさらに左隣には勝平が、雫の右隣りにはケイン、さらにその右隣りには不安そうにキョロキョロしているソフィアが座っていた。

「で。なんなんだオレたちをまとめて呼び出して?」

「このあいだ言ったでしょ。また後日改めて来てもらうって。そろそろ落ち着いたと思ったから呼んだのよ」

「落ち着けるかよ、コッチはいろいろと────ああ! そうだ!」

話している途中で雫は何かを思い出したような反応をした。

「どうなってんだ! つい先日クロックナンバーに襲撃されたんだ! あんたの話と違うじゃないか!!」

雫が責めるような強い語感でユノに話す。だがユノはどこ吹く風といった様子で、気にも留めないように紅茶を啜る。

「ああ、あれね。なんか指示が食い違ってたか、伝わる前に行動しちゃってたみたいなのよねぇ。困った困った」

「クソッ……。こっちが何も知らないからって……」

「……おい雫」

舌打ちしつつユノを睨みつけている雫に、カービーがそっと耳打ちしてきた。

「オメェの話だとこの精霊、どうにも食えねぇ奴みたいだが……。大丈夫なのかよ。装備置いて来ちまってんぞ」

「荒事にはならないと思うけど……。なんにせよ精霊王相手に戦いはできないだろ?」

「つってもよぉ。神機が有るのと無いのとで全然チゲェだろ」

「それはわかるけども。ヘタに持ってきて、手荷物検査で没収されるわけにもいかないだろ。特にケインの神機は。実際に手荷物検査はされたんだからこの場に持ち込めなかったさ」

「まあ……。そりゃそうだが」

無理やり納得した形でカービーが雫の耳元から顔を離す。

「内緒話は終わった? そろそろ本題に入りたいんだけど」

雫とカービーの会話中も特に気に留めずに優雅にティーカップを傾けていたユノ。「おかわりを頂戴」と言って横に立っていたネスにティーカップを渡す。

「呼び出したってことはなんか重要な話があるんだろうなとは思っていたけど。早くしてくれ。もう何言われても驚かんぞ」

「あらそう? それじゃあ言うけど」

ユノは一度瞳を閉じるとグッとテーブルの方に身を乗り出した。

「「「「「……」」」」」

五人に緊張が走る。

「最初の命令よ。神具を探してきてちょうだい」

「……は?」

雫は意味不明といった表情でユノに聞き返した。他の四人も────そもそも言葉の意味を理解できていないソフィアも含んでポカンとしている。

「そのまんまの意味よ。神具を探してきて欲しいの」

「いや……。いや、言葉の意味はわかる……! 神具を探してこい? そもそも最初の命令ってなんだ?」

雫は混乱しているようだった。

「ユノ。貴女の悪い癖よ。いきなり過程を飛ばして話始めるのは」

見かねたネスがティーカップをテーブルに置きながらユノの隣に座る。そのまま優しそうなまなざしを雫たちに向ける。

「ゴメンね。いきなりで混乱しただろうけど、あなたたちに異世界で探し物を見つけてきて欲しいのよ」

「神具を?」

「ええ。それが最初のミッションよ! 頑張ってね!」

応援するようにガッツポーズを雫たちに向けるネス。……どうもネスも説明が得意ではないようであった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! いろいろ聞きたいことはあるんだが……。命令? ミッション? ……なんのことだ、いったい」

雫は嫌な予感を感じながらもネス達にたずねる。

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