16

「へっ……。ど、どうしたよ? だいぶ苦しそうな顔してんじゃねぇか……」

「あ、アンタこそ……。汗凄いけど? 限界なんじゃないの?」

2人とも、目に見えて苦しそうな表情をしていた。

片方が僅かに押し込んでも、すぐに同じくらい押し返されるというやり取りを繰り返していた。

「アルノードなんかに負けるのは……プライドが……許さない……のよッ!!」

「ぐぬッ!?」

イーリスが目を見開き一気に力を込めた。すると、「ドゴォッ!!」という音と共にカービーの足元に巨大なクレーターが出来た。

「て、テメェ……」

「こ、このまま押しつぶしてあげる!」

イーリスがさらに力を込めようとする。

「なめんなクソガキィ!!」

「ギャン!!」

だがそれより早くカービーが反撃に出た。押される側にまわったイーリスの足元には同じような音と共にクレーターが出来る。

衝撃に驚いたイーリスは思わず妙な声を出してしまった。

「お返しだぜ……! もっと身長縮めてやるよ……!」

「こんのぉ……!!」

なんとか態勢を立て直したイーリスはカービーからの圧を受け止めきる。

再び拮抗状態になってしまった。

「……!!」

「……ッ!!」

もはやお互いに言葉を交わすことは無くなったカービーとイーリス。ただただにらみ合うだけである。

「……これ、いつまで続けんのん?」

「さあ……? どっちかが「参った」って言うまでじゃない?」

「二人とも負けず嫌いだから言いそうにないけど。……てか、二人とも腕どころか足もガクガクしてるし」

「止めた方がいいのかなぁ」

外野二人は相変わらずのんびりしていた。

 ◇

「……ん?」

バンテージは訝しげに美智を見た。戦闘中だというのに武器を納刀して、瞳を閉じている。

「……ああ、そうか。そういうことか」

バンテージのマントで覆われている口元がニヤリと笑った。すぐに自分の刀を構え直す。

それとほぼ同時に美智の瞳が開かれた。

「……行くぞ」

一瞬の出来事であった。

小さな掛け声と共に美智は目にもとまらぬ速さで駆け出し、バンテージとの距離を詰めた。

そしてその直後、「ギィン!!」と鈍い音が響く。

「……!!」

美智は驚愕したように目を見開いている。

「……相変わらず『居合』のスピードはすさまじいな」

バンテージは膝下辺り目掛けて一閃された美智の刀を、自分の刀で受け止めていた。

そう、「受け止めていた」という表現が正しかった。

「なんてこった……。止められないようにワザと急所を外したのに……」

美智は諦めたような表情で自分の刀の先を見た。

美智の刀はちょうど刀身の真ん中辺りで真っ二つに折れていた。

「防がれるのを恐れて、胴体を狙うように見せて足を狙ったのは良い判断とは言えないな」

「ぐっ……!」

バンテージは美智の喉元を正面から鷲掴みする。

「まだ遅いな。私を捉えるにはまだ遅い。それに────」

バンテージは喉元を掴んでいる手に徐々に力を入れ始める。

「う……、ぐ……」

「仮に防がれてもその速度と威力で相手の防御を切り崩せる『固さ』の刀を持たなくては意味がない」

バンテージは苦しそうにもがいている美智の身体を軽々と片手で持ち上げた。

 ◇

「二人ともー。もうそろそろいいんじゃないのー?」

「なんかミシミシ音が聞こえるんですけど……」

相変わらず力比べをしているカービーとイーリスに勝平が声をかける。

ケインの言う通り、二人の手元からはミシミシと何かが軋む音が出ていた。

「ほらー。二人ともー」

「うるせぇ! 引っ込んでやがれ!!」「うっさいわね! 引っ込んでなさい!!」

「えぇ……」

勝平の必死(?)の仲裁は当事者たちの大声にかき消されてしまった。

「ど、どうしよう、これ……」

「やっぱり決着まで待たなくちゃいけないのん……? てか二人とも、このままだと本当に取り返しがつかないことに────」

そのときであった

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