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放課後
塔音学園近くの公園にて。
「ほーらまた付いてきちゃってんじゃん」
雫がいつものベンチに座りながら横を向いた。
「もう隠れる気も無いみたいだね……」
勝平もどこか呆れたように同じ方向を向いた。
「……」
そこには少し離れた木の陰に体を隠して顔だけ出しているソフィアがいた。表情は相変わらず期待に満ち溢れており、雫たちと目線があっても隠れようとしなかった。それどころか手を振っている。
「誰か、隠れる努力だけはするように言ってやれや」
「でもソフィアちゃんが本気で隠れようとしたらオレっちたちだと気が付かない可能性が……」
雫、カービー、ケイン、勝平の四人は同時にため息をついた。
「……ヴェジネさんをどうするかの会議してるんだから、もういっそヴェジネさん呼んでくればいいんじゃない?」
「いやいや勝平。ソフィアちゃん来ちゃったらまたマシンガン質問攻め攻撃されてお話にならんしょ」
「一応本人も気を使って隠れてるつもりなのかね……」
そう言って雫が再びソフィアが隠れている木の方を見た。
だが
「……あれ?」
そこにソフィアはいなかった。てっきり木の後ろに完全に隠れたのかと思ったが、木は太くなく、ソフィアの身体をすべて隠すには細すぎる。
かといって別の場所に移ったのかと思ったが、近くにはその木以外に身を隠せるものは無かった。
「ソフィアさんいなくね?」
「ほんまや。居なくなっとるやん」
ケインがイントネーションが無茶苦茶の関西弁で答えた。
「んだよ。どこに行きやがっ────」
突然、そこまで言いかけたカービーが白目を向いた。そのまま前のめりになり、ベンチに座っている勝平に向かって倒れ込む。
「ちょ! カービー君!?」
「どうしたカービー!!」
雫はカービーの身体をゆすって安否を確かめる。するとカービーの首の後ろになにか違和感を覚えた。
「……ん? これは……」
カービーの首すじにはなにか細い針のようなものが刺さっていた。雫はそれを引き抜く。
「な、なにそれ……」
「わからん。だけどカービーは無事みたいだ」
雫はカービーの顔に手を当てる。どうやら呼吸はしており、気絶しているだけのようであった。
「てゆーか、敵襲ってことっしょ!」
ケインが用心深く辺りを見渡す。だが公園内はおろか、近くの道路にも人はいなかった。
そう、この時間なら普段は親子連れで賑わっているはずの公園に雫たち以外に人がいなかった。不気味なほどの人気のなさであった。
「おかしい。静かすぎる」
雫は立ち上がりケインのように辺りを見渡した。明らかになにか意図的な何かを感じた。ただひたすらの無音。だが張り詰めたも空気を感じた。
「こ、この世界で奇襲なんてするの……?」
勝平は恐怖を感じているのか、カービーの身体を支えながら不安そうにしている。
「『クロックナンバー』だったら今までにそんなことはしなかった。……だけどこれは」
そのとき
「ッ!! ケイン、伏せろ!!」
「いッ!?」
雫がケインの襟元を掴み、そのまま地面に引きずり倒した。ケインの頭があった場所を何かが高速で通り過ぎていった。
「な、なにさ大将!」
「狙撃だ! あの屋根の上でなんか光った!」
そう言って雫が遠くの民家を指差す。
「な、なにあれ……」
勝平とケインが指さされた方を向く。そこには遠くてはっきりしないが、煙突とは違う、明らかに異物感のある黒いモノが蠢いていた。
「とりあえずカービー連れて逃げるぞ! ケイン! カービーを背負ってくれ!」
雫がそう叫ぶ。が、ケインは動こうとしない。
「何してんだ! さっさと────」
「し、雫君……。あ、あれ……」
勝平が恐る恐るある方向を指差す。
「なんだよ! って、え────」
雫は振り返って勝平の指差したほうを見る。
そこには黒い人型の何かが立っていた。
「!?」
雫は驚いてたじろぐ。無理もない。
勝平に指差された方向だけでなく、いつのまにか雫たちを取り囲むように黒い人型が十人近く集まっていた。
「屋根に気を取られているあいだに……」
「ど、どうすんの大将……」
焦ったような表情で辺りを見渡している雫。なにか脱出口はないかと探しているが、そう考えているあいだにも黒い人型はジリジリとこちらに詰め寄ってきている。
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