8

次の日の昼休み。カービー、勝平、ケインの三人は校舎から離れた位置にある体育倉庫の裏に来ていた。

「雫のやつ、来ねぇなぁ」

「そうだね。連絡も無しに昼まで来ないなんておかしいよね」

勝平がスマホを取り出して画面を確認する。雫からの連絡は来ていない。

「……もしかしてまた『襲撃』にあったんじゃないのん?」

ケインが飄々と、だが心配そうに言う。

「おい待て。変なワード出すな。ヴェジネのやつ、近くにいないだろうな?」

「大丈夫だよ。ちゃんと撒いてきたから」

カービーたち三人がわざわざこんな場所に集まっているのはソフィア対策のせいである。今日も朝から三人はソフィアの質問攻めにあっていた。前述のとおり、雫が朝からいないため、ソフィアはカービーたちの方に聞きに言っていた。

「どうしようもねぇな、あの好奇心には。……ところで勝平、どうやって撒いてきたんだよ」

「ああ、ヴェジネさんに『昼休みに昨日と同じ屋上前に来てくれれば秘密を話すよ』って言ってきたんだ」

「うわぁ、勝平、女の子騙すとか……」

「ヒデェ野郎だな」

「二人がヴェジネさんをどうにかして撒いてこいって言ったんじゃないか!」

勝平が引いたような目で見てくるケインとカービーに食ってかかる。

「まあそんなことよりも、だ。ヴェジネがいねぇなら続きを話すぞ」

カービーが仕切りなおすように大き目の声で話す。

「そんな事!? 僕とヴェジネさんに失礼じゃない!?」

「まあまあ、落ち着くんだ勝平」

ケインがどうどうと勝平を落ち着かせる。

「今まで二日連続襲撃とかあったか?」

「まったく、もう……。……でも、ないよねぇ。雫君がこんなに長い間音信不通になることもなかったし」

「……大将の家に行ってみる?」

「そうだな。それが一番安否を確認するには手っ取り早いだろ」

カービーとケインが校門の方に向かって歩き出す。それを見て慌てて勝平が二人を呼び止める。

「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも! 今から行くの!?」

「当たり前ぇだろ。もし昨日のうちになんかあったんだったら、手遅れになっちまってるかもしれねぇし」

「そうそう。今だったら大将の残した手がかりを辿ればどこにいるかわかるかもだし。……あれぇ? もしかして勝平、学校サボるのが怖いのかなぁ?」

ケインがからかうようにニタリとした笑みを勝平に向ける。

「べ、別に怖くないよ! た、たまには僕だって不良になってやるんだ!」

「オメェは真面目過ぎるんだよ勝平。どうせ俺らとつるんでる時点でセンコウどもの評価は最低レベルだぜ?」

「そうそう。今更気にしたってしょうがないって~」

「ううぅ……。通知表には『真面目で先生の手伝いを進んでやってくれる良い子です』って書かれてたのに……」

あっはっはっと笑いながら歩いていくカービーとケイン。その後ろをトボトボと勝平がついて行った。


だがそのさらに後ろにもう一人隠れてついて行こうとしている影には三人とも気付けなかった。

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