優しさが欲しい彼女

正気ではとても頑張っていける世界ではない

彼女はよくそう考えていた。だって世の中に一体どれくらいの無償の優しさがあるというのだろう。会社の中、家庭の中、学校の中、母親のお腹の中にさえ優しさは含まれているのだろうか。何も信じられないと彼女は言った。

私の大好きなお母さんもかっこいい彼も親切な友達でさえ優しさに欠けているのよ。私だってそう。ほんとの優しさを一瞬でも感じられない限り私は生きていけないわ。


僕は四六時中本を読んだり今は時代遅れの素晴らしい古い音楽を聴いて1日1日を潰していた。くだらない大学を辞め、現代社会のシステムから一時的に降りていた 。

ある日深夜にさしかかろうという時間僕は友達との飲みを抜け出して街灯がオレンジ色に照らす国道沿いをぶらぶらと歩いていた

すこし通りに入り街灯もまばらになった細い道に彼女はうずくまっていた


どうしたの と僕は声をかけた

彼女は身動きひとつとらず顔を膝に埋めていた

彼女の方に触れると痙攣を起こしたように彼女の体が揺れた


すると僕は高い木が生い茂り月の光をもさいぎるような暗い森の中にいた

一体何が起こったんだ?と僕は後ろを振り返った酔って幻覚を見ているのだろうか?いや、今までの女の子が幻想で今実際に暗い森に一人で迷い込んでいるのだろうか?


ねえ、と僕の目の前の木の陰から女の声がした

誰?とぼくはその木に向かって声を返した

そんなことはどうでもいいの、あなたはなんでここにいるの?とその声はいった


どうしても何も僕だってここがどこでどうしてこんなところにいるのかさっぱりわからない、もしよければ国道までの道を案内してくれないか?

ここがどこかわからない?と彼女は木の陰から姿を表して言った。

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