第2話


「入学生の皆さん、初めまして。私はこの桜木高校の校長の━━━━━━━━━」


入学式の校長先生の話は夢桜の耳には入っていなかった。


夢桜は、吹奏楽部の人達を見ていた。


入学式の日は、吹奏楽部の人達が演奏をしてくれるから、夢桜の座っているところからでも十分に見える。


(あれが……吹奏楽部……!!)


キラキラと憧れの目で見ていると、1人の男子が夢桜に気づいた。


(やばいっ……)


目が合った。夢桜は咄嗟に目を逸らす。自分でも顔が赤くなっているのが分かった。


恥ずかしくて、真面目に校長先生の話を聞いているフリをする。


集中できず、目を泳がせていると、ついに待ちに待った吹奏楽部の演奏が始まった。


みんなが吹奏楽部の方を見ている。自分だけ真っ直ぐ向いているのはおかしいので、夢桜も吹奏楽部の方を見る。


その瞬間、体育館中に音が響いた。

綺麗という表現では表しきれない音が。


夢桜はその音楽に聴き入っていた。


ふと、あの目が合った男子の事が目に入った。


その男子は、音楽を楽しんでいるように、遊んでいるように、音を奏でていた。


夢桜と同じ、トロンボーンを吹いている彼に、目を奪われていた。


いつの間にか、吹奏楽部の演奏は終わっていて、夢桜は精一杯の拍手を送っていた。


(すごい……!!)


自分もこんな風になりたい……


夢桜はそう思い、吹奏楽部に入った。


楽器は、中学の頃からやっていたトロンボーンで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る