まだ忘れてない言葉
お兄ちゃんに嫌われていた。わかっていたことだ。あの冷え切った6年間で妹を好きになれる人などいない。
でも、だから次は好きになってもらいたくて。言葉を伝えて。
お兄ちゃんは顔を真っ赤にして、眉間にシワを寄せ、怒っていた。
自分勝手な私に怒っているのだろう。前は嫌いでした。今は好きです。そんなの信用するほうがありえないって小学生の私にもわかる。
でも不思議と、怒りは私に向いてない気がした。いや、明らかに私じゃない誰かに怒ってる。
つかつかとお兄ちゃんが近寄ってくる。右手を振り上げる。ぶたれるのだろうか。それもいい。罰して許してくれるならそのほうが100倍マシだ。
でもその右手は私の涙を拭いていた。
「早速泣かしちゃったな。お兄ちゃん失格だ」
笑っていた。
「……怒って……ないの?」
「? 怒ってないよ?」
「でも会っていきなり「好きです」には対応できないよ……
だって恵憂は妹なんだから。
嫌いじゃないよ。だから泣かないで」
お兄ちゃんの優しい微笑み。
「恵憂。本当にキレイになったね」
お兄ちゃんは忘れていなかった。あのときの気持ちを。あのときの言葉を。
胸がときめいた。このままじゃ私の心は壊れてしまう。
だからそのままちょっと背伸びして兄ちゃんにキスをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます