持ってはいけない感情

 いきなり恵憂にキスされた。その前から恵憂が俺を見る目が昔と違っていたのは気づいていたけれど。

 それが恋愛感情ということには思っていなかった。

 

 だって俺が恵憂に抱いていた感情と同じだったから。


はじめて「お兄ちゃん」と呼ばれたとき、別れの場面だったけど俺は、深い後悔をした。だって恵憂のことを妹以上に思っていたことに気がついてしまったから。

 なんだ。好きだからどう接していいかわからなくて仲が冷え切っていたことに気がついてしまった。

 父さんに何度も訴えた。お義母さんと恵憂と一緒になりたいと。でも復縁はしない、と。それほどまでに俺と恵憂は仲が悪かったから。


 そして事故があり、お義母さんが引き取ると言ってくれたとき、今度こそ恵憂を大切にすると心の中で誓った。


 告白をして。俺が反応できなくて。空白の時間ができてしまったのが、致命的だった。目の前で恵憂がボロボロと泣き始めた。

 それは俺にとって1番許せないことで。泣かせてしまった自分にひどく怒りが湧いた。

 

 自然と恵憂に向かって歩いていく。恵憂はビクッと体を硬直させる。

 愛おしい妹。両の手で顔の涙を脱ぐてあげる。

「恵憂、本当にキレイになったね」

 その1言で俺の胸に飛び込んできた。

 

あぁ愛おしい。

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