2、手紙2

 主人はいわゆる幽霊や魂といったものをまるで信じないたちで、わたしの話も寝惚けて夢でも見たのだろうと取り合いませんでした。

 しかしそんな主人も、見えないながらも、何かがいると信じざるを得ない出来事が起こるようになりました。


 あの夜以来、子どもたちの足音は聞こえなくなりました。その代わり、わたしは夜中寝ていると誰かがじっと見ている視線を強く感じて目を覚ますようになりました。

 収まっていた下の子の夜泣きがまた激しくなりました。わたしには原因が分かっています。あの子どもたちがそこに、部屋の外にいて、じいっとわたしたち親子を見ているのです。下の子はそれを敏感に感じ取って泣くのです。しかしそんな事情をまったく知らない主人は、息子の夜泣きをなんとかしろとうるさそうに言い、わたしはそんな主人の無神経さに腹立たしくなじることをするようになりました。わたしたちの夫婦仲が悪くなったせいでしょうか、明るく元気だった上の息子までわたしどもをじっと睨んで涙ぐむようになってしまいました。


 そして、ある夜、わたしは心身共にぐったり疲れ切って眠りこけておりましたが、下の子の夜泣きと共に、上の子の泣き叫ぶ声にギョッと起き上がりました。わたしは悲鳴を上げました。あの小学生の男の子が、上の子の髪の毛を引っ張っていたのです。暗い中ですが、その子は、鬼のように怖い顔をしていました。わたしは、何をするの、やめなさい、と叱りつけてその子の手を払い、息子を抱きしめました。あっちへ行って、と叫ぶわたしにうるさそうに目をこすりながら主人は文句を言いました。わたしは主人の無神経に我慢ができず、あなたこそいい加減目を覚ましてちょうだい、と怒鳴りました。不服そうにムッとした主人が、ひゃあっ、と気色の悪い悲鳴を上げました。何かが触ったと言うのです。主人は二度三度と悲鳴を上げて、何か、を手で追いやりました。息子にもわたしにもそれが見えておりました。あの小学生の男の子が主人にじゃれついているのです。わたしと子どもはもう恐くてたまらず、主人を置いて三人で居間へ移動して一夜を明かしました。


 以後わたしと子どもは主人とは別の部屋で寝るようになりました。夜中の視線はまだ感じます。しかしわたしたちが気付かない振りをしているとわたしたちの部屋は素通りして、どうやら主人のところへ遊びに行っているようです。時たま主人のうなされる声が聞こえてきます。でもわたしも恐くて何もしてあげられません。

 主人はいまだに霊の存在に半信半疑でいます。けれどこの二ヶ月間、目に見えて痩せて、やつれてきています。このままでは主人があの子どものお化けに取り殺されてしまうのではないかと心配でなりません。

 スタッフの皆さま、どうか、どうか、わたくしども家族を助けてください。どうか霊能師の先生に視ていただいて、この恐ろしい現象がなくなりますよう、なにとぞ、お力をお貸しください。

 本当に困って、まいっております。どうぞ、どうぞ、助けてください。」

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