第3話 中学生でのつっかえ

そんな風に、思い込むようになった私は、とにかく、やりたくない事はやらない、学校の先生は信じない、憎しみばかりが心に渦巻き、全てを嫌うようになっていきました。そんな中で、いじめもあって、私を標的とした男子からのいじめが、学年問わず、ありました。酷い時には、朝、登校するなり、昇降口で、下駄箱に外履きを入れ内履きに履き替えると同時に、当時、私は4年生で、6年生の男子から、お腹を力の限り、グーで殴られ、息もつけないほどの痛みで、しゃがみ込んだこともありましたが、私の事を信じてもくれない先生に言ったところで、どうせまた、私が悪くなるだけと、何も言いませんでした。

家に帰っても、問題のある家庭だったため、母は毎日のように、泣いていましたので、そんな母に心配をかけまいと、いじめの事は黙っていました。

そうして、中学に入学。

やはり、中学に上がっても、言葉でいじめられたり、そのころになると、数学など、全く理解出来ず、どんどん勉強が出来なくなっていきました。

友達を作りたくても、怖くて声もかけられず、その頃から、私は、みんなと違う、何かがズレていると、気づき始めていました。

全てを嫌い、やる気も無ければ、頑張る意志さえ無くしてしまった私は、当時、親から買ってもらった、ファミコンや、スーパーファミコンに、逃げるように、のめり込むようになっていき、中学1年生の3学期初旬、ついに、登校拒否をするようになりました。

あまりに、学校に行きたがらず、起きようともしない私を、ある朝、母が起こしに来るなり、『お母さんと一緒に、死のうか?』と、包丁を持って来られたこともありました。

それでも、私は、学校に行かず、昼夜逆転のゲーム生活をしました。自分の心を守るため、必死に、ただひたすら、ゲームをやり続け、ある時、親戚のおばさんから、酷く、お前はこんなんじゃ、ダメ人間だと、酷く咎められ、その時、私は、『あぁ、もういいや、死のう』と初めて、思うようになり、自殺を考えるようなっていきました。ある日、誰も居ないのを見計らって、包丁を手に取り、自分を刺そうとしましたが、手が震え、それ以上、動く事が出来ず、少しボーッとして、ふと我に返り、包丁を片付けそのまま自分の部屋に閉じこもり、まる1週間、飲まず食わずを過ごしたこともありました。

その間、父親からの酷い罵倒、学校へ行かない事への責め、あまりの苦痛で、頭がおかしくなり、まともな考えすら、起きませんでした。その頃から、私は、父親から酷い罵倒を受けると、言い返し、過呼吸を起こすようになっていきました。

幼少期から、毎日、父親は母親を怒鳴り散らしていましたので、聞きたくない怒鳴り声を、毎日聞かされ、いじめ、学校での問題と、もう、何もかも嫌になり、誰か、私を殺して欲しいとさえ、思うようになりました。

そんな時、登校拒否をする問題児達に救いの手を差し伸べようと、活動していた、1人の年配の先生が家に来られました。女性で、どちらかと言えば、おばあちゃんというような感じの方でした。

R先生と言います。『学校へ行こう、一緒に車で乗せて行くから』と、何度も足を運んでくださって、その度に、私は拒否していましたが、とうとう、その先生の熱意に負けて、行ってみることにしました。

行くと、教室へ行かされるでもなく、そこは生徒会室でした。何人かの学年の子達が居て、『そこで好きな事をしていると良いよ』と、その先生は言うと、そのまま部屋を後にし、何処かへ行ってしまったのです。

私は、とりあえず、歳の近そうな子に声をかけました。

その人は、Hさんで、同じ学年でした。話をするうちに、実は同じ小学校に通っていた子で、小学校の時からすでに、登校拒否をしていたのだそうで、高学年になってから、引っ越して来たんだと知りました。同じ歳で、同じ心に傷を負った者同士で、程なくして仲良くなり、その子の家に遊びに行くようになりました。

ところが何ヶ月とそこで過ごすうちに、人が増えていき、ある時、仲の良い先輩達との間でトラブルが起き、また、そのトラブルに巻き込まれた人みんなが行かなくなってしまいました。

何週間か時間は経って、ある日の事、R先生が、また訪ねて来てくださって、『あなたとお友達になりたいと言っている子がいてね、もう1度、行ってみない?』と言うのです。中学2年の春先のことでした。

まだ、トラブルに巻き込まれた時の、ショックを受けたままの状態だったので、しばらく考えさせて欲しいと、一旦は断りました。それから数回、R先生は足を運んでくださって、会うだけでも良いから、会ってみようと言われ、会う事にしました。

また、先生に送迎していただき、生徒会室へ入ると、そこには、小柄で美人な顔立ちの子が囲んだテーブルに、並べられた椅子の適当な場所で、ちょこんと座って何かをしていました。

近くに座って、何を話したか、今は覚えていませんが、他愛無い話しだったと思います。彼女はMさんで、とても気が合い、すぐに打ち解け、お互いにそこへ行くのがとても楽しみになりました。

そうこうしているうちに、また人が増え、みんなで、うるさくしないように担当の先生から言われていたので、小声でこそこそ話しあったり、手作りしたお菓子を持ち込んで食べたり、Mさんの友達で、クラスから顔を見に来たと、来てくれる子達とも、持ち合って食べたりした事もあり、先生に見つかっても、先生は怒りもせず、『早く食べてわからないようにしなさいね』と、黙認してくださって、そんな毎日を過ごして、学校に行く事が楽しくなっていき、そこでみんなも、勉強するようになりました。

時は過ぎ、いよいよ受験生、受験勉強の到来です。みんな、少しずつ勉強を、担当の先生から教わるようになりました。が、私だけは、相変わらず、毎日読書をしていました。それもそのはず、もう、全く勉強が理解出来ず、教わっても理解出来ないため、ちんぷんかんぷん。もう、高校はダメだと諦めていましたが、一応、少しだけ勉強はして、合格出来る点数ではなかったはずが、クラスに行けなかった子が集まる高校で、果樹園芸科の高校に、面接で合格したようなもの。正に、奇跡としか言いようがなく、きっと、私達を助けてくださった先生方が、力を尽くしてくださった結果に他ならないのだと、今にしてみれば、思います。

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