《どうやらベスト4が決まったらしい》

馬車から降りて来た老人は偉い人物みたいだ。周囲を護衛が固めて警戒している。


そのまま老人達はカリーナの家に入ってくる。護衛の一人が玄関のベルを鳴らすと眠そうなカリーナがドアを開ける。


「もう。朝から誰ですか?こっちは昨日のバカ2人のせいで疲れてるんです、か、ら?」


カリーナが眠たそうに文句をつけるが騎士達を見て固まってしまう。


「朝早くに失礼。こちらにミグル殿が泊まっていると聞いたのですが。」


固まっているカリーナへと護衛が声をかける。すると老人がカリーナへと声をかける。


「確かカリーナ殿だったかのう?久しぶりじゃな。ミグルの奴に会いに来たのじゃが呼んでくれるかのう?」


老人が声をかけるとカリーナが老人に気付く。


「え?うそ?こ、こく、あ!すぐにミグルさんを呼んで来ますので。いや、やっぱり上がって下さい!」


カリーナは老人に気付くと慌ててミグルを呼びに行こうとする。


「いや、外で待とう。ミグルに会ったら直ぐに場所を移動するからのう。」


老人はそう言ってカリーナがミグルを呼びに行っている間に護衛の騎士達と何かを話している。


「カリーナに突然叩き起こされたと思ったら。御自身の立場を考えて下さいよ。いきなり、貴方が現れたら驚くでしょうに。」


しばらくするとミグルが現れてそんな事を老人に言う。


「ふむ。どうしても大会の前にお主と話がしたくてのう。少し付き合ってくれ。」


老人はそう言ってミグルを馬車へと誘う。


「わかりました。カリーナ!俺は会場で合流すると言っといてくれ。」


ミグルはそう言って老人達と行ってしまった。


それからしばらくするとミーナ達が家から出てくる。ミーナ達はミグルが居ないことをカリーナに聞かされると一瞬だけ驚いたがカリーナが事情を説明すると納得した様な表情を浮かべる。ルナだけが物凄く驚いた表情だったのが気になるが。




学園に着くと俺はルナに連れられてリディアのいる理事長室へと向かった。俺は理事長室に着くとルナに気になっていた事を聞いてみる。


なあ。ミグルに会いに来た老人って何者なんだ?ルナだけ凄く驚いていたみたいだけど。


「え?えっと。アンディーはミーナのお父さんが昔何してたか知ってる?」


ああ。騎士団長をしてたらしいな。


「知ってるんだ。そう、今でも国王様に呼ばれる程に凄い人なんだよね。それでね、朝会いに来たのはその国王様らしいのよ。大会には国王様も今日から見に来るんだけどミーナのお父さんに話があって試合前に会いに来たんだって。」


国王?国王ってあれか?ナダル15世って事か?


「そう。話を聞いたときは驚いたけど、まあミーナのお父さんなら納得かな。」


なあ、ミグルってそんなに凄い奴なのか?俺には親バカの姿しか浮かばないんだけど?


「それは私が教えてやろう。ミグルはな、騎士になって直ぐに王国を襲ったドラゴンの群れを一人で撃退したんだよ。それから引退するまで度々、王国の危機を救った英雄って奴なんだよ。」


ドラゴンの群れを一人で?いや、昨日の時点でドラゴンを倒せるくらい強いとは知ってたけど英雄って呼ばれる程凄いとは思わなかった。


「まあ、結婚して急に辞めてしまったからな。国王も本当は騎士団長に戻って欲しいと思ってるんだろう。それより急がないと国王の挨拶が始まるぞ?ルナは急いで会場に迎え。」


リディアにそう言われてルナが急いで部屋を出ていく。


リディアは急がなくて良いのか?理事長なんだし会場に居ないとまずいんじゃないのか?


「ああ。だから私ももう行く。アンディーも急げよ。」


リディアも急いで出ていってしまった。さて、俺も行くか。




俺が会場に着くとどうやら国王の挨拶とやらは終わっているようだった。それからしばらくして第1試合が始まった。


レーン帝国学園のキース対ミーナと同じシルフ学園のトマスとの試合だ。


やはり、キースって奴は強いな。トマスも火魔法を使ってキースの氷魔法に対処してたがキースは氷魔法以外も強かった。


トマスの攻撃を風魔法で受け流しながら冷静に魔法を当てていく。最終的にトマスは他の選手同様に凍らされてしまい棄権していた。


続いて第2試合。セント学園のビル対エビル学園のセレナ。


「宜しくお願いしますわ。けど、すみません。直ぐに終わらせて頂きますわ。」


試合開始直後、セレナがそう言ってビルに声をかける。一瞬だけビルが怒った顔をするがセレナの発言通りに試合は直ぐに終わった。


セレナが一瞬でビルを凍り漬けにしたのだ。二回戦のキース同様に会場に氷の山が出来ている。セレナは会場に頭を下げると一瞬だけキースのいるレーン帝国学園の方を見て微笑む。


どうやら、キースへの挑発のつもりの様だ。お前に出来ることは私も出来ると。そういえば2人とも同じ系統の魔法を今まで使ってるな。キースもさっき風魔法を使ってたし。


氷の山が取り除かれると第3試合が始まった。セント学園のゾラン対レーン帝国学園のノイル。


だが、こちらの試合も直ぐに終わってしまう。何故か試合が始まった直後にノイルの方が棄権してしまったのだ。ゾランがノイルに詰め寄っているがノイルは無視して会場から去ってしまう。


気を取り直して第4試合。ミーナ対レーン帝国学園のグレンの試合だ。


試合開始直後、ミーナが雷を落とすがグレンが張った魔法障壁に阻まれる。だが、ミーナは魔法障壁に構わず雷を落とし続ける。


どうやらグレンの魔力切れを狙っているらしい。魔力障壁は強力な盾だが比例して魔力の消費も多い魔法。だがミーナの光魔法は強力だが魔力の消費は少ない。このままなら魔力切れを起こしたグレンが攻撃を食らって終わりだろう。


案の定、しばらくして魔力障壁が消える。だがミーナの攻撃がグレンに当たる事はなかった。その前にグレンが棄権したのだ。


こうしてベスト4が決定した。


準決勝

第1試合キース対セレナ

第2試合ゾラン対ミーナ






◆その頃

「いよいよ、作戦の実行が近い。全員持ち場に移動しとけ。」


事態は刻一刻と迫っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る