《どうやら偉い人らしい》

結論から言ってセレナは強すぎる気がする。大会に出ている選手の中で頭一つ抜けている感じがした。


「私、貴女の様な人間は嫌いですわ。先程の控え室での貴女の御学友に対する態度、私と同じ貴族として見過ごせませんわよ?反省なさい!」


試合が始まってユリアって子の魔法がセレナに殺到したがセレナの方から突風が発生し魔法を全てユリアに弾き返してしまった。


一回戦は見てなかったけど風を操る魔法に自信があるようだ。


ユリアは攻撃が自分に全て返された事で慌ててしまったのか攻撃を避けれず自分の攻撃で場外に吹き飛ばされて気絶した。


観客席の一部から悲鳴が上がっていたがユリアの関係者の様だな。そしてセレナは優雅にお辞儀をして控え室に下がって行った。


「まあ、色々と感想はあるけどユリアって子が負けて良かったな?」


俺がルナに声をかけると呆然としていたルナが我にかえる。


「え?あ、そ、そうね。セレナさんの言ってた事からして控え室で多分ミーナに絡んだっぽいし少しは痛い目にあえば良いのよ。まあ、多少の同情はするけど」


そう言って、苦笑いするルナに同意しながら次の選手達が来た事で俺達は試合に意識を向ける。




その後、残り4試合が行われミーナも無事にベスト8に勝ち上がった。ミーナの他はゾランと他2名のレーン帝国学園の選手が勝ち上がった。


これで、明日の準々決勝の組み合わせが決まった。1試合目はレーン帝国学園のキース対シルフ学園のトマス。2試合目はセント学園のビル対エビル学園のセレナ。3試合目がセント学園のゾラン対レーン帝国学園のノイル。4試合目がレーン帝国学園のグレン対シルフ学園のミーナとなっている。


今日の試合が終わり、ミグル達がミーナのベスト8を祝って軽くお祝いをするとミーナを迎えに来た。馬の姿に戻ってシンディーの所で話していた最中だったので俺も今日はカリーナの所に一緒に戻る事にした。


「あの、本当に私も一緒に行って良いんですか?久しぶりの家族の食事なのに」


カリーナの家に向かう途中、一緒に誘われたルナがミーナの母親に話しかけている。


「良いのよ。ミーナの友達なら私も話したいし楽にしてね」


「はい!」


そう言って仲良く話すルナ達を気にしながら俺は背中に無理やり乗って着いて来た人物に話しかける。


何でリディアまで一緒に来てるんだよ?忙しいんじゃないのか?


『丁度、ミグルに会ってなミーナのお祝いをすると外出許可を取りに来たから無理やり私も参加させて貰ったんだ。学園に残っていると他の学園の理事共に気を使わなきゃならんからな。ハハハ。』


何かストレス溜まってそうだな。


『あの、理事共。自分の生徒が勝つと負けた側の理事を煽るからな。試合後の打ち合わせでは大変だったんだ。私も我慢するのが大変だった。』


な、なるほど。理事長ってのは大変なんだな。


『ああ。明日は国王も来るから休める時に休まないと正直やってられん。』


そう言って、俺を撫でるリディアに同情しながらも俺達はカリーナの家に辿り着いた。





「おい、カリーナ。もっと酒を持って来い。酒が足んないぞ!」


「カリーナ。つまみが足りないぞ!もっと持って来い。」


「ミーナ。帰ってきてくれ~」


「ギャハハ。ミグルは情けないな~。ミーナが嫁に行ったらどうするつもりだ?」


「うるさい。この糞ババー」


「何だと、この糞ガキ。昔みたいに痛い目に会いたいのか?」


「上等だ!やれるもんならやってみろ。庭に出やがれ!」


「やめて~!お二人が暴れたら家が壊れちゃう~!」


「ッチ。よし、なら狩りで勝負だ!ドラゴンの巣まで行ってどちらが多く狩るかで勝負だ!」


「良いだろう。私が伊達に賢者と呼ばれていないって事をわからせてやる!」


「駄目です~。何かあったらどうすんですか。ミーナちゃん達も笑ってないで止めて~」


家の中から聞こえてくる笑い声に耳を傾けながら俺は横になっている。隣ではシンディーが寝ている。


酔っぱらい2人に振り回されるカリーナに同情しながらも俺は一人空を見上げる。


てか、普通にドラゴンっているんだな。それを狩りに行こうとする二人って。まだリディアは分かるとしてもミグルって一体どれだけ強いんだろう?


そして、家の中から声がしなくなった頃、中から誰かが出てくる。


「皆、寝てしまった様だ。」


そう言って俺の側に座るリディア。


随分と楽しそうだったな。カリーナが振り回されてて可哀想だったぞ。


「久しぶりだったからな、こんなに楽しかったのも。ミグルの奴も少しは大人になったかと思ったがまだまだだな。娘の事になると途端にガキの頃に戻ってしまったよ。」


まあ、ミーナの事になるとな。それに嫁に行ったらなんて言ったリディアが悪いと思うぞ。


「フッ。そんなのあっという間だぞ。そして、あっという間に皆は私より先に死んでいく。」


まだ酔ってんのか?


「なに。ただ、人生は長いようで短いなと思ってな。色んな人間に出会ったけど気を許せる友ってのは案外少ないからな。まあ、馬の友ってのは初めてだがな。」


まあ、リディアにも色々あるか。


「まあな。長命種の宿命の様な物だろう。さて、私はそろそろ帰るとするかな。色々とやらなければいけないことが残っているしな。」


なのに、こんな時間まで呑んでたのか?


「ハハハ。酒は別だ!お前も呑める様になれば分かるさ。さて、明日は何が起こるか分かんないからな。気をつけるようにな。」


何か起こりそうなのか?


「わからん。ただ、お前が聞いた話もあるし、明日は他国の重鎮も観客として来るって話も聞いている。それにナダル王もやってくるんだ。備えておいて損はないって事さ。じゃあな!」


そう言って空を飛んで行くリディアを見送って、俺はリディアの忠告を覚えておく。さて、寝るか。





翌朝、カリーナの家の前に豪華な馬車が止まり一人の老人が中から降りて来る。周りには数人の護衛らしき人達が一緒にいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る