《どうやらかなり強いらしい》
試合が始まって既に半分が終了した。ミーナの試合は一回戦の一番最後だ。これからルナの試合が始まる様だ。
「それでは9試合目。シルフ学園2年生ルナ選手対セント学園4年生ゾラン選手の試合を始めます。互いに礼!」
審判が選手の紹介を済ませ、ルナと男子生徒が互いに距離を取り始める。
「始め!」
審判の合図と同時に対戦相手のゾランが火の球をルナに向けて放つ。ルナは攻撃を軽く躱しながら水の球を次々と放ち相手のゾランを翻弄する。
ゾランは遠距離攻撃は効かないからなのか腰に刺した剣を抜き接近戦に持ち込もうとする。
この対抗試合は魔法だけじゃなくて武器の使用も認めているってリディアが言っていたな。魔法相手に武器って意味あるのか?
そう思ったがゾランのスピードが急に上がってルナが剣を避けきれず吹き飛ばされる。どうやら身体強化の魔法を使っているらしい。
吹き飛ばされたルナは何とか立ち上がるがフラついている。その隙を狙ってゾランが向かっていくが足元から火柱が上がってゾランが火に包まれる。
これは決まったかな?俺がそう思って見ているとやがて火柱が消え無傷のゾランが立っていた。
ゾランの体が光に包まれている。あれで火柱を防いだのか?
動きの鈍っているルナはやがてゾランに追い詰められて倒れてしまった。
「そこまで!ゾラン選手の勝ち」
審判が試合終了を告げると観客席の一角に向けて手を振るゾラン。どうやら、その一角にセント学園の関係者が集まっているらしい。
ゾランが控え室に下がって行く中、ルナが動けないでいる。急いで担架が運び込まれてルナを乗せて会場から下がって行った。
ルナの様子から骨が折れて動けなかったんだろう。ゾランって奴は強かったと思う。それに戦い方も上手かった。
最初のスピードに慣れていたから身体強化されたゾランのスピードにルナは対応出来ていなかったし。
ゾランは火柱を防いだ魔法以外にも実力を隠していそうだ。他の選手と比べて余裕がある感じだった。
ルナが弱い訳ではないと思う。ルナの魔法も他の選手より威力があったし他の選手なら勝てていただろう。
ミーナが勝ち上がれば2日目の準決勝で戦う事になる。勝てるのかは分からないけどルナの為にも頑張るはずだ。
その後も試合は順調に進み残るところ一回戦は後2試合となった。俺はミーナの試合を見る為に姿を変えて持ってきた服に着替えて会場へと向かった。
「ずるいわよ!私も見に行きたい!」
俺が1人だけ試合を見に行こうとしたらシンディーが一緒に行くと駄々を捏ねていたが置いて来た。
会場の中に入り観客席に向かっていると通路の扉からルナが出てきた。
「ルナ!?怪我は大丈夫か?」
俺が声をかけるとルナは俺を見て一瞬だけ怪訝な顔をするが声をかけたのが俺だとわかると苦笑いを浮かべて近いて来た。
「アンディー。ミーナの試合を見に来たの?外で見てただろうけど私は負けちゃったわ。それにしても、今までと姿が違うから違和感があるわね。」
俺の顔を見てルナがそんな事を口にする。今の俺の見た目は辰馬の姿に少し似ているから違和感があるのは仕方ない。
「まあな。あの姿で見に行ったら観客席がパニックになりそうだからな。今の姿なら誰も気にしないだろ?」
俺が苦笑いしてそう言うとルナも苦笑いを浮かべる。
授業に参加した後にリディアが俺の誤解を解きに行ってくれたが結局、教師の誤解を解く事は出来なかった。
しかも、リディアの嘘が学校中に誇張されて広まってしまい授業での様子も伝わって俺の姿は恐怖の対象になっているらしい。
一度、外に出た際に出くわした女子生徒が俺を見て悲鳴を上げて気絶したりもして生徒達の間では俺は悪魔呼ばわりされているらしい。
悪魔って。
「まあ、騒がれない為だし地味だから良いんじゃない?目立たないし」
ルナはそんな事を言ってくれるが俺は内心で苦笑いするしかない。今の姿は元の姿に似ている。つまり、元の姿は地味で影が薄いって言われた様な物だ。ミーナにも実は同じことを言われた。
まあ、ルナ達は今の姿が元の姿に似ているって知らないから仕方ないか。地味にショックを受けながらルナと一緒に観客席に向かって行く。
「ところでゾランって奴にやられた怪我は大丈夫なのか?普通に歩いているけど」
さっきは無視されてしまったからもう一度聞いてみる。
「うん、治療室で治癒魔法をかけて貰ったから大丈夫。でも、プライドは傷ついたわ。あのゾランって奴、絶対手加減してたもの。悔しいったらないわ!」
そ、そうか。まあ、手加減されたら怒るのも無理はないのかもな。
「ミーナは勝ち上がれば2日目の準決勝でゾランと当たるがミーナは勝てそうか?」
俺はミーナが学校に行ってからの実力は詳しくは知らない。だけどルナなら知ってるだろうしゾランとの実力の差は分かるだろう。
「うーん。どうだろう?ゾランの方の本当の実力は分からないから何とも言えないわ。ミーナも大人しいけど魔法の実力は凄いからね。私が優勝するなんてミーナには宣言したけど私じゃミーナには勝てないしね。」
ルナはそう言って肩をすくめる。
「ミーナってそんなに凄いのか?」
俺がそう言うとルナは見れば分かるわと言って観客席の中に入って行く。どうやら、この辺がミーナ達の学校の観客席らしい。一番先頭の方にはリディアも座っている。
俺とルナは空いている席に並んで座る。闘技場ではミーナの前の試合が丁度終了した所の様だ。勝ったのはセント学園の生徒らしい。
試合を終えた選手達が下がりミーナと対戦相手が入場して来る。
「一回戦ラストの試合です。シルフ学園2年生ミーナ選手対エビル学園3年アレク選手の試合を始めます。互いに礼!」
ミーナと対戦相手のアレクが距離を取ると審判が開始の合図をする。同時にアレクがミーナに向けて勢い良く向かって行く。何か作戦があるのだろう。
だが、ミーナは何かを呟いた後、片手を上げてアレクの方に振り下ろす。すると爆音がした後、立っているのはミーナだけ。アレクは体から煙を上げて気絶していた。
「そこまで!ミーナ選手の勝ち!」
なんとミーナは上空に黒い雲を発生させて手を振り下ろすと同時にアレクに雷を落とした様だ。
まさに電光石火の決着。ミーナは観客席の声に恥ずかしそうにお辞儀をして闘技場を後にした。
ミーナめっちゃ強くね!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます