《どうやら成功したらしい》
ゴブリンに変化してしまった俺はすぐに元の馬の姿に戻り、何度も練習を行った。リディアの予想だと失敗したのはイメージの仕方が悪いのと俺の魔力が普通の人と違うからじゃないかとの事。
リディアいわく、俺の魔力は他の人と違って魔力の質が違うらしい。異世界の人間だからかもと思ったけど、リディアが会った事のある勇者や流れ人も魔力の質は同じだったらしい。
「まあ、恐らくだが異世界からの転生者である君だからじゃないかと思う。失敗はしたが練習すればイメージ通りの姿になれるんじゃないか?他の魔法は普通に使えてたし。私はもう寝るが君は練習を頑張ってくれ!」
そう言って寝てしまったリディアを横目に俺は練習を繰り返し、イメージした通りの姿になることが出来た。最初は漠然と人の形だけを思い浮かべていたからな。これで完璧だ!外が少し明るくなっており、俺は馬に戻って眠りについた。
翌日、リディアに成功した事を伝えると見せろと言ってきた。せっかくだからミーナとルナも呼んで貰う。
「アンディーが人間になるの?なんで?本当は人間に戻りたかったの?」
ミーナ達に人間になるって言ったらミーナが何でって問い詰めてくる。
待て待て!一時的に人間の姿に魔法でなるだけだから。そうしないと対抗試合でミーナの活躍が見れないから魔法で人間に人化する事にしたんだ。
「なんだー!人間に戻って私達の前から居なくなるのかと思ったよ。あれ?でも、何で私が代表に選ばれたのを知ってるの?内緒にしてたのに。」
理事長に聞いたんだよ。でも、何で内緒にしてたんだ?
「だって、言ってもアンディーは試合を見れないし教えたら見たくなっちゃうでしょ?見れないのに教えるのは可哀想だと思ったの。でも、人間になることが出来るならアンディーも私の試合を見てくれるんだね?私、頑張って優勝する!」
そう言ってやる気になるミーナ。するとルナも代表に選ばれているらしくミーナに宣戦布告している。
「今大会で優勝するのは私よ!ミーナには悪いけど負けるつもりはないわよ?」
そんな事を言うルナだが2人とも優勝を目指して頑張ればいい。まあ、俺はミーナを応援するけど!
「どちらが優勝でも構わないが、魔法で変化するんじゃないのか?早く見せてみろ。」
リディアが2人を横目にそんな事を言う。2人も思い出したのか期待を込めた目で見つめてくる。
よし、じゃあちょっと隣の部屋で変化してくるから待ってろ!
「え?何で?目の前で人間になってくれるんじゃないの?」
俺が隣の部屋に移動しようとするとミーナが不思議そうに聞いてくる。ルナとリディアも不思議そうにしている。いや、だって。
この場で変化したら俺は裸だぞ?急に裸の男が現れたら嫌だろ?
「「「え?」」」
俺は馬だから服なんて着てない。当然、人間に変化したら素っ裸だ。昨日は見た目に気をとられて気にしてなかったけど人間になることに成功したら服を着てないことに気がついた。俺がそう説明するとリディアが大きな布を貸してくれた。これで服を作れって事か。
「は、早く行け!ちゃんと着替えて出てこいよ!」
そう言うリディアの顔は赤い。ミーナとルナも同様だ。結局、3人とも急いで俺を隣の部屋へと追いやった。
さて、昨日の姿を思い浮かべて変化するか。一度、成功したからイメージは簡単だ。
俺は成功した姿を思い浮かべて人化の魔法を使う。すると昨日変化した姿に無事に変わる。部屋に鏡があるため失敗してないかは確認できた。俺はリディアから渡された布を使って魔法で簡単にワイシャツやズボンとパンツを作る。
ワイシャツにズボンと馴染みのある格好に着替えて部屋の外へと出ると俺を見た3人が驚いている。
「うわ!本当にアンディーなの?す、凄い!」「うそ!?カッコいい!」「ほう!随分とカッコいい姿に変化したものだな!」
ミーナ、ルナ、リディアの順だ。ミーナとルナは単純に驚いているがリディアはイメージで姿が変わる事を知ってるから面白がっている。
「何で見た目をその姿にしたんだ?」
面白がっているリディアが笑いながらそんな質問をしてくる。ミーナとルナは質問の意味がわからずリディアの言葉に首を傾げている。
いや、白馬が人になったらこんな感じかなって。それに俺も男だし、どうせならカッコいい方が嬉しいじゃん。
俺が顔を背けながらそう言うとリディアが大笑いする。意味がわからずポカーンとしているミーナとルナにリディアが説明すると2人とも笑いを堪えていた。ちょっと恥ずかしくなってきた。
なんか、恥ずかしくなってきたから元に戻っていい?
「え?待って待って!大丈夫だよ?変じゃないから今の姿で!ね?ルナ!」
俺が元に戻ろうとするとミーナが慌てて止めてくる。
「う、うん。大丈夫よ!驚いただけだから!せっかく人間の姿になったんだから、その姿でいきましょ!」
そう言って2人が止めてくる。結局、今の姿のまま話しをする事にした。
「ところで、君はいつまでテレパスで話しているんだ?人間の姿になったんだから話せるんじゃないのか?」
2人とテレパスで話しているとリディアが急にそんな事を言う。でも、リディアの言う通りだ。今なら声が出るんじゃないか?俺は声が出るか試してみる。
「あ、あー。どうだ?上手く話せてるか?」
どうやら、声は普通に出せた。俺は3人に上手く話せてるか聞いてみる。
「問題なさそうだな。まあ、元人間なんだから人間に変化したら話せるのは当然だろ。」
俺が確認すると3人とも頷き、リディアが当たり前だと言ってくる。
「さて、人間の姿になったんだから試合を見ることも出来そうだな?だが、今の服装だと駄目だな。そんな服、この世界にはないからな。元の世界を元に作った服だろ?別の服に着替えた方が良いだろう。」
無事に試合を見る事が出来る様になったけど、今度は服に問題が出てきた。確かに、この服でウロウロしてたら目立つだろう。
「だが、他の服なんて無いだろ?リディアが用意してくれるのか?」
俺がそう言うとリディアが首を横に振る。
「悪いが時間がないから無理だ。私は他の学校の迎えに町の外に行かなきゃ行けないからな。お金を渡すからミーナ達と買いに行けば良い。せっかく人間になったんだ。自由に外に出たいだろ?」
リディアがそう言って袋を渡してくる。中にはお金が入ってるらしい。
「どうする2人とも?俺は一人でも行くつもりだけど。」
俺がそう言うとミーナは着いて行くと喜んでいる。だがルナは首を横に振った。
「私も行きたいけど今日は用事があるから行けないわ。ミーナ、後で話を聞かせてね?」
どうやらルナは来ないらしい。つまり2人っきりか?
「ミーナ、2人でデートするか?」
俺が冗談でそう言うとミーナは照れくさそうにして頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます