《どうやら人間になれる魔法があるらしい》

学校でリディアの世話になり始めて2日。リディアやミーナ達のおかけで、この世界の事はある程度は理解出来たし魔法も色々と教えて貰った。


ちなみに、この国は昔の勇者が作ったダナル王国って言うらしい。勇者はナダル・グレイと言う名前で千年以上前に魔王を倒した後に仲間達とダナル王国を作ったらしい。


現在の王様はナダル15世で勇者の血を引く人物との事。リディアの話だと現在のダナル王国は3つの隣国に囲まれ、その内の1つの国との仲が悪く戦争状態にあるらしい。


「まあ、戦争状態にあると言っても国境で食い止める事が出来てるから、他の町にはあまり知られていないがな。」


って事らしいけど、それだと一気に侵略されたりしたら対処が間に合わないんじゃないだろうか?他の町が今まで通った町と似た雰囲気なら平和だろうし、急な侵略に対処出来るとは思えないけど。まあ、そういう場合の事は国で考えてるんだろうけど。


ちなみに残りの2つの国とは友好な関係を保てているらしい!そして、更にその周辺にも国があり世界的には平和な状態らしい。もっぱら人類の敵は魔族と魔物が殆んどで、たまに現れる魔族との戦争では国の垣根を越えて戦うとの話だ。


魔族は人間と似た見た目らしい。魔族と人間の違いを聞いた所、言葉が通じるかどうかが人類に分類されるかどうかの違いらしい。この世界には人間と似た見た目の種族がエルフの他に獣人やドワーフ等がいるらしい。彼等は言葉が通じるから一応、人類に分類されるとの事。


「まあ、この分類は一番人数の多い人族が勝手に言ってる事だけどな。自分達が一番偉いと思っている人族の王族が広めた馬鹿な考えだ。魔族にも言葉が通じる者もおるし、種族が違うだけで人間は人間だ。まあ、この国は種族で差別せんから私も身を置かせてもらってる。」


つまり、人間とされてるのはミーナ達、人族だけで他の種族は人類には分類されるけど人間ではないってのが王族の主張って事かな?リディアは魔眼があるから魂に違いがない以上、全ての種族が人間と呼べるとの事。


まあ、リディアが言ってる事の方が理解出来るな。見た目が少し違うだけで人の姿をして言葉が通じるなら人間だと俺は思うし、魔族の奴等が危険かどうかも自分の目で見ないと分からない。まあ、危険なら対処するだけだ。


ちなみに魔族は遠く離れた暗黒大陸と呼ばれる未開の場所から現れるらしい。魔物を率いて現れる為、人類にとって共通の敵として認識されてるとの事。だけど魔族の全てが敵対してくる訳じゃなく人間と仲良くしようとする魔族もいるとリディアは言っていた。昔会った事があるらしい。


まあ、この国は種族で差別しないから魔族以外の他の種族の人間も町にはいるとの事。エルフにしか会ったことないけど。




「さて、君も色々と知ることが出来ただろ?そろそろ、私も対抗試合の準備に忙しくなるから君の相手をする暇がなくなってくる。カリーナの屋敷に戻るか?」


学校に来て3日目の夜、リディアがそんな事を聞いて来た。そういえば肝心な事を聞いてなかったな!


ちなみに、この3日間は俺はリディアの暮らしてる学校の理事長室にいる。リディアが俺を連れて学校の中を歩いていたけど生徒達は一瞬驚いただけで気にしてる様子がなかった。


「理事長が変な事をするのは皆が知ってるから気にしないのが当たり前なんだよ。」


その事をミーナに聞いてみると笑顔でそう言われた。今までにも似た事をしてるらしい。


なあ、対抗試合ってのは何をするんだ?何も知らないんだけど。


「今さらだな!?まあ、対抗試合ってのは毎年各国にある魔法学校同士が集まり行われる大会だ。各学校の代表者数名がトーナメントで試合をして一番を決めるんだ。代表者は優秀な者が選ばれる。ミーナも代表者の1人に選ばれたが聞いてないのか?」


聞いてない!しかし、そんな大きな大会なのか。ミーナが頑張ってたのは聞いたけど代表者に選ばれる程の実力だとは。是非、その大会を見たいんだが?


「いや、見たいって言われても。馬である君を会場の中にまで連れて行くのは無理だぞ?他の学校の責任者もいるし、観客に貴族等も来るのに馬を連れて行ったら私が怒られるからな。流石に貴族に怒られるのは嫌だし、他の学校の奴等にそんな姿を見られたら弱味を握られる事にもなりかねん!」


俺が行きたいと言うとリディアに拒否されてしまった。リディアなら連れて行ってくれると思ったけど駄目らしい。さて、どうしたものか?


うーん。見に行きたいけど、勝手に言ったらミーナ達に迷惑がかかるしな。何か方法ないかな?何かあった気がするんだけど何だったっけ?


あ!そうだ、リディア!人になれる魔法って知らないか?


「人になれる魔法?確か、そんな魔法が昔見た本に載っていた気がするな。ちょっと待ってろ!」


リディアがそう言って本棚を探してくれる。しばらくしてリディアが一冊の本を持ってくる。


「この本に載っていた筈だ。ほら、ここに載っているぞ!」


リディアが指すページには絵が描いてあった。龍が人に変化する様子が描いてある。


「この本によると魔力を身体中に巡らせて人の形を思い浮かべると人間の姿に変化する事が出来るらしい。どうだ?出来そうか?」


人の形を思い浮かべるか。それなら簡単かも知れないけど魔力を身体中に巡らせてってのが難しそうだな。呪文は載ってないけど、確か魔法はイメージさえ出来れば使えるんだっけ?


「ああ。呪文はただの補助でしかないから古い本などには載っていないんだ!呪文は後から考えられた方法だからな。今は当たり前に使われているが本来は必要ないものだ。」


なるほどね。とりあえずやってみるか!魔力を身体中に巡らせる。うーん。身体を包むような感じにすれば良いかな。こんな感じか?


「うん。魔力が身体中に巡ってるな。後は、姿を変えるだけだ!」


よし、やってみるか!イメージ!人の形をイメージ!お?何か変な感じがしたけど変わったか?


よし!足がある!手もあるぞ!肌の色が少し緑に見えるけど人間のものだ!どうだ、リディア?


「う、うーん。た、確かに変化は成功したようだな?」


なんか歯切れ悪いな?どうした?


「な、なんと言うかな。その、イメージと違くて驚いたって言うかな。そ、その見た目がな。」


見た目?見た目がどうかしたのか?もしかして失敗してるのか?


「失敗?うーん。一応人間に似た姿になってはいるから失敗ではないかな?」


ちょっと待て!人間に似た姿にって事は人間じゃないって事だろ?!


「いや、まあ見た目が奴等に似ている人も中にはいるから話せば人間だって分かってくれるさ!」


おい?何かさっきから微妙に笑ってないか?確か、鏡があったよな?貸せ!


「や、止めといた方が良いぞ?ショックかもしれない。」


良いから貸せよ!早く!自分で確認したい!


俺がそう言うと鏡を探して持ってきてくれるリディア。身体全体が写る大きな鏡だ。


「ま、まあ、変化に失敗しただけかも知れないから気をしっかり持つんだぞ?」


鏡を隠しながらそんな事を言うリディア。俺はリディアをどかして自分の姿を確認する。そして、絶望した。


確かに足も手もある。人間と似た姿もしている。少し背が小さくてブサイクな顔。確かに似た顔の人もいるかもしれないけど。


魔法学校に来るまでに何度か見たことがあるその姿。冒険者にとっては最弱の魔物に分類される魔物。


やっと。やっと人間に戻れると思ったのに!馬に転生して2年以上が過ぎて、やっと人間になれると思ったのに、これは無いだろ?




な、なんでゴブリンなんだよー!?

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