《どうやら賢者って呼ばれてるらしい》
「わー!何これ!」「す、すごい!」「ほう。興味深い世界だ。」
ミーナ、ルナ、リディアの順に感想を漏らす。現在、俺達はリディアの魔法で周囲から見えない結界の中にいる。
◆
「君の記憶を見せて貰えないだろうか?」
そう言ってリディアが出したのは1つの小さな石。これが魔道具なのか?
「これは持っていると記憶を映し出す事が出来る魔道具だ。私が作った物で、このサイズの魔道具は他にないだろうな。どうだ?凄いだろう。」
そう言って胸を張るリディア。何が凄いのか分からん。だが、ミーナとルナは分かっているらしい。
「さすが理事長ですね!こんな小さな魔道具初めて見ました!」
どうやら、このサイズの魔道具ってのは凄いことらしい。
「ええ。さすが賢者様と呼ばれるだけありますね!」
ルナもミーナと同じ感想らしい。でも、賢者って何だ?
なあ、賢者って何だ?リディアはただの理事長じゃないのか?
「えっとね。理事長はこの国に1人しかいない賢者って呼ばれる人なの。賢者ってのは魔法と知識を極めた人の事をそう言うんだって。」
ミーナが教えてくれた。魔法と知識を極めた人?確かにリディアの知識欲は凄そうだけど。
「別に私はそんな偉そうな存在ではないがな。たまたま長生きで色んな事を知ってるだけだ。まあ、自分が知らない事は知りたいと思うがな。」
そういんもんか?とにかく、それで俺の記憶を見たいって事でいいんだな?
「ああ。それを持って過去の事を思い出してくれればいい。」
◆
そうして、結界内で最初に映し出されたのが日本一有名な交差点の風景だった。
「何で、こんなに人がいるの?あの、人が入った喋ってる箱は何?」
ミーナが物凄い興奮している。こんなミーナは初めて見た。
「アンディー、あの動いているヘビみたいな箱は何なの?あんな魔物がいるの?」
ルナが言ってるのは電車か?ルナも映し出された映像に驚いている。
「凄いな。あれは恐らく馬車の様な物だろうが、どうやって動いているんだ?馬に引かせてないが勝手に動いているのか?」
リディアは沢山走っている車が気になるらしい。
まあ、何て言うか、これが俺がいた世界だ。俺の世界には魔物なんて居ないし魔法なんてものも存在はしない。魔法の代わりに科学ってのが発展した世界なんだ。
「他の記憶も見せてくれないか?そうだな、比較しやすい家の記憶を見せてくれないか?」
家の記憶か。わかった!
「ここは?アンディーが住んでた家の記憶?」
ああ。ここは俺の部屋だな。懐かしいな。
「明るいな。あの光ってるのは魔法じゃないんだろ?」
ああ。あれは電気って言って、この世界では夜も電気によって明るいままに出来るんだ。
「どうやって動いているんだ?」
うーん。俺も詳しく説明は出来ないな。まあ、雷の力を利用してるんだ。この世界では、人間が科学によって色んなエネルギーを作り出している。
「ふむ。君は確か、16歳で死んだと言っていたし知らなくても仕方ないか。じゃあ、他の場所も見せてくれないか?」
ああ。じゃあ、リビングにでもいくか。
「あ!さっき見た箱だ!アンディーあれは何なの?人が入ってるの?」
うん?ああ。テレビか?あれは人が入ってる訳じゃないぞ。まあ、この魔道具みたいな物だな。映像があの箱に映し出されてるんだよ。
「ねえ、地球の食べ物ってどんなの?」
ミーナと話しているとルナが質問してくる。食べ物か。
果物とか野菜は似たような物だぞ?まあ、見せた方が早いか。
「この箱は何だ?ただの箱ではないんだろ?」
これは冷蔵庫って言って、食料を保存するための物だよ。中はひんやりしていて食べ物が腐んない様にしてるんだ。
「ふむ。色々と便利なんだな。原理さえわかれば似たものなら作れるかもしれんな。」
そう言ってリディアは色んな事を考え初めてしまった。その隣ではミーナとルナが冷蔵庫の中身を興味深く見ている。
「確かに果物とかは似てるね。でも、他は違うものだね。お肉みたいなのもあるけど。ねえ、ルナ?」
冷蔵庫の中を見ながらミーナとルナは話していた。
「凄いね。似たものもあるけど、どれも見たことがない食べ物ばっかりだよ!この、美味しそうなの食べてみたい!」
ルナが言ってるのはケーキか?この世界にも甘いものってあるのか?
「これがケーキなの?!貴族しか食べれないやつだ!アンディーの世界はこんなものが普通にあるの?羨ましい!」
貴族しか?この世界にもケーキがあるなら作るのは簡単な気もするけど?
「えっとね、ケーキって勇者から伝わった食べ物でね?作り方とかは貴族が独占してるんだって。材料も高いって聞いた事があるよ。他にも勇者から伝わった食べ物はあるけどお金持ちしか食べれない物ばっかりなんだよ。」
ミーナがそんな事を教えてくれる。勇者から伝わったのか。
なるほどね。でも、他にも地球から来た奴っているんだろ?そいつらが何か教えてないのか?
「え?勇者様以外にも地球から来た人っているの?聞いた事がないけど?」
え?ミーナは知らないのか。リディアが言ってたぞ?おい、リディア!
「うん?何だ?私は考えるので忙しいんだがどうした?」
俺はリディアに会話の流れを説明する。
「ああ。勇者以外の者の事は一般的には知られてないだろうな。別に秘密にされてる訳じゃないが、勇者と違って呼ばれた訳じゃないしな。食べ物に関しては、この国にはないだけで別の国ならあると思うぞ?流れ人がやっていた店で食べた事が昔あったからな。」
ふーん。だってルナ。しかし、ルナってもしかして食いしん坊なのか?映像の中で、一番食べ物に夢中になってたぞ?
「そ、そんな事はないわよ?他の事にも十分驚いたし。」
ルナにそんな事を言うと真っ赤になって否定するルナ。だがミーナがルナについて教えてくれる。
「ルナは食べ物の事になると人が変わるんだよ。前にルナのおやつを食べた男子生徒が宙吊りにされた事があるし。」
宙吊りって。なるほど、ルナは怖いな。
「こ、怖くないわよ!それにミーナも言わなくてもいいでしょ!もう!」
ミーナに暴露されたルナがポカポカとミーナを叩く。仲がいいな。
その後、覚えている事を色々と見せた後リディアは満足したらしい。
「はあ。こんな世界があるのか。行けるなら是非行ってみたい。まあ、いい。見せてくれてありがとう。」
そう言って魔道具をしまうリディア。結界の外は既に夕暮れになっていた。
「さて、随分と長い時間話していたからな。2人は戻りなさい。アンディーは私がカリーナの所へと届けよう。」
リディアに言われてミーナ達は学校の中に戻って行く。俺は隣のリディアを見る。俺が学校に来ているのに今日はミグル達は来ていない。
朝、突然カリーナの屋敷にやって来て俺を連れ出したのはリディアだ。多分、ミグル達は俺を心配しているだろう。一応、リディアが置き手紙を残してたが早く戻った方が良さそうだ。
「さて、君はどうする?カリーナの屋敷に戻るか?魔法やこの世界の事が知りたいんだろ?なら、戻らず私と勉強していかないか?」
いや、何を言ってんの?リディアが勝手に連れ出したからミーナの家族が心配しているだろうから帰るよ?
「一応、置き手紙は置いたぞ?それにミグルなら私に頭が上がらんから文句は言わないと思うぞ?」
ミグルを知ってんのか?ってミグルも卒業した学校だからリディアとも知り合いなのか?
「ああ。あいつはトラブルばっかり起こしてたからな。私が理事長になってから一番迷惑をかけてくれたのが奴だ。奴なら私が相手なら何も文句は言えんさ。」
うーん。どうしようかな。一応、対抗試合ってのをやってる間はこの町にいるんだから焦る必要はないと思うんだけど。
「だが、私が教える時間は限られて来るぞ?私も忙しいからな。」
忙しいって、今日は大丈夫だったのか?こんな時間まで話してたが?
「何を言っている?例え忙しくても君の話を聞けるんだ。他の事など後回しだよ。」
いや、駄目だろ?ただ、サボっただけじゃねえか!
「いや、戻って仕事するから問題はないさ。それより、どうするんだ?戻るのか?」
うーん。とりあえず今日は戻るよ。明日から世話になっても良いか?
「良かろう。ではカリーナの屋敷まで送っていこう!その時、ミグルには君を学校で暫く預かると説明するからな?」
わかった。一応、言っておくが俺の事ばらすなよ?
「分かってる。うまく説明するさ。」
そう言った通り、ミグルに上手く預かる理由を説明したリディアを見送り、俺は翌日ミグル達と学校に来ていた。
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