《どうやら魔物が現れたらしい》

町に向かって歩くこと数時間。盗賊達もいるから町に着くにはもう少しかかるらしい。ボーグが何か道具を使って盗賊達を捕まえて俺を見つけた事を町に連絡している。


「ええ。後2時間ぐらいで着くと思います。着いたら領主にも報告するのでマスターも領主の館へお願いします。ええ。ミグルさん達にも馬は無事だと伝えて下さい。それでは失礼します。」


町に着くまで後2時間もかかるらしい。随分と遠くまで転移してきたんだな。まあ、俺の足なら1時間もかからないから物凄く遠い場所ってわけでもないんだろうが。


現在、俺達は森を抜けて最初に転移してきた草原で一時的に休憩している。真夜中の移動は危ないと思うんだがボーグ達は慣れているのか、時々現れる魔物達を倒しながら食事をしている。


「やあ、アンディー。君も何も食べてないだろうからお腹空いてるだろ?これを食べて良いぞ!」


ボーグがそう言いながら俺の前に野菜と果物を置いてくれる。ありがたいな。拐われてから何も食べてないからお腹が空いていたんだ。俺は置かれた野菜と果物を喜んで食べる。


うーん。野菜と果物は旨いし、馬になってからは草も美味しく感じるんだが肉が食べたい!


馬は草食動物だから肉は食べれないんだろうけど人間だった頃の記憶があるから肉が凄く食べたくなる。異世界なんだし食べても大丈夫だったりしないかな?


俺の前ではボーグ達が倒した魔物の肉を焼いて食べている。旨そうだな。


「おいおい。お前は涎垂らして見てても肉は食べれないぞ?馬なんだから。」


俺が見てる事に気付いたダンに笑われてしまった。肉を見てたらいつの間にか涎が垂れている。恥ずかしい。


しかし、やっぱり肉は食べれないのか。ちくしょう!どうにかして食べれる様にならないかな?人化出来たら食べれる様になるだろうか?


「さあ、休憩は終わりだ。出発するぞ!」


ダンが周りにそう声をかけて動き出す。ダンの指示で兵士が縛った盗賊達を連れて歩く。その周りを冒険者が固めて逃げれないようにする。


冒険者が周りを固めるのは盗賊達を逃がさない為と魔物の襲撃に対処する為らしい。兵士達は魔物と戦った事がないのか魔物が現れると固まって動けなくなっていた。どうやら普段は町の治安を守っているだけらしい。警察みたいなもんなんだろう。


町に向かって歩くこと1時間程。俺達は草原を抜けて街道へと出てきた。幅5メートル程の道を進むこと数分、先頭を歩いている冒険者が何かに気が付いて声を上げる。


「全員止まれ!何か来るぞ!」


先頭の声に反応して冒険者達が武器を構える!少しすると数人の男達が走って来る。かなり慌てた様子だ。


「おい!そんなに急いで何があったんだ?」


ダンが走ってきた男の一人を捕まえて質問する。


「き、キングベアーだ!夜営をしてたらキングベアーが5匹現れて仲間が1人死んだ。俺達はFランクなんだよ!Dランク5匹に勝てるわけない。死ぬのは御免だ!すまない!」


そう言ってダンの手を振り払い逃げていく男達。男達が逃げていくのを見ていると後ろから声が上がる。


「来たぞ!キングベアーが5匹だ!皆、気を付けろ!」


前方で警戒していたボーグが弓を使って攻撃している。だが毛が多いキングベアーには大して聞いてなさそうだ。


「おい!兵士は後ろに下がってろ!邪魔になるようなら盗賊は捨てろ、死んでも構わん!」


ダンは兵士達に後ろに下がるよう指示を出して大剣を構えてキングベアーに向かって行く。盗賊達は見捨てられるのが嫌なのか必死に兵士に着いていく。


冒険者達が戦っている間、俺は兵士達と一緒にいる。キングベアーは2メートル近い巨体だ。あんな奴の近くにいたら餌にされてしまう。


「ボーグ!目を狙え!弓で目を狙うんだ!他の奴はボークの所に向かわせないよう牽制しろ!」


ダンが全体にそう指示を出す。ボーグがキングベアーの目に向かって矢を射るが簡単には当たらない。キングベアーは矢が鬱陶しいのかボーグの元へと向かおうとする。


「行かせるかよ!お前の相手はこっちだ!」


冒険者の1人がボーグの元へと向かおうとするキングベアーに斬りかかる。だがキングベアーが上から長い爪を振り落とし冒険者の背中に突き刺さる。そのまま背中を抉られたら冒険者は助からないだろう。


だが、キングベアーの爪が刺さる瞬間にボーグの矢が目に突き刺さりキングベアーが爪を抜いて痛みに声を上げる。


「ナイスだボーグ!」


矢を引き抜こうとするキングベアーをダンが勢いよく斬りつけて倒す。


「残り4匹だ!油断するなよ!」


そう言って他のキングベアーに向かっていくダン。カッコいいな。


「おい。こいつを頼む。ポーションをかけてやってくれ。」


俺がダンを見ていると兵士の元へと、さっき怪我をした冒険者が連れてこられる。兵士は直ぐに鞄から液体の入ったビンを取り出し冒険者にかける。


すると、冒険者の傷から煙が上がり少しすると傷が塞がっていた。傷は塞がったが血が足らないのか足元がふらついている。これじゃあ戦闘には戻れないだろう。


しかし、この世界にはこんな物があるのか。医者要らずだな。


暫くして残りのキングベアーも倒されていく。結局、怪我をしたのは1人だけで他の冒険者はかすり傷程度ですんでいる。


「いや、最初はどうなるかと思いましたがBランクのダンさんが居たから楽でしたね!」


キングベアーを解体しながらボーグがダンに話しかけている。ダンはBランクの冒険者なのか。ってか、あの戦闘で楽なのか?


やっぱり、外は危険な事が多そうだ。まあ、俺はずっと牧場にいるだろうから危険な目には遭わないだろう。多分。


結局、この約1日で自分の認識の甘さを理解させられたけど自分の為にも少しは魔法の訓練を頑張ってみよう。大事なものを守るためにも!


そして、それから1時間後に俺達は町に戻ってきた。町の入り口にはミグル達やギルドマスターって人が待っていた。


俺はミグル達に引き渡され、ボーグやダン達はギルドへと帰って行った。盗賊達は兵士が牢屋に連れていき後日、領主の指示で処刑されるらしい。


「アンディー良く帰ってきたな。無事で良かった。それでお前には悪いが数時間後には出発するぞ?良く休んでおくんだ!早くミーナの所に行こうな。」


ミグルが俺を宿の裏の馬車の所まで連れてきて朝には出発する事を教えてくれる。既に1日遅れてるから早くミーナに会いたいんだろう。


そして、朝にはホービスの町を出た俺達はトラブルもなく数日かけて魔法学校のある大きな都市に着いた。

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