《どうやら迎えが来たらしい》
ボーグとダンが何でここに?それに一緒にいるのはエルフじゃないか?
「ソフィア!無事だったか!」
俺とソフィア達が突然現れた男達に驚いていると後ろから一人のエルフの青年が飛び出してくる。
「お父さん!何でここにいるの?」
飛び出してきた青年にソフィアから驚いた声があがる。お父さん?マジで?
「何でってお前達が勝手に里の外に出て帰って来ないから探しに来たんじゃないか!お前の里を登録してある転移石は家にあったし帰れなくなったんじゃないかって心配してたんだぞ?お前がこの国の森に抜け出した痕跡が結界に残ってたから助かったが。」
かなり心配してた様だな。ソフィア達が見つかって安堵している。しかし、エルフの里はかなり遠くの場所にあるんじゃないのか?親父さんはこの国って言ってるし。
「ごめんなさい。すぐに帰るつもりだったんだけど魔物から逃げようと転移石を使ったら帰れなくなって。お父さんはどうやってここまで来れたの?」
うん。それは俺も気になる。特に何でボーグ達が一緒なのか教えてほしい。さっきの魔法を使った所は見られてないよな?
「ああ、それは彼等が協力してくれたからだ。お前達を探してたら盗賊を討伐に来てた彼等と出会してな。まあ、最初はお互い警戒して揉めたんだが事情をお互い話して協力する事にしたんだ。盗賊に捕まってる可能性もあったからな。まあ、本当に捕まってるとは思わなかったが。」
ソフィアと話ながら俺とボーグ達を見るソフィアの親父さん。どうやら俺を探しに来たボーグ達と出会って森を移動しながらソフィア達がいないか探していたらしい。
「あー、ちょっといいか!転移石って言ってたよな?それに嬢ちゃんの声、もしかして最近の盗みの犯人って嬢ちゃんなのか?」
ソフィアと親父さんが話していると成り行きをみていたダンが声をかける。ボーグも一緒にソフィアを見ている。親父さんが犯人って言葉に反応してソフィアを背に隠してダン達と向かい合う。
「あー、いや、別に捕まえようとか思ってないぞ?事情はなんとなく分かるから詳しい話を聞きたいだけなんだ。」
ダンはそう言いながら首のない遺体をチラッと見る。親父さんも遺体をチラッと見てから溜め息をこぼす。
「まあ、流石に理由も無しに許される事ではないな。ソフィア、詳しく説明しろ。何で捕まってたお前達がこんな状況になってるんだ?」
そう親父さんに言われたソフィアが俺を見る。正直に話されると困るな。俺はソフィアに声をかける。
ソフィア!俺が女神と知り合いって事と魔法が使えるって事は秘密だ。まあ、親父さん達にはバレてもいいが他の二人には絶対に秘密にしてくれ!盗んだ馬を連れてきたら馬が鍵を持ってきて助けてくれた。魔法を使って眠らせた盗賊達を縛ってたら頭が起きてきて戦って隙をついて倒した。そう説明してくれ、頼むぞ!
俺が簡単に説明する流れを伝えるとソフィアは俺を見た後、ボーグ達に説明していく。
「うーん。この馬が鍵を持ってきてくれたのか?そんな事あるのか?」
説明を聞いたダンがそう言って俺を見る。どうやら俺が魔法を使った所は見られてないみたいだな。
「アンディーの飼い主のミグルさんは凄く頭の良い馬だと言ってましたし一応の説明にはなってるので彼女は無罪で良いんじゃないですか?妹達が人質にされての犯行ですし。」
ボーグがそう言ってダンの疑問を流してソフィアの罪はなかった事にしようとする。
「だがな。ギルドマスターや領主に今の説明をしたら怒られるぞ?」
どうやらダンの心配はそこらしいな。なら、別の話を考えれば良い。俺はソフィアに声をかけてダンに説明させる。
「あの、それならお二人が倒して私達を助けてくれた事にしたらどうですか?どうせ、目撃者はいないんですし。」
ソフィアがそう言うとダンは驚いた顔に、ボーグは話に乗ってきた。
「それは良いですね。残りの盗賊達は寝ていて見てないですし、アジトに来たら馬を見つけて助けた事にすれば問題なく報告出来ますよ!盗賊の頭だけは抵抗してきたから倒したって事にすれば良いですし。」
ボーグがそう言って説明するとダンも仕方なさそうに了承する。
「わかった。なら、二人への説明はボーグがしろよ?俺は頷くだけだからな?」
それから二人は他にも来ていた冒険者や兵士に盗賊を倒して俺とエルフ達を助けた事を説明して残りの盗賊達を連れて行かせる。
「それじゃあ、俺達は馬を連れて町に戻るけどアンタ達の方は大丈夫か?」
ダンが俺に手綱を付けて親父さん達に声をかける。親父さんはソフィアの説明を聞いてから黙ったまんまだ。流石に父親だからソフィアの嘘に気付いているのかもな。
「ああ、大丈夫だ。俺達も直ぐに里に帰るから会うことは多分もうないだろう。今回は助かった。本当にありがとう。」
そう言って頭を下げる親父さん。だがその言葉は俺に向けられている気がする。とりあえず俺はソフィアへと別れを告げる。
じゃあなソフィア!もう勝手に里から出て親父さんに心配かけるなよ?
俺がそう言うとしっかりと頷いて頭を下げるソフィア。その後ろでソフィアを見ている親父さんが気になるけど後は任せて俺は早く町に戻るとしよう。
◆ソフィア
行っちゃった。ちゃんとお礼も言えなかったな。何で秘密にしてんだろ?
アンディー様は不思議な馬だった。最初、女神様から馬が協力するって言われた時は見捨てられたんだと思ったけどアンディー様はテレパスで話が出来る方で私の妹達を助けてくれるって言ってくれた。
アジトに向かう途中で、女神様とは何処で出会ったのか?関係は?色々聞いたけど教えてくれなかった。多分、アンディー様は女神様のペットか何かだと思ったけど言ったら怒られそうだから止めたわ。
アンディー様は魔法も使えた。私が使える睡眠魔法を教えたら一回で使うことができたわ。普通は馬に魔法が使えるわけないのに。
アンディー様が大丈夫って言うから妹達と一緒に待ってたら鍵の入った麻袋を持って助けに来てくれた。私は直ぐにでも妹達を連れて逃げたかったけど盗賊達を縛る様に頼まれた。縛ってたら盗賊の頭が起きて襲われたけどアンディー様のお陰で何とか倒すことができた。
でも、アンディー様は誉めてくれなかった。私だって頑張って戦ったのに。
すると、突然知らない声が聞こえてきた。最初は他にも盗賊の仲間が居たのかと思ったけど、お父さんが私に向かって飛び出してきた事で安心できた。
お父さんは人間と協力して私達を探してくれたらしい。人間の1人が声をかけてきた事で一瞬心配したけど説明をするだけで見逃してくれた。最初はアンディー様の事を説明するつもりだったけど秘密にしてくれって頼まれた。
色々と面倒なやり取りがあったけどアンディー様の案で人間達の方は納得してくれた。正直、町での事は許して貰えないかもって思ったけど謝ったら簡単に許してくれたし人間にも怖くない人達はいるらしい。
アンディー様は人間に連れられて町へと戻っていく。私がその後ろ姿を見ているとお父さんが肩に手を置いて声をかけてきた。
「さて、ソフィア。もう本当の事を話してくれるよな?まさか、俺があの説明で納得してると思ってないだろ?」
そう言って笑みを浮かべてる。お父さんはこれでも200歳を越えている。私の嘘なんて直ぐに気付いてしまう。
「えっと、別に嘘をついた訳じゃないよ?アンディー様に秘密にしてくれって頼まれたから。」
私がそう言うとお父さんが不思議そうに聞いてくる。
「アンディー様って馬の事か?何で様付けなんだ?」
そう言ってくるお父さんに私は全てを説明した。女神様の事から全てを全部。アンディー様もお父さん達にはバレても構わないって言ってたし!
「それって眷属様って事じゃないのか?って話してる場合じゃない。急いで追いかけてお礼をしなくては!」
そう言って追いかけて行こうとするお父さんを捕まえる。
「だから!秘密にしてくれって頼まれたからお父さんが行ったら駄目だって!それより眷属って何?ペットじゃないの?」
私が引き留めながら質問すると頭に拳骨が落ちた。
「ペットってお前。この無礼者が!いいか?眷属ってのは女神様が地上に遣わした存在で女神様の指示で行動する方達の事だ。神獣と呼ばれてるのが私が知ってる眷属だが、新しく馬の眷属が遣わされたんだろう。」
お父さんはそう言って納得するが私は納得できない。
「神獣なら私も知ってるけど神獣と違ってアンディー様は普通の馬と大して変わらないよ?おかしくない?」
私がそう言うとお父さんもおかしいと思ったのか再び悩んでいる。
「やっぱり、アンディー様はペットなんだよ!きっとペットって知られたくないから隠してるんだ。」
私がそう言うと再びお父さんの拳骨が落とされる。結局アンディー様の事は分からないまま私は無事にエルフの里へと帰ることが出来た。
結局、私がアンディー様の正体を知るのは、それから数年後の事だった。
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