《どうやら考えが甘かったらしい》
さて、アジトの中はどうなってるんだろうな?外からだと中が広いのか狭いのかも分かんないな。
「おう。遅かったじゃねぇか!戻らねぇからお頭が妹達を売るか考えてた所だぜ。お頭~エルフの小娘が戻って来ましたぜ!」
アジトに着くと俺を連れたソフィアに1人が気が付いて近づいて来た。声をかけて来た盗賊が俺を一瞬見た後、奥へと呼び掛けると数人の盗賊が出てくる。
「随分と遅かったじゃねぇか?まさか1人で逃げようとでも思ったか?まあ、そうなったら妹達を売り飛ばすだけだがな。ギャハハハ」
先頭の男がソフィアへと声をかける。コイツが盗賊の頭みたいだ。人相が悪く下品な笑い声をあげている。
「そんなわけないでしょ!最近は町の警備も厳しくなってるのよ。とにかく間に合ったんだから妹達には手を出さないで!」
ソフィアがそう言うと男は俺の方を見て笑みを浮かべる。
「まあいい。それより、馬が一匹だけとは拍子抜けもいい所だと思ったが良く見たら随分と高そうな馬じゃねえか。こりゃ、貴族の奴等に高値で売れそうだな。明日、いつもの商人が来るから奴に取引させるぞ。お前ら、その馬を奥の方に連れていけ!」
頭が部下に指示を出して俺を連れて行かせる。俺が拐われてから既に日も変わり外は明るくなってきてる。つまり、商人が来るまで約1日ある。その間に盗賊達を眠らせてソフィア達を助けないとな。俺は不安そうに見ているソフィアへとテレパスを送る。
ソフィア。黙って聞けよ?俺が声をかけるまで妹達と一緒に居ろ!俺が必ず助けてやるから安心して妹達と待ってろ。
俺が声をかけるとソフィアは黙って頷き、奥にある牢みたいな場所へと入っていく。どうやら妹達がいるのは牢の中らしい。盗賊の1人が鍵をかけて戻ってくる。
さて、盗賊の行動が分かんないと眠らせる事が出来ないし観察から始めるとするか。今のところ盗賊は6人しか見えない。ソフィアは10人ぐらいいるって言っていた。何処かに言ってるのか?
はぁ。盗賊達を観察し始めて数時間。コイツ等は特に何かをするわけでもなく昼間から酒を呑んだくれているだけだ。現在、俺は盗賊達が集まっている場所から少し離れた場所から観察をしている。ここからなら魔法を使えば問題なく眠らせる事が出来るはずだ。
「お頭~新しい馬は高く売れそうっすか?」
「ああ。ああいう綺麗な馬は貴族が観賞用に欲しがったりするからな。高値で売れるはずだ。まあ、あの商人が上手くやればの話だがな。それより、まだエルフの里ってのは見つかんないのか?」
観察していると頭と部下が話しているのが聞こえる。
「いや、まだ見つかんないみたいです。探しに出てる奴が何か情報を持って帰ってくればいいっすね!」
「ああ。エルフの里が見つかれば奴隷として売れるエルフが手に入れられる。この国の奴等は買わないがアレス王国なら奴隷のエルフも買ってくれるからな。」
どうやら、いない盗賊はエルフの里を探しに出てるみたいだ。里が見つかれば盗賊達を眠らせてソフィア達を助けても後から捕まる事になってしまう。さて、どうしたものか。
さらに数時間がたつと残りの盗賊が戻ってきた。戻って来た奴等も他の奴等と一緒に呑み始める。
「どうだ?里は見つかったのか?」
「いや、影も形もないですね。噂では森にはエルフの里があるって話でしたが探しても全く見つかんないです。あの捕まえたエルフ達に聞いた方が早いんじゃないですか?」
どうやら里を見つけることは出来なかったみたいだな。さて、ソフィア達も待たせてるし他の事は眠らせてからソフィアに相談するか。
あーソフィア聞こえるか?今から盗賊達を眠らせて助けに行くから待ってろ!
返事は聞こえないが俺の声は届いてるはず。さっさと助けに行こう。盗賊達の数人は既に酔い潰れて眠っているのもいる。残りの奴等も魔法を使えば問題なく眠るだろう。俺は盗賊達に向けて魔法を使う。
さて、そろそろ大丈夫かな?効き目が遅かったのか眠りにつくまで数分かかってしまった。俺は盗賊の1人が持っている麻袋を奪ってソフィア達の所へと向かう。
「アンディー様!」
ソフィアが俺に気が付いて近づいてくる。俺はソフィアに麻袋を渡して声をかける。
その麻袋の中に扉の鍵が入ってるから開けて出てこい!
「ありがとうございます!さあ、扉から出なさい。」
ソフィアが扉を開けると小さなエルフが4人出てきた。
「アンディー様。この子達が私の妹達です。助けてくれてありがとうございます!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
ソフィアがお礼を言うと4人もお礼を言ってくる。どうやら俺の事を話したみたいだな。
どういたしまして!それより、眠っている盗賊達をどうするかだな。盗賊達はエルフの里を探してた様だぞ?他のエルフも捕まえて奴隷にするって言ってたが。
「そうなんですか?でも大丈夫です。エルフの里はエルフにしか見つけられませんから。」
ならいいが。ソフィア達はこれからどうするんだ?エルフの里の場所が分からないから盗賊に捕まったんだろ?
「はい。でも探せば見つかると思います。森にはエルフの里に繋がる場所が必ずあって、そこが見つかれば里に帰れるはずです。本当は里を抜け出してきた時の森が見つかれば直ぐに帰れるんですけど場所が分からないから。」
まあ、帰れるなら良いんだけど本当に大丈夫か?
「大丈夫です。それに多分、私達が居なくなってるのに気が付いたら里の戦士が探しに来ると思うので今頃は近くまで来ていると思います。」
迎えがくるのか。なら、迎えが来るまで一緒にいるよ。流石に無事に帰れたか分かんないと心配だからな!
「ありがとうございます!」
じゃあ、とりあえず盗賊達を一応縛ってから外に出るぞ。ソフィアに任せる事になるけど大丈夫か?
「はい。任せて下さい!妹達も縛るだけなら出来るんで手伝ってもらいます。」
そう言って一緒に眠っている盗賊達を縛っていくソフィア達。すると盗賊の頭が目を覚ましそうになる。
「うーん。眠ってたのか?あ?何でお前が目の前にいるんだ?」
寝ぼけながら俺と目が合う頭。ゆっくりと辺りを見渡してソフィア達が仲間を縛っているのを見つけると剣を抜いて襲いかかる!
「てめぇら、どうやって外に出てきやがった?」
ソフィアが咄嗟に落ちていた剣を拾って攻撃を受け止めると頭が問い詰めてくる。ソフィアの視線が俺の方へと向かう。
「何処を見てやがる?まさか、馬に助けられたなんて言うつもりか?」
一瞬ソフィアの視線に釣られて俺を見た頭だが直ぐに馬鹿にしたような笑みでソフィアに襲いかかる。
とりあえず俺の事は警戒してないみたいだな。ソフィアは妹達を守りながら頭の剣を受け止め続ける。
俺は魔法で風の球を横からぶつけて頭を壁へと叩きつける。頭は壁にぶつかった勢いで気を失うがそこにソフィアが剣を振り落とす。
え?
ソフィアの剣が頭の首を切り落としてしまった。何で?
「ありがとうございます!アンディー様のお陰で何とか倒せました。」
そう言ってお礼を言ってくるソフィア。分かってる。相手は悪党だし死んでも誰も気にしない。けど初めて人が目の前で死んだ。目の前で殺された。別に殺さなくても良かったんじゃないのか?縛れば逃げることも出来ないんだから町に連れてけば良かったのに。
この世界で初めて人の死ぬ所を見た俺の頭の中はぐちゃぐちゃになっている。新しい生活に慣れたと思っていたけど気のせいだった。この世界では命が軽すぎるんだ。俺が今まで見ていたのは安全な場所の一部の世界だけ。きっと目の前の光景がこの世界の常識。人が簡単に死んでいく世界。
俺はこの世界で生きて行けるんだろうか?
「おいおい。盗賊達を捕まえに来たら一体こりゃどういう状況だ?」
俺がこれからの事を心配していると後ろから声が聞こえてくる。俺が後ろを振り向くとボーグとダン、それと数人の男達が武器を構えて立っていた。
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