3章:拐われました
《どうやら盗難が多発してるらしい》
騎士団から戻ってきて三ヶ月が過ぎた。
この世界にも季節があり現在は夏の真っ只中だ。朝から俺は厩舎の中でこの世界に来て3回目の夏の暑さにくたびれていた。
ああ~暑い!いい加減にしろよもう!こう暑くちゃ動く気にもならない。
最初の夏は人間だった頃の暑さと馬になってからの暑さとの違いに気が狂いそうになったっけ?
何かで馬は暑さに弱いって聞いてたけど、まさかここまで弱いと思わなかったよな。
本当は今すぐ魔法で小屋の中を涼しくしたい所だけど、誰かが来るかもしれないから使えないしな。今日も水浴びの時間まで寝て過ごそう!うん。仕方ないよな!
数日に一回、ミーナの母親が俺を洗ってくれる。今はそれを待つ以外に何もする気にはなれない。
「おーい!アンディー出掛けるぞ!」
昼頃、俺が寝ているとミーナの父親が小屋の中に入ってくる。何か出掛けるとか言ってるけど俺は動きたくない。
一瞬だけ顔をあげて寝ようとするとミーナの父親が再び声をかけてくる。
「アンディー起きろ。おい?無視してんのかお前?」
うるさいな。暑いんだから出掛ける訳ないだろ。
「あなた?早く出ないとミーナに会うのが遅くなるわよ!」
ミーナの父親を無視していると母親の方が外から声をかけてくる。ミーナ?
「ああ。今行く!それじゃあ、お前は留守番してな!ミーナも会いたいだろって思って連れていく気だったが動きたくないなら仕方ないだろ。」
そう言って出て行こうとする父親を立ち上がって止める。
「なんだよ!やっぱり来るのかお前?さっきは全く反応しなかった癖に。」
俺が着いて行こうとすると横で文句を言ってるミーナの父親。仕方ないだろ。ミーナに会いに行くって言わないアンタが悪い!
俺達が外に出ると馬車が置いてある。一匹の馬が馬車に繋げられている。良く見ると母馬のシンディーだった。
小屋を別けられてからは会うのも久しぶりだ。シンディーの隣には、もう一匹分のスペースがある。
「さて、アンディー頼んだぞ!」
ミーナの父親がそう言って俺を馬車に繋ぐ。これってそう言う事だよな?
「ミーナがいる学校の町まで3日程だ。頑張るんだぞ!」
うん。馬車を引かせるつもりのようだ。ちくしょう!
大人しく馬車を引くこと数時間。俺達は城のあった城下町とは違う雰囲気の町へと辿り着いた。
何故大人しく馬車を引いてるんだって思っただろ?仕方がないじゃねえか。だって!
「ご主人さま~もっと誉めて誉めて。偉いでしょ私!頑張ったよ!」
誰だ?って、シンディーだよ。この母、俺と離れた後からミーナの母親に世話をされてた様で凄く懐いたらしい。
今まで人間に酷い扱いしか受けて来なかったシンディーにとってミーナ達は特別なものに見えたんだろうな。
すっかり以前の人間嫌いは見る影もなく猫なで声で甘えている。母親としてみると正直気色悪い。
まあ、そんな訳でシンディーが馬車を引くもんだから俺だけ引かないという訳にもいかなかったんだよ。母親にだけ働かせて自分は見てるだけなんて息子、最悪だろ?
「さて、今日はこの町に泊まることにしよう!」
ミーナの父親。(最近やっと名前を覚えた)ミグルがそう言って馬車から降りて入り口の列に並ぶ。
ミグルが列に並んでいる間、俺達はミーナの母親と叔母の二人と一緒に馬車を町の中に停める為の手続きをする列に並んでいた。
この町は馬車を中に入れる為には手続きをする必要があるらしい。何でも登録する事で馬や馬車の盗難を防ぐ為らしい。
それだけ治安の悪い町って事かな?入り口の列に並んでるのもガラの悪い奴らが多い。
「次の人。馬の名前と年齢。それと馬車の大きさや色と形の登録お願いします。」
どうやら俺達の番が来たらしい。ミーナの母親が紙に必要事項を書いていく。
「はい。大丈夫です。それでは登録料に1万ゴールドをお支払い下さい。」
登録料なんて取られるんだ。てか、この世界に来て初めてお金の事を聞いたな。1万ゴールドって日本円でいくらなんだろう。
「ねえ。1万ゴールドって高すぎじゃない?他の町ならもっと安いわよ?」
俺が考え事をしているとミーナの叔母が受付にそう聞いている。
「すみません。最近、この町は盗難が多いため各馬車に見張りが付くことになって料金が上がったんです。見張りの人件費を考えると、これでも安い方なんです。」
そう言って説明する受付の女性。まあ、各馬車に見張りを付けたら人件費がかなりかかるだろ。それなら高くても仕方ないんじゃないか?
「そうなの?じゃあ仕方がないのかしらね。料金はずっとこのままなの?町に来る人が減るんじゃない?」
ミーナの叔母は見張りが付くならと納得したらしい。そのまま、世間話を始めてしまう。
「いえ。今、多発している盗難の犯人が捕まれば値段は下がるんです。皆さんも気を付けて下さい。特にその。」
受付の女性はそう言って俺とシンディーを見る。確かに俺達は犯人からしたら魅力だろうな。
「ええ、気を付けるわね。でも、見張りが付くんでしょ?」
ミーナの母親がそう言うと受付の女性は困った顔をする。
「そうなんですが見張りが倒されてしまう事もあって。その為、見張りも完全に盗難が防げる訳じゃないんです。すみません!」
そう言って頭を下げる女性。どうやら見張りも完全に防げないようだ。まあ、防げるなら料金はもっと高くなるんだろうな。
「わかったわ。気を付けておくわね。でも、見張りの人も強い人に頼んでね?」
そう言って受付を離れる俺達。受付の女性はわかりましたと頷いている。
「おう。そっちの手続きは終わったみたいだな!もうすぐ町に入れるぞ!」
受付を終えた俺達がミグルの所に行くと気付いたミグルが声をかけてきた。
「あなた。今、この町で馬や馬車の盗難が多いんですって!あなたも気を付けといてね?」
ミーナの母親がそうミグルに頼む。まあ、元騎士だしミグルも強いんだろう。城下町で有名だったし。
「そうか。わかった!気を付けておこう。」
ミグルがそう言った所で俺達が町に入る順番が来た!
「次の人どうぞ!」
入り口の男性がそう言って俺達を呼ぶ。この町は入り口に騎士がいないんだな?あれは城下町だからかな?王様がいる所に変な奴を入れるわけにはいかないだろうし。
「ようこそ、ホービスへ!中に入るには大人は1人千ゴールドになります。」
この町はホービスって言うのか。そう言えば国の名前知らないな。ミーナに聞いておこう。
「わかった。3人で三千ゴールドだ。ところで宿を探すんだがオススメはあるか?」
男性にお金を渡しながらミグルがそう訪ねる。
「馬車を停めれる宿は3つしかないですよ?その中でオススメは南東にある宿ですね。食事が美味しく人気の宿ですよ!」
そう言って南東の方を指差す男性。そして俺達は男性のオススメの宿へと向かった。
◆
「おい!さっきの白い馬見たか?あれは高く売れるぞ!」
ミグル達が町に入った後、物陰に隠れて話しをする男が二人。
「ああ。他の奴等に先を越される前に俺達が手にいれるぞ!」
二人は町のしがない盗賊でしかない。そんな二人を見ている影が1つ。影はニヤリと笑うとその場から姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます