《閑話:地球のその後》
騎士団に行く少し前の事。俺は今更ながら一つの気がかりを思い出した。俺は一人になれる場所を探して呼び掛ける。
「あなた。女神である私を呼び出すなんて偉くなったものね。」
そう言って来るのは女神のライラ様。俺を死なせた張本人だ。俺は気がかりな事をライラ様に聞くため彼女に地上に来てもらった。
「それで?私に聞きたい事があるんでしょ?」
ああ。今さらだけど俺が死んだ後の地球の様子が知りたいんだ。家族の事や学校の奴等の事とか。あの後の事を教えてくれ!
「本当に今更ね。もう2年も前の事なのに今頃気になったの?」
すみませんね。まさか馬になるなんて思わなかったし、この世界に馴染むために必死だったんだよ!
「まあ、いいわ。私の責任でもあるし見せてあげる。」
見せる?
「ええ。地球でも既に2年が過ぎてるわ。だから過去の地球の様子を見せてあげる。貴方の頭の中に直接、映像を流すわね!」
そう言って俺の頭に手を置くライラ様。すると頭の中に映像が流れ込んでくる。
あそこに見えるのって富士山だよな?ここって空の上ってことか?徐々に地上が近くなってくる。あれは!俺が通っていた高校が見えてくる。
「おい!救急車はまだ来ないのか?」
学校に着き、教室まで降りると担任だった先生が叫んでいた。周りにはクラスメイトや他の先生もいる。担任は一生懸命、心臓マッサージを行っているけど既に俺は死んでいる。
やがて、救急車が着き俺を連れていく。俺はその後を追ってみる。
「そんな!一体何があったんですか?教えて下さい!」
救急車を追って病院に着くと場面が変わる。母さんと妹が泣き崩れて父さんが担任に何があったのか聞いている。どうやら俺の死を伝えられた所のようだ。
「突然、雷が教室に居た息子さんに落ちてきたんです。心臓マッサージを繰り返しましたが間に合いませんでした。申し訳ございません!」
担任がそう言って頭を下げる。この先生は責任感の強い人だ。俺が死んだのは助けられなかった自分のせいだと思ってそうだな。
「いえ、先生が謝る必要なんてないですよ。息子を助けようとしてくれてありがとうございます。」
父さんが謝る先生にそう声をかける。父さんが涙を流しながら先生の方を叩くと先生も泣きながら父さんと話している。
なんだかな。こんな場面を見ると、一人で納得してたけど色々考えさせられるな。
父さんが妹と母さんを支えて病院を後にする。俺の遺体は自宅に搬送されるらしい。
再び場面が変わる。俺がいるのは葬儀場の中。俺の遺影が花に囲まれ、参列者が献花をしている。
参列者には小学校や中学の同級生も来ている。高校の同級生も沢山来てくれていた。意外と友達多かったんだな俺。
俺がそんな事を考えていると、あの子が泣きながら友達に支えられて葬儀場に入ってくる。俺が好きだったクラスメイトだ。
「私、辰馬くんの事が好きだったんだよ?覚えてないだろうけど高校の入学式で会った時からずっと好きでした。2年で同じクラスになれて嬉しかったんだけど、こんな事になるなんて思わなかったなぁ。辰馬くんの事、忘れないからね!」
そう言って献花をする彼女。献花を終えると泣き崩れて友達に連れられて出ていく。そんな彼女を俺は目で追っていた。
マジで!?あの子も俺の事、好きだったの?なら、告白すれば良かったよ。まあ、今更なんだけどさ!ちくしょう。
そのまま、葬儀を最後まで見ていく。自分の葬儀を見るってのもおかしな話だよな。まあ、馬に転生って時点でおかしいも何もないんだけどさ。
さて、葬儀も終わったしこの後はどうなるんだ?どうせなら皆の卒業式も見てみたいな。俺が死んだのが2年の5月頃。すでに2年が経ってるなら皆もう卒業してる。
「なら、見てみる?構わないわよ。」
頭にライラ様の声が聞こえてくる。見せてくれるなら見てみたいな。
すると、映像が卒業式へと変わる。皆、緊張しているな!
俺が辺りを見渡していると保護者の席に父さんと母さんを見つけた。母さんは俺の写真を膝に置いている。
皆が順番に校長から卒業証書を貰っていく中、最後の生徒が終わると校長が話し始める。
「たった今、卒業生に卒業証書を渡し終えた訳ですが本当なら卒業生はもう一人居た筈でした。彼は卒業する事は出来ませんでしたが卒業生達の強い希望により、卒業証書を送りたいと思います。」
校長がそう言うと1年生の中から1人の女生徒が壇上に上がっていく。その生徒は俺の妹だった。へえ。この高校に入学したんだな。
校長が俺の名前を読み上げ卒業証書を妹に渡す。すると卒業生の皆から拍手が送られる。
皆こんな事をしてくれてたのか。嬉しいなぁ。気が付くと俺は涙を流していた。
やがて、過去の映像が終わり目を開くとライラ様がいる。
「どうだった?気がかりはなくなった?」
そう聞いてくるライラ様。ああ。あの後の事が知れて良かったよ。ありがとう!
「まあ、私のせいだからね。それで、もう知りたいことはないのね?」
うーん。どうせなら現在の家族の様子も見てみたいな。出来る?
「まあ、良いわよ!」
そう言って再び俺の頭に手を置くライラ様。すると俺の家が見えてくる。家の中に降りると三人とも家に居た。どうやら起きてきたばかりの様子。地球じゃ今が朝らしい。
「おはよう辰馬。」
そう言って俺の遺影に手を合わせる父さん。続けて、母さんと妹も手を合わせていく。
どうやら三人とも元気そうだ。良かった!
「そう言えば今朝、久しぶりにお兄ちゃんの夢を見たわよ。」
妹がそう言うと父さんと母さんも俺の夢を見たと言っている。
「そうなの?でも、私の夢は他と違うわよ!何とお兄ちゃんが馬になってたのよ。真っ白な馬に。それで女の子と楽しそうに遊んでんの!ウケるでしょ?」
そう言って笑っている妹。おい!ウケるってなんだよ!
「あら、私も辰馬が馬になって女の子と楽しそうにしてる夢を見たわよ?」
妹が笑っていると母さんも同じ夢を見たらしい。
「俺も同じ夢をみたぞ?皆、同じ夢を見たってことか?」
どういう事だ?今の俺とミーナの事だよな?するとライラ様の声が聞こえてくる。
「まあ、私のせいで家族が死んだわけだし?たまにだけど今の様子を夢に見せてあげている訳!」
なるほどな、ライラが見せたのか。まあ、夢だと思ってるみたいだし構わないか。
「それにしても夢とはいえ、馬になってるなんてね!本当に面白いわ!」
ライラの声に気を引かれていると、母さんがそう言って笑っている。
「ああ。昔から走るのが好きなやつだったが馬になるとわな!」
続けて父さんも笑い始める。
「馬も走るのが好きな動物だもんね。名前に馬が入ってるだけあるわよ!昔からかけっこだけは得意だったし。」
妹がそう言って皆で笑っている。元気そうだなお前ら!ちょっと笑いすぎなんじゃないの?
そうして楽しそうに笑う家族を俺はライラ様に呼ばれるまで見続けていた。
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