《どうやら寂しいらしい》

「じゃあ、そろそろ家に帰ろ?皆、心配してるんでしょ?」


ヤバい!そうだった。話してたら時間がかなり経った気がする!俺は急いでミーナをのせて牧場へと駆ける。


「アンディーに乗れるのも、暫くお預けか。」


ミーナが小さくそんな言葉をもらす。やがて、牧場の柵が見えてきた。俺は勢い良く柵を飛び越えた。


「うわっ!?びっくりした!!ってアンディーとミーナ?お前ら無事だったのか!」


俺が柵を飛び越えると、ミーナの父親と従業員がいた。父親は剣を持っている。従業員も武器を持っており、俺とミーナを見て驚いている。


「ごめんなさい。ちょっと森に入ったら魔物に襲われたの。」


ミーナがそう言うと、父親は驚いて心配している。


「この森に魔物が?ミーナは怪我してないのか?」


「大丈夫だよ?アンディーが助けてくれたの!」


ミーナがそう言うと、父親は俺の方を見て頭を下げた。


「アンディーありがとう。お前のおかげでミーナも怪我なく帰って来れたんだな!」


そう言って俺の顔を撫でるミーナの父親。


「それじゃあ、ミーナは先に家の方に戻ってろ!俺達は魔物を退治してくるから!」


そう言って、森の中に入っていくミーナの父親達。俺はミーナに大丈夫なのか聞いてみる。


「大丈夫だよ!お父さんは昔、騎士だったんだって!お母さんと結婚したから牧場を手伝う為に辞めたって言ってたよ。」


そうなのか。なら大丈夫かな?まあ、三匹だけだし大丈夫だろ。俺はミーナを乗せたままミーナ達の家に向かう。すると、家の前にミーナの母親とおばさんが立っている。


「「ミーナ!」」


俺達に気付いた二人が走ってくる。


「もう!何処に行ってたの!凄く心配したのよ?怪我とかしてない?お父さんは貴女を探しに森に行ったわよ?アンディーが見つけてくれたの?」


ミーナを抱き締めながら心配する母親。おばさんの方も後ろで涙を拭いている。


「ごめんなさい。でも、アンディーが助けてくれたから大丈夫だよ。お父さんは少し前に会ったけど魔物がいたって言ったら退治しに森に行ったわ。」


ミーナが謝ると俺の方を見てお礼を言ってくる母親。だが、森に魔物がいたと聞くと、ミーナに怪我がないか念入りに確認している。


「良かった。怪我はしてないのね。お父さんは私が待つから中に入ってなさい?疲れたでしょ!エリカはアンディーを小屋に戻してあげて。」


そう言ってミーナを家に入れようとする母親だが、ミーナがそれを止める。


「待って。お母さん達に話しがあるから私も待ってる。アンディーも一緒に!」


そう言って俺の背中を撫でるミーナ。そのまま、三人と一匹で待つこと数十分後に父親達が戻ってくる。


「ふう。疲れた!何だ?皆で待っててくれたのか?アンディーまで一緒か!」


父親達は疲れたと言いながら武器を下ろして俺達に挨拶する。


「あなた。ミーナが話があるんだって!こっち来て。」


母親に呼ばれて父親がやって来る。ミーナ頑張れ!


「あのね。二人とも、それにエリカおばさん。私、学校に行く事に決めたわ!私、魔法学校に行く!」


ミーナがそう言うと三人とも驚いている!


「本当かミーナ!朝はあんなに嫌がってたのに何で行く事にしたんだ?」


父親が代表してミーナにそう訪ねる。


「アンディーが私の友達が見たいって言ったの。お姉ちゃんの立派な姿が見たいんだって!」


ミーナが笑顔でそう言うと三人は俺の方を見る。


「アンディーが言った?」


母親がそう呟く。三人は不思議そうに俺の方を見る。ミーナ!訂正しろ!はやく!俺がそう言うと、


「あ!えっと、言われた気がしたの。そう!アンディーが目でそう言ってる気がしたの!」


ミーナが慌てて訂正すると三人は不思議そうにしながらもミーナが学校に行くと言ったことに嬉しそうにしていた。


「しかし、言われた気がするってだけで行く気になるなら朝の騒ぎは何だったんだろうな?」


父親がそう笑って言うと母親も続けて


「そうよね!でも、アンディーの目は不思議な魅力があるのよね。本当にそう言ってるのかもね!」


そう言って笑っている。その後は俺も小屋へと戻されて自分の小屋で眠りに着いた。


それから1週間後。今日はミーナが学校に向かって出発する日だ。ミーナは1週間、俺の所に来て沢山の話しをした。俺が知ってる地球の物語を話すと、学校で友達が出来たら話してあげるんだと言っていた。


ミーナを迎えに来た家庭教師の魔法使いと一緒に遠く離れた場所にある国一番の学校へと向かうらしい。そういえば、この世界の国の事は、俺何も知らないな。


「じゃあ行ってくるね!アンディーもまたね!」


今日は俺も見送りに連れてきてもらってる。ミーナは大きく手を振って離れて行く。良かった。無事に学校に行ってくれたな。


俺はしみじみこの1週間を思い出す。俺はミーナがやはり学校には行きたくないって言い出すんじゃないかと心配だった。だけど、そんな事はなく元気に行ってしまった。なんだろ?なんかモヤモヤする。


ミーナが出発してから数日、特に変わらない毎日。今までならミーナが毎日遊びに来てくれていた。でも、ミーナのいない今は誰も相手してくれない。


最近は見学に来る人も減ってきているみたいだし俺が歩いていても皆、他に夢中になっている。今は隣の羊の子供とカールが大人気になっている。


カールが子羊の背中に乗ってるのを見学者が可愛いと騒いでいる。あれだ。地球の一時は人気になるけど新しいのが現れると途端に人気のなくなった動物園の動物みたいだ。まあ、同じなんだけど。


なんか寂しいな。ミーナが居なくなった事が俺にこんなに影響するなんて。まあでも、ミーナも頑張ってるんだ!ミーナの為にも俺も頑張らないと!


さて、今日も嫌な時間が来たぞ。俺が小屋に戻されて数時間後。夜遅くになるとソイツはやって来る。


「おーい。アンディー。お前はわかってくれるよな?俺の天使が遠くに行っちまったよ~!なあ、お前も寂しいよな?」


コレは酔っ払ったミーナの父親。ミーナが居なくなってから毎日泣きながら俺に絡み酒をしてくる面倒な存在だ。


「お前が余計なことしなければミーナは牧場に残ってたのに~!ミーナ~帰って来てくれ~。」


どうやらミーナの父親は本当は学校に行かせたくなかったようだ。妻の手前、行くなと言えず。ミーナの性格なら残ってくれるもんだと思ってたらミーナは学校に行くことを決めたから俺に愚痴をこぼしに来ているようだ。


「ああ~ミーナ。俺の天使が遠くに!きっと戻ってきたら俺の事なんて嫌がる子になってるんだぞ?アンディーお前のせいだぞ!ミーナ~。うっぷ。」


あ、ヤバい!


「おうぇー」


う、うわー。馬鹿野郎。俺に、俺にかけるな~!

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