《どうやら行方不明らしい》
「全く。ライラも真面目にやれば優秀なんだがな。一度ミスして怒られてから不真面目になってしまって困ったものだ。」
先に帰ってしまったライラ様に文句を言うデスティア様。
「まあ、今はライラの事は放っておこう。他に知りたい事はあるか?話せる事なら答えるぞ?」
そう聞いてくるデスティア様。うーん。特に俺には関係ないしな。あ!でも世界の管理って少し気になるな。他にも世界があるのか?
「あるぞ。世界は無数にある。地球みたいな世界もあれば、この世界みたいに魔法のある世界。生き物が居ない世界もあるし、世界は可能性の数だけ無数に存在する。女神界には世界の泉と呼ばれる場所があり、そこに小さな球が浮かんでいる。それが君達の世界だ!」
へえ。可能性の数だけ無数にか。凄いな!ライラ様も大変な役割を担ってるんじゃないか!
「その通りだ。女神でも役割がない者は沢山いるんだ。役割があるライラは優秀な女神として認められているんだが不満らしい。」
ライラ様は苦笑いを浮かべている。双子だから心配なんだろう。
「さて、そろそろ私も女神界に戻るとしよう。その前に、一つだけ望みを叶えてあげよう!妹が迷惑をかけたお詫びだ。」
デスティア様がそう言って俺を撫でる。女神様だけあってライラ様もデスティア様も綺麗だ。少し照れくさい。
「ただ、申し訳ないが人間にしてほしいって願いは叶えられない。それは世界の秩序が許さないからな。どんな望みを叶えて欲しい?」
申し訳なさそうに言うデスティア様。世界の秩序ってなんだろう?
「世界の秩序ってのは決まりみたいな物だな。馬が人間になるなんておかしいだろ?まあ、魔法で一時的に人化する事は可能だが一時的だから問題はない。だが、私が君を人間に戻すのは秩序に逆らう事になるんだ。」
完全に人間になるのは駄目なんだ。でも、魔法なら一時的に人間になる事が出来るってのは良いことを聞いた!
「さて、そろそろ願いを決めてくれ。ライラが心配だからな。」
じゃあ、魔法が使えるようにしてくれないかな?
「なんだ?知らないのか?君は魔法を使えるぞ。基本的に人間しか魔法は使えないが、この世界にいる魔物と呼ばれる動物の中には魔法が使える奴もいる。君とそいつらの共通点は高い知性だ。人間と同じ知性があれば魔法は使える。」
マジかよ!?考えた事もなかった。俺にも魔法が使えるのか!さすがに馬が魔法を使えるなんて思うわけがない。
「ただ、君が魔法を使えるのは秘密にした方が良いぞ?嫌だろ魔物扱いは?」
え?俺って魔物なの?人間でもウマでもなく魔物なの?マジで?
「いや、すまない。別に魔物って訳ではない。ただ、魔物扱いされるかもって可能性の話だ。」
ビビった!可能性の話かよ。でも、秘密にした方が良さそうだな!魔物扱いは嫌だぞさすがに!
「まあ、とにかく君は魔法が使える。だから他の願いにしてくれ!」
うーん。他の願いにって言われても思い付かないぞ?
「なら、また今度会った時にでも言ってくれ!呼べば私に聞こえるから!」
え?呼べば来るの?てか、女神様が地上に来ていいの?
「別に大丈夫だ!女神の中にはやる事がないから地上で生活している者もいるからな!地球にも100人ぐらい居たぞ!」
マジか!100人が多いのか分かんないけど地球にも居たんだ?
「まあ、そう言う事だから次に会う時を楽しみにしてるよ!またな!」
デスティア様はそう言って消えていった。
これが半年前の事だ。それから俺はミーナの家庭教師が話している魔法を少しずつ覚え始めた。って言っても使った事は一度もない。練習する場所がないからな。
さて、現在の話をしよう。現在、俺は困った状況にある。ミーナに人質ならぬ馬質にされている。
きっかけは今朝の事。ミーナが突如、俺の所に来て俺を連れて近くの倉庫に閉じ籠った。倉庫の外ではミーナの両親や従業員。家庭教師の魔法使いがミーナに出てくるように言っている。
「ミーナ。そんな事をしないで出てきて話をしよう!お前の将来の為なんだ。話を聞いてくれ!」
どうやら、話を聞いてるとミーナを魔法学校に通わせようという話らしい。この世界は12歳から魔法学校に通うことが出来るらしい。ミーナは明日で12歳になる。
「やだ。絶対に学校になんか行かないわ!アンディーと離れたくない!」
そう言って泣きながら俺にしがみつくミーナ。ミーナは相変わらず、俺以外に友達がいない。俺に会いに来た家族連れの人達の子供がミーナに話しかけたりしていたが人見知りするらしく逃げていた。
俺もミーナの事は心配だった。このままで良いわけがない。学校に行けばミーナにも友達は出来るはずだ!これもミーナの為だ!
「アンディー?どこ行くの?」
俺はミーナから離れて倉庫の入り口に向かう。入り口には中から閂がかかって開かないようになっている。俺はその閂を咥えると外して扉が開くようにした。
「アンディー!駄目!」
ミーナが止めようと声をあげるが既に扉は開いた。
「おお!?扉が開いた?アンディー、お前が開けてくれたのか?」
ミーナの父親が俺に気づいて驚いている。
「アンディー。なんでよ?私の味方じゃないの?」
ミーナは泣きながら外に連れて行かれる。俺も従業員に連れられて小屋へと戻された。
少しするとミーナの父親が俺の所にやって来た。
「アンディー。さっきはありがとうな!お前もミーナの事が心配なんだろう?俺には分かるぞ。お前は頭が良いから俺の話しも理解しているんだろうな。」
そう言って俺を撫でるミーナの父親。やがて話しが終わると小屋を出ていった。
そして、その日の夜に騒ぎが起こる!
「ミーナいるか?ミーナどこだ?」
突然、ミーナの父親が小屋の中に入ってくる。俺の所に来ると、
「ここにも居ないのか!何処に行ったんだ?」
どうやらミーナが居なくなったらしい。俺は出ていこうとする父親の服を咥えて引っ張る。
「なんだアンディー急いでるんだ。話してくれ!」
俺は父親に向かってヒヒーンと声をあげる。
「なんだ?お前もミーナを探してくれるのか?」
俺が頷くと外に出してくれる。俺はそのまま父親を置いて走り出した。
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