1章:転生しました

《どうやら人じゃないらしい》

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1章:転生しました

《どうやら人じゃないらしい》

女神様の光に包まれてから次に意識を取り戻すと青空の下にいた。


生まれ変わる事が出来たんだろうか?でも何で青空の下にいるんだ?


ここは屋外だろうけど、外で生まれたのか?普通、屋内で出産するんじゃないのか?緊急だったのかな?


俺がそんな事を考えていると目の前に女の子が現れた。年は小学生くらい。


「良かった。無事に産まれたみたいだね、お母さん。」


「ええ、一時は息してないから駄目かと思ったけど良かったわ。」


女の子の隣には、彼女の母親らしい人が立っている。


てか、俺の事を話しているんだよな?息してなかったの?危うく転生失敗する所だったんじゃ、、、、


まあ、今は大丈夫だから平気だろう。それより、俺を産んでくれた母親は何処にいるんだろ?まだ声も聞いてないぞ?


普通、子供が産まれたら喜んで話しかけてくる気がするけど。


「おお。無事に息を吹き返したようだな。後は何か後遺症がないか調べないとな。」


目の前の母娘を見ながら自分の親について考えていると農家のおじさんみたいな格好をした男が現れた。


「お父さん。」


女の子がそう呼ぶ。どうやら父親らしいな。母親の方が父親に話しかける。


「あなた。向こうは大丈夫なの?」


「ああ。母親の方は健康そのものだよ。この子の事を気にして落ち着かない様子だったけどな。」


どうやら、俺の母親は無事みたいだな。俺が息をしてないから離されたって事かな?


「それより、この子は大丈夫かしら?息は吹き返したけど立ち上がろうともしないわ。足が悪いのかしら?」


女の子の母親がそんな事を言っている。何を言っているんだ?普通、産まれたばかりの子供が立ち上がる訳ないだろ?


「息をしてなかったからな。足に後遺症が出たのかもしれないな。可哀想だが立ち上がらなければ殺すしかないぞお前?」


俺に近づいて、そんな事を言う父親。いや、他人の子供を殺すなよ!何でお前に決める権利があるんだよ。俺の親に聞けよ。


いや、それで殺すって言われても嫌だけど少なくとも他人が決める事じゃないだろ。


「お父さん?この子殺しちゃうの?まだ生きてるよ?」


女の子が不満そうに父親に話しかけるが父親は立ち上がらなければ仕方ないと言うばかり。


どうやら、このまま立ち上がらなければ本当に殺されそうだ。この世界では産まれたばかりでも立ち上がる事が出来るって事なのだろうか?


俺の常識なら赤ちゃんが立てないのは当たり前の事だけど世界が違うなら常識も変わってくるって事なのかな?


「ねえ、立たないと死んじゃうよ?お願いだから頑張って立ってみて。」


女の子が泣きそうな顔で話しかけてくる。出来るか分かんないけど子供を泣かす訳にもいかないし頑張って体に力を入れてみる。


少しだが体が動いた気がする。ただ、体のコントロールが随分と難しい。ズルズルと手足が滑ってしまう。


「頑張って!頑張って立ち上がるのよ!」


「よし、頑張れ。そうだ足に力を入れろ。さあ、立つんだ!」


「頑張れ。頑張れ。」


親子が一生懸命に応援してくれている。その声に答える様に俺はなんとか立ち上がる事が出来た。四本の手足で体を支える!


「良かった。よく頑張ったね!」


女の子がそう言って俺を撫でる。母親と父親も俺を撫でる。女の子の顔が産まれたばかりの俺の視線に合わさる。


「さあ、少し歩く練習をさせよう。」


父親が俺に紐を付けてくる。え?紐をつけるの?普通、手を引いてくれるもんじゃないの?


「お父さん!私がやりたい!」


女の子が紐を持つ父親に満面の笑みで近づいていく。え?頭大丈夫か?この子。普通赤ん坊を紐で引っ張ったりしないぞ?


「気を付けるんだぞ?それじゃあ、こいつの母親の所に連れていくか!」


父親は女の子に紐を渡す。母親の方は何も言わないが二人の側で笑っている。


この人達は頭がおかしいんだろうか?それとも、子供を紐に繋げて歩かせるのが普通なのかな?この世界じゃ。


女の子に引っ張られるまま少しずつ俺も歩き出す。手足を使って。ハイハイだな!何か体がデカイ気がするけどきっと気のせいだ。


「ほら。頑張って歩こうね。」


俺が少し疲れて止まると、女の子は俺を撫でながらそんな事を言う。いや、俺ついさっき産まれたんだが?さっきまで死にかけてたんだけど?スパルタだな、この子!


嬉しそうに紐を引っ張る女の子に引っ張られるまま少しずつ歩き出す。他人の子供なのに厳しすぎだろ!


やがて、引っ張られるまま歩いていくと少し大きな小屋にたどり着く。


「もうすぐお母さんの所に着くよ!良かったね!」


小屋の前に着くと女の子が嬉しそうに言ってくる。どうやら俺の母親は中にいるらしい。


父親が小屋の扉を開く。小屋の中には数匹の馬が仕切られた状態で過ごしていた。


中では一人の女性が馬の世話をしている。女の子の母親に似た女性。


「良かった。息を吹き返したのね?本当に良かったわ。」


女性は俺を見ると、安堵の言葉をもらす。うん。どうやら彼女が俺の母親だな。


出産直後で子供を放って仕事をしてるなんて頭のおかしい母親だ。


「おばさん!」


女の子が俺を引っ張ったまま女性に向かっていく。さて、母親との初めての対面だ!嬉しいね!


「おかえり!」


女性は俺を無視して女の子を迎え入れる!うん。分かってた。この人は俺の母親なんかじゃない。別に悲しくなんてないぞ。


むしろ自分の子供を放って仕事をするような人が母親じゃなくて良かったね!


「さて、あんたの母親が心配しているよ。おいで!」


女性は女の子から紐を受けとると俺を一匹の馬の前に連れていく。綺麗な白い毛並みの馬。馬は俺に気づくと顔を舐めてくる。


ああ。分かってたよ。だって、手が蹄だもん。何か体もデカイし、女の子達の態度も人間に対しての態度じゃなかったもん。


そりゃ、簡単に赤ちゃんを殺すなんて言えるよ。だって人間じゃないんだから。紐だって付けるよ。だって引いてあげる手がないんだから。


ここまで来たら気づいたよな?どうやら俺は人じゃないらしい。




ウマに転生した、、、らしい。


おい、聞いてないぞ?女神様!

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