第2話
ここは、俺たちで言うところの、異世界って奴だそうだ…。
「流行には疎いと思っていたんだがなぁ~」
頭抱えながら、魔王の後を付いて歩いている。
「何か言ったか?ユーマ」
俺の前を、ふよふよと浮きながら進んでいる。多分、地面に付いたら身長は、おれの胸当たりまでしか無いだろう。
「何でも、無いっス」
なんでも、ここはダリス共和国という国で、この城は、昔、王国だった頃のお城だったんだそうだ。今は、街の中心地が変わり、ここは荒れ果てていつしか魔王(幼女)が住み着いてしまったと……。
異世界って、王国ばかりだと思ったら、そういう風に移り変わっていく国もあるんだなぁって思う。まぁ、俺には異世界でも、ここの人たちにはこれが現実世界で、ちゃんと生活してるんだものな。
「ここだ。ここ」
扉を開ける。
部屋の中を見ると、ちゃんと絨毯が敷いてあって、暖炉もある。ベッドやテーブル、ソファーまで…。
「ここ。ユーマの部屋だ。気に入ったか?」
俺んちよりよっぽど、豪華だ。
「クローゼットの中には服も入れておいたぞ」
服……俺んちから、持ってきてる。
いや…なんで、警備会社の制服みたいな物まで。着らんぞ、俺は。
「いいのか?俺、使用人だろ?」
「かまわぬ。我のせいで、ここに来てしまったのに、我を怖がらず、パニックにもならず……。ちゃんと話をしようとしてくれたのは、そなたが初めてなのだ」
パニック…忘れてた。俺、異世界に来てたんだっけ。
「忘れてたわ。俺、帰れるのか?」
「……帰りたいのか?」
しょぼんとして見える。本当にこいつ魔王なのか?
「確認…だ。帰れるのか?」
「無理だと思う。ユーマは、我に名前教えたから」
「は?」
「名前は契約。魔王ではなくても、魔物に名前知られたら、その者に縛られる。
だから、ユーマは帰れない」
魔王がニマッと笑った。
なんですと?
魔王の手から紫色の光が放たれる。攻撃かと思って身構えたのだが、全身を包んで…なにか、暖かさを感じたと思ったら、
「魔王?」
何か釈然としないといった顔で、魔王が俺を見てる。
「いや…。そなたに護りを与えた。ここの警備をやってもらう以上、人間の脆い身体のままだと、困るだろうからな」
なんか、態度が変だ。
「俺は…何をすれば良いんだ?」
「とりあえず…城内を巡回してくれてたら良い。自宅警備でやとったのだ」
ちゃんと、こっちを見ずに言う。さっきまでは、あんなにキラキラとした目で嬉しそうにしゃべっていたのに。
「おい。魔王、大丈夫か?」
思わず、腕を掴んだ。
「そなたは、よく魔王を掴むな…。
夕飯になったら呼ぶから、今日はゆっくりしててくれなのだ」
スルッと俺の手を外し、また、ふよふよと飛んで移動していくのだった。
仕事は、明日からか…。
しかし、何だったんだろうな。アレは…。
まぁ、いいか。快適だし。
俺は、ベッドの上で転がって、頭の上で腕を組む。
どうせ、向こうの世界だって一人だった。
家族はいたけれど、関係は希薄だったし、仕事もリストラで首になったばかりだったし…。
はぁ、って溜息をついた。
なんなんだろうな。俺の人生って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。