7 救出

「みどりだけは!」

助ける。なんとしても。自分がどうなろうと。身体の奥の方から熱いものが迸る。


香はみどりを抱きかかえて、自分の体と扉の間に押し付けた。

視界はわずかだ。ジャンプする先のかなりの部分がわからない。だが、みどり一人分の厚さなら。みどり一人分の空間なら。

70センチ。みどりだけは押しだせる。自分が扉に切断されても。みどりだけは助ける!

すぐ後ろに足音が聞こえる。あの男が来る!

香は目をつぶって・・・跳んだ。両手を伸ばしながら。


「みどりちゃん!」

香は慌ててみどりを地面におろした。ゆっくりと。眠そうに立ち上がるみどりを見て、ほっとする。無事だ。たぶん。

がしゃっ!背後で扉を押す音。

香は慌てて振り返ると、四角い窓からあの男と目が合った。

男は驚いたように目を見開いた。


「香さん!」

朋子の声が聞こえる。助かった。

ゴト、ゴロ、ゴト。足元から音がする。何かが落ちた音。

足元を見ると自分の化粧ポーチやノートが落ちている。

あ!自分の左の足。足の甲、外側が血だらけ。香は意識が薄れていきながら誰かに抱きかかえられるのを感じた。



男は倉庫内に残されたデイパックの切れ端を眺めていた。いや、切れ端ではない。

切れ端のそばに、香が姉から送られたバッグチャームが半分転がっていた。

男はしゃがんでバッグチャームをつまみ上げる。

「モノリスも壊れるのか。」

銀色の棒状のそれは、中央で斜めに切断されていた。その切断面は漆黒。光すら届かない暗黒の様相を見せていた。

男は満足そうに笑うと、それをポケットに入れた。


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