第3話

 景色が一変する。

 体の中に急に冷たいものを流されたような感覚。

 明確な敵意をもって私たちの世界は取り壊された。

 振り向けば抜き身の刀を持った男がヒナを真っすぐと見る。


「………」

「FHエージェント、"ブラッドドーピング"の大空緋那だな」

「…だとしたら?」

「殺す」

「ころす?」

「そうだ、FHのエージェントは残らず根絶やしにする」

「そう…」


 二人の間で剣呑な空気が


「って、待って待って待って! 私放置でなんの話が進んでんのさ!」


 割って入る。


「っていうかそっちのあなた知ってるよ。 UGNのエージェント、あんまりいい噂は聞かないけど。 命令は聞かない、FHだけを狙って回る戦闘狂、"ハンター"の細田ほそだ省吾しょうご

「ほう、俺のことを知ってるか、アンタもFHなんだろ、一緒に仲良くあの世に送ってやるよ」

「いや、私もUGNなんだけど…」

「…あァ?! なんでFHとUGNのエージェントがつるんでやがんだ、お前FHのス「いや、そんなんじゃないよ」

「なんというか、うちらはただの友達よ。 UGNとFHとそりゃ真逆な組織だけどさ、個人だと関係ないし、ヒナが何をしてるって訳でもない…、ないよね??」


 振り返ってヒナに確認する。


「ヒナこの人と何か因縁とかは?」

「ないよ」

「最近なんかUGNに喧嘩売るようなことは?」

「ない」

「じゃあこの人、明確な理由もなくてヒナがFHだからってだけで襲ってきてる、でいいのかな?」

「そう、だと思う」

「おっけー、そしたら」


 UGNのエージェントに向き直る。

 明確な敵意を身内に向けて、友人を守るために真っすぐと見据える。


「私のこと一応教えとくよ、UGNチルドレン、支部にも未所属だから全然知らないと思うけど"限りなく白に近いモノクローム"ホワイトトーン聖沢チカでーす」

「で、私の友達を今からとっちめようって言うんでしょ? じゃあ守ってあげないと友人失格だよね。 悪いことしてたならそれは怒るけど」

「いいや、そいつはFHだ。 UGNのチルドレンなら知ってるだろうがっ! FHは悪だ、こいつらが存在するだけで世界がダメな方向にいく」

「随分と頭のかったいおっさんだなぁ! ヒナは悪い子じゃないし、私の知ってる限り悪いこともしてない。 だったらFHってだけで判断するのはおかしいんだよ」

「っち、洗脳か何かか? しゃーねえ、お前もまとめて面倒見てやる、殺しはしねえから安心しろ」


 …まあ、分かってたけど。やっぱりこうなっちゃう。

 どうしてどいつもこいつも、私はただ自由に生きたいだけなのに。

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