僕はキカイダーV3

トチシュン

第1話   僕はキカイダーV3

 此処は某大病院。晃が集中治療室に運び込まれて三日目になる。依然意識が戻らず危険な状態だ。

 晃は病院に運び込まれた時、不可解なことを言った。

「ダークにやられた・・・」と。

 そして「助けて・・くれ・・・ショッカーが・・・・」とうわ言のようにいい、その後昏睡状態に入った。

 今夜あたりが生と死の分かれ目だ。家族や親近者が駆け付け、憔悴しきった様子でガラス越しに晃の体に付けられた医療機器を見つめている。

  

 晃は現在五十歳、トラックの運転手をしていた。その仕事中の事故ということだ。

 煽り運転や危険運転がよく問題になっている昨今、晃の言動から今回の事故も何らかのトラブルから発したものではないかと、現在警察の方でも詳しく調べているという。



 人気のない公園を10歳くらいの少年が表情を硬くして歩いている。何かにおびえているようで、不安げに目を左右に動かし、しきりに何かの気配を探っている。

 ガサガサッと公園の植え込みの低い木が揺れた。

 ヒィっと体が硬直し震える少年。恐る恐る振り向くと、人に慣れ切った野良猫が草木の間から出て来た。

 ほー、と息をつく少年。安堵して野良猫においでおいでと手を出す。だがその時、ガサガサッと反対側の木が揺れた。

 少年は顔に緊張を走らせ、ゆっくりと振り向いた。するとそこにはハカイダーが立って居た。全身が真っ黒でスケルトンの頭は脳髄が丸見えだ。

「あ、ああ・・・⁉」

 少年は全身が恐怖につつまれ、助けも呼べない程体が硬直した。

「とうとう見つけたぞアキラ!お前の体には我がダークの最終兵器の秘密が隠されているのだ。さあ、この俺と一緒に来い!」

 ハカイダーはアキラを鷲掴みにし連れ去ろうとする。もがくアキラ。

「だ、誰か・・助け・・助けて・・・誰か!、助けてー!!」

 アキラは恐怖の中で叫び声を上げた。すると何処からか弦楽器の旋律が流れて来た。

 ポン、ポン、ポン、ポ―ン。ポンポンポーン。懐かしいメロディーだ。

 ハカイダーは何処だ!何処だ!と辺りを見回した。するとビルの屋上で一人の男がギターを弾いていた。

「あ、あそこだ!」

 謎の男はギターを降ろすと、ビルの屋上からバシッとハカイダーを指差した。二郎だ!

「ハカイダー!その少年を離すんだ!」

 そして二郎は、両手を広げてチェンジのポーズをとった。

「チェンジ、スイッチオン!ワン、ツウ、スリー!」

 ビルから飛び降りた二郎が地上に立つと、キカイダーになっていた。キカイダーとハカイダーの戦いだ!

 ギーン!キーン!

 激しい金属音のぶつかり合い。ハカイダーは愛用のマグナムをぶっ放す。キカイダーはダブルチョップに大回転投げだ!

 劣勢に立たされたハカイダー。

 すると、レットハカイダー、シルバーハカイダー、ブルーハカイダーが助っ人に現れた。一気に形勢が替わり、キカイダー危うし!

 キカイダーはこのまま破壊されてしまうのか!

「キカイダー頑張れ!」

 アキラは思わず叫んでいた。だが、キカイダーの劣勢はどうにもならない。危うしキカイダー!

 ブルーハカイダーのムチに身動き出来ないキカイダー。ハカイダーのマグナムの銃口がキカイダーの眉間に当てられた。このままではキカイダーがやられてしまう。アキラは声を限りに叫んでいた。

「誰か!誰か助けてー!!」

 ウィーン!ブゥーン、ブゥーン!

 するとどこかから猛烈なバイクの爆音が聞こえて来た!アキラは振り向いた。

「あ!あれは、サイクロン!!」

 アキラがそういった時、サイクロンは大ジャンプをした。乗っているのはもちろん本郷武だ!

 カシャとベルトが開き、赤い風車が風を受け回り出す。本郷武は仮面ライダーに変身した。

「トゥー!」

 いきなり助っ人に現れた仮面ライダー。当然アキラの助けを呼ぶ声に現れた正義の味方だ!

「出たな!ショッカー!」

 仮面ライダーは素早くハカイダーに飛び掛かりマグナムを払うと、ライダーチョップでブルーハカイダーのムチを切った。だがハカイダーはショッカーではない。ダークだ!

「ありがとう仮面ライダー、助かったぜ!」

 キカイダーは言った。

「アキラ君待っていろ、今助けてやる!」

 キカイダーはハカイダーに戦いを挑んで行く。仮面ライダーとキカイダー、二人が力を合わせ形勢は一気にひっくり返った。

 レットハカイダーのボウガンはライダーパンチで破壊され、シルバーハカイダーの脳はキカイダーのデンジ、エンド!で割られた。

 悪の栄えたためしはない。ハカイダー危うし!その時である。突然現れた黒マントの不気味な男。

 不気味な男がマントを翻すと、何とイカデビルが現れた。

「仮面ライダー、今日がお前の命日だ。かかれ!ショッカーの怪人どもよ!」

 蝙蝠男に蜂女、さそり男とショッカーの戦闘員が現れ、いっせいに仮面ライダーとキカイダーに襲い掛った。危うし仮面ライダー!そしてキカイダー!

 形勢はまたまた逆転だ!やはり正義は悪には勝てないのか。アキラはそう思った時、無意識に叫んでいた。

「誰か!誰か助けてー!」

 すると何故か仁王像が公園の噴水の傍にあり、それが突然爆発した。

 突然の出来事に正邪入り乱れての戦いが止まり、全ての目がそこへ集まった。

 爆発後の煙の中にキラキラと輝く人影が現れた。言わずと知れたキカイダー01だ!

「二郎、待って居ろ。今助けてやる!・・キカイダー01!サンライズフラッシュ!!」

 太陽電池のエネルギーを開放し、01の体が光り輝きショッカーの戦闘員がバタバタ倒れ、蜂女のサーベルが溶けた。蝙蝠男の羽は焼け焦げ、さそり男は泡を吹いた。

 形勢はまた逆転だ。すると何処からともなく怪しげな笛の音が。知ってるものなら誰もがよく知るギルの笛。

 キカイダーが苦しみ出した。すると何故か仮面ライダーまで。またもや劣勢に立つ正義の使者達。

 01一人では、到底太刀打ち出来るはずがない。そう思った時である。

 アキラもそろそろ要領得ていて、

「誰か!誰か助けてー!」と叫んでいる。そこへ現れたのは、もうみんなお分かり一文字隼人。

 ヒュィーン「変ー身!トゥー!」

 大空でクルリと大回転、そしてライダーキーック!!

 イカデビルは大爆発。力の仮面ライダー2号の登場だ。やはり正義は強いのだ。そう思った時である。

 アキラは調子にのってまた助けを呼んだ。呼ぶ度に助けが来るので、面白くなってきたのだ。

「誰か!誰か助けてー!!!」

 アキラは自分でも吃驚するほどの大きな声で叫んでいた。するとやっぱり現れた。しかしそれはタイミングが悪かった。今は悪の方の番だった。

「仮面ライだー、今日こそお前を八つ裂きにし、この私が世界を征服するのだ!」

 メデューサの様な頭から大きな一つ目が現れた。ショッカーの首領のお出ましだ。地獄大使にゲル大佐。ブラック将軍まで引き連れている。とんでもないことになってしまったものだ。

 仮面ライダー1号2号ともポカンと口を開け呆然だ。キカイダーも01もなすすべがない。

 こうなれば仕方がない、仮面ライダー1号2号が同時に行った。

「アキラ君、君が変身するのだ!君の正体を明かす時が来たのだ。キカイダー、君たちもアキラ君にエネルギーをありったけ送るのだ!」

 キカイダーと01、そして1号2号は強く頷き合った。

「よし!全エネルギーをアキラ君に送るぞ!」

 四人の正義の使者はアキラに両手をかざしエネルギーを送った。

「さあ、アキラ君。変身のポーズをするのだ!そして世界を悪の手から救ってくれ!」

 1号本郷武の呼びかけにアキラは答えた。

 ヒュィーン! 

 アキラは両手を水平に伸ばした。そしてぐるりと上から回しながら言った。

「チェンジキカイダー、V3!!!トゥ―!」

 ダブルタイフーン、命のベルトが眩しく回る。大空でクルクルクルと横捻りの大回転で着地すると、アキラはスケルトンの仮面ライダーV3に変身していた。

「V3-ッダブルキーックッ!!」

 ドッカーン!キカイダーV3の登場で、悪は一撃で滅び去った。

 キカイダーV3のアキラは、正義の使者たちに駆け寄った。

「アキラ君よくやった。これで世界の平和は守られた。君のおかげだ」

 本郷も、一文字も、二郎も、一郎もアキラをそう言って労った。アキラの体には全ての物を吹き飛ばす凄まじい力が眠っていたのだ。

 正義の使者達は胸に熱いものが込み上げた。これでいつ果てるとも知れない悪との戦いは終わったのだ。

 正義の使者達はアキラと熱く握手を交わした。すると本郷が突然苦しみだした。そして二郎も。続いて一郎、そして一文字。

 ボンっ、ボンっ、ボンっと次々に正義の味方が吹っ飛んだ。

 アキラが呆然と立ち尽くしていると、アキラの体も吹っ飛んだ。



 ピィー-------------。集中治療室に鳴り響いた音。親近者達が嗚咽を漏らす。


 晃は世界を守ってこの世を去った。子供のころの夢を叶えて、満足だったかもしれない。


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