第3話「転生勇者と爆乳魔女と、世界最強魔法使い」
勇者トウマ。
ありがち(?)に異世界転生して勇者となった彼は、混沌世界ケイオスで大魔王を倒したんだよね。
そして彼と共に戦った八人の仲間の一人がイリア。
彼女は勇者と対になる存在「聖女」として覚醒し、その後はトウマの恋人になった。
イリアは惚れっぽい娘で何度も失恋していただろうけど、やっと良い相手に巡り会えてよかった。
って感傷に浸ってる場合じゃない。
トウマの話を聞かなきゃ。
「俺とイリアはヒトシさんに呼ばれてここへ来たんですが、途中ではぐれちゃって」
「でも君は居場所が分かってたんだよね、『神の目』で」
今言った「神の目」とは天界の秘術で、この世のありとあらゆる事、でもないけどある程度の事は即座に知る事が出来る能力だ。
だから僕達の事も知ってるんだよな。
「ええ。でも今の状態までは」
トウマはイリアを抱き起こして揺すったが、反応がなかった。
「彼女は魔法力の使いすぎでそうなってるんだよ。だから当分は目が覚めないかと」
「隆生、それはどういう事だ?」
姉ちゃんが尋ねてきた。
「僕が思っているとおりなら、イリアはそこにいるジェイガンさんの力を借りて敵を討ったんだよ」
僕が老魔法使い、ジェイガンさんの石像を見ながらそう言った後、トウマも
「あ、俺も今見えました。たしかにイリアは」
――――――
「く、何者なのよあんた!? 下手な魔王以上の気を放ってるなんて!」
中庭には強大な闇の気を放つ黒い体の魔物がいた。
イリアはその黒魔物と戦っていたが、どんな魔法を放ってもダメージを与えられず、徐々に傷ついていった。
「ふふ、知れば後悔するぞ?」
黒魔物は不敵に笑いながら言う。
「いいから教えなよー!」
イリアが怒鳴りながら尋ねると
「――だ」
「嘘、マジでー!?」
イリアはそれを聞き、信じられないとばかりに叫ぶ。
「本当だ。ふふ、聖女といえどその程度か、ではそろそろ」
魔物は腕を大きく振り上げる。
「う、こ、こうなったらあれで」
イリアが意を決して呪文を唱えようとした時
- 聖女さんや、早まってはいかんぞい -
「え、誰?」
イリアは辺りを見渡すが、黒魔物以外は誰もいなかった。
- それを唱えたらあんたの命がないぞい -
また声が聞こえた。
「あ? う、うん。でもあいつにはこれしか効きそうもないし」
- わかっとるわい。だから儂が力を貸そう。そうすれば死ぬことなくあやつを討てるじゃろて -
「え? あ、わかる。あなたってあたし以上の魔力を」
- ひょひょ。いずれはあんたの方が上になるじゃろて。だから死に急ぐでないわい。それにあんたが死んだら悲しむ者もおるじゃろが -
「あ、そうだ……トウマが」
- さあ、聖女さんや -
「わかったよ。最強の魔法使いさん、あたしに力を貸して!」
- ああ。儂の力、あんたに預けるぞい -
イリアの体から眩く輝きだした。
「な、なんだこの魔法力は!」
黒魔物は驚き後退る。
「よーし、行くよー!」
イリアが魔法力で七つの光を出すと、それが彼女の目の前で円を描く。
「そ、それはまさか」
「そうよ、はああっ!」
七つの光が魔物目掛けて飛んで行き
「ギャアアアアアアーーー!」
光は魔物を飲み込み、跡形も無く消滅させた。
「ふ、ふう、やったー。でも」
イリアが放った呪文は自爆呪文と伝わっているが、実は高位の神以外は使えない超呪文であった。
それを人間や他の生物が使った場合肉体はおろか下手をすると魂までもが消滅してしまうので自爆呪文として世に伝わっていた。
だがイリアは声の主、世界最強魔法使いジェイガンの力を借りた為、一時的ではあるが神の領域にまでその力を上げた。
だが、それでも彼女の体に相当な負担がかかったようで
「疲れちゃった。トウマ、あとは、おねが、い」
そう言った後、イリアはその場に倒れ伏した。
――――――
「そうだったのか。それで」
姉ちゃんや他の皆はイリアを見つめている。
「ええ。それとその敵は石像になっていた人達を取り込み、自分のエネルギーにしようとしていたようです」
トウマはイリアを抱き寄せたまま言う。
「そして、それを防いでくれたのがイリアとじいさんか。うん、目が覚めたら改めてお礼を言うよ」
タケルがイリアに向かって頭を下げ、石像になったジェイガンさんにも頭を下げた。
「ああ、やっぱ君は英雄だな。強さだけじゃない、心もね」
トウマがタケルを見て、笑みを浮かべながら言う。
彼、トウマは僕の小説を読んでくれてるネット友達がモデルなんだよな。
実際はどんな人か知らないけど、もしかするとこんな感じかなあって思いながら書いてたんだよなあ。
ホントそんな性格なんだな。
そして僕が思っていた通りの顔立ちでもある。
本当に、彼にそっくりだ。
するとその呟きが聞こえたのか、トウマがこう話しかけた。
「はは、俺は隆生さんとネットで話してた感じ、そのままですよ」
え?
「ト、トウマ。君ってまさか」
「ええ、ネット友達の『トウマ』本人ですよ」
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