殴りこんだ女たち


 午後一時二十五分、電話が鳴りました、留守番電話が留守を伝えます。

 でも何か伝言が入っています。

 聞いてみますと、女性の声で、

「メールの件でここへお電話を下さい」

 と、電話番号を云っています。


 さて、これからどうしましょうか。

 取りあえず姉に連絡を取ります、勿論、姉の頭の中へですが。


「姉さん、私が直接ここへ行きましょうか?」

「そうですね、でも、わざわざ貴女が行くことはありません、相手の責任者をそこへ呼びつければいい話です」

「エールさんにお使いを頼みましょう」

 マレーネさんも「それがいいでしょう」と云います。


「エールさん、これこれで、お願いできますか?」

「わかりました、私が適任でしょう、いらない事はしゃべらずに、問答無用でつれてきましょう」


 私も見えないようにして、ついて行くことにしました。

 マレーネさんが電話の先をサーチしますと、ある邸宅の一室です。

 国連ビルではありませんね。


 その一室に誰かがいます、電話はこの部屋にひかれています。

 携帯ではないようですね。


 エールさんが、

「慈善鍋の団体のようですね、なら私に任せてくれませんか、誰が待っているか分かっていますから、あるじ様」

 どうやら、エールさんは私のことを、『あるじ様』と呼ぶようです。


 エールさん、危ない雰囲気が漂っていますよ。

 昨日あんなに可愛かったのに……


「噂のお金持ちファミリーの総帥ですか?」

「電話を待っている者は別の者ですが、いまからそのお金持ちファミリーの、最高指導部(ブナイブリス)の所へ行きます」

「あるじ様に向かってふざけた事をしてくれます」

「きっちりとけじめをつけさせなければ」


 で、転移しました。

 エールさんが姿を見せます、最初の修道女の姿です。


「余はエール、我があるじ様に、ふざけたまねをしてくれたお前を、どうすればよいのかな」

 なかなかですね、お手並み拝見しましょう。


 なにか相手がいっています、おゃ、護衛の者が出てきましたね。

 女一人相手に大げさな……

 私はこんな相手は嫌いですので、エールさんに、

「死神を貸してあげましょう、唱えなさい」と、囁きました。


「あるじ様はご立腹である、使いよ、使命をはたせ、愚か者をかたづけよ」

 私は、タリン内乱の時の死神を出現させました。


 黒い塊で、目みたいなものがボーと二つあるだけですが、見てはいけない者を見ているような……

 そのものの周りの空間がゆがんでいます、そして漆黒の霧が現れます。


霧はスーと広がっていきます。

 その中にいるものは、血を吹き出し干からびていきます。

 護衛部隊が干からび苦悶の表情をして、ミイラのように転がっています。


 悪いけど私たちに刃向かったのですからね、私は容赦ないですよ。

 傭兵さんは死ぬことに対して覚悟があるはずです。

 まぁ命は勘弁してあげますか、廃人の手前あたりで止めてあげましょう。


 さて、この親父をどうしましょうか。

 エールさんが、一旦漆黒の霧の広がりを止めました。

「我があるじ様の名の一つはルシファー、さて、お前はどうする?どうしてあるじ様のご立腹を慰めるのか?」


 エールさんは役者ですね……、いや神は本来無慈悲ですから、こちらが本質ですか。


 なにか命乞いをしていますね、ますます嫌になりますね。

 マレーネさんに、この組織の上部組織を構成する幹部を、すべてここへ、転送してもらいました。


 恐怖を与えますか?

 私がそう思いますと、エールさんが頷きます。

「あるじ様は、お前の命で購えとのご命令である」


 漆黒の霧は死神の姿に変化しました、大鎌をもった髑髏の姿です。

 部屋に冷気が漂い出します、周りの物が朽ちていきます。

 大の男たちが凄い悲鳴をあげました。

 二三人発狂したかもしれません。

 でも一人だけましなのがいました。

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