メール


 その日一日、姉の家に居候して、今後の予定を立てています。

 サリーさんはテレビに夢中です。

「お嬢様、この箱はすごいですね、これでお嬢様の世界がここに居ながら見られるのですから」


「たしかにそうですが、気をつけてくださいね、テレビには伝える方の意図が隠れているものです」

「そのまま真に受けることは、愚かなことになります」

「二つ三つ同じ事柄を伝える、別々の映像を見て、総合的に判断する必要があるのですよ」


「つまり、すべてを信じてはいけない、嘘の中より真実を見抜け、ということですか?」

「その通りです、やはりサリーさんは聡明ですね、私の愛する女です」

「お嬢様……」ポット赤くなるサリーさんです。


 姉は仕事に素知らぬ顔で行きました。

 三人でお留守番です、お昼は姉がピザを大量に注文してくれていましたので、これを食べています。

 エールさんは黙って控えています。


「エールさん、なにか気になることでも?」

「あるじ様、ルシファーのこと……」

 私はエールさんの口に指を当てます。

「云わなくていいですよ、この話しは姉が切り出すまでね」

「……」


 私は姉の家のパソコンを立ち上げました、十年前とはかなり違います。

 姉からレクチャーを受けていますので、別に難なく使えます。


 姉が昔の私のアドレスを維持管理していてくれていました。

 懐かしい世界、パソコンでインターネットを色々いじっていた頃を思い出します。

 と私宛にメールが来ていました、先程です。


「……これは……姉が私宛にメールなど送るわけはないし……」

「薫さん、私宛にメールが来ていますが、これの内容を開かずに表示できますか?」

「たやすいことですが、内容に少々困惑します」


 するとマレーネさんが割り込んできました。

「マスター、構いません、堂々とお読みください、後の始末はお気持ちのままに私が処理します」

 心強いですね、マレーネさんは。

 メールを読みましょうか。


**********


 はじめまして、吉川洋人様、我々は国連の組織で、未確認重要事項保護局と呼ばれています。

 急遽新設された部署で、公表はされていませんし、今後もされる予定はありません。


 我々は貴方の現状について、ご相談にあずかる事が可能です。

 本日午後一時二十五分に、電話を差し上げます。

 留守番電話に、日本語で伝言いたします。


 我々はナノマシンも把握しております。

 我々としてはこの点について、交渉をしたいと思っています。

 勿論、貴方の絶対優位は揺るぎなく、良からぬ行動も無力ということを、このナノマシンを分析した結果、理解しています。


 それを踏まえての交渉です、取りあえずはお会い頂きたく願っています。

 なお全面的に現地政府は協力いたしますことも、申し添えておきます。


**********

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