第20話 二十歳になった日
僕は誰よりも早く二十歳になった。
二十年前、四月一日、0時0分0秒に僕は生まれた。
小さな未熟児だった。
僕は体の発達が他の子より遅れていた。
一年近く遅く生まれたはずの、早生まれのあの子より。
小学校の体育は地獄だった。
中学ではチビだからといじめられた。
高校では、まるで空気のような存在だった。
大学はそこそこ楽しい。
サークルに入って、同じような趣味を持つ仲間も出来た。
そこそこな日々を送りながら生きている。
「いいよなー、お前はもう酒も自分で買えるんだろ」
友達が僕の肩に腕を回しながらそう言ってきた。
そうか。二十歳になったんだから堂々と酒が飲めるのか。
「俺なんかねーちゃんに買ってきてもらうために毎日大変なんだぞ」
「はは。お前ももうすぐ誕生日だろ」
僕はそう言って笑った。
小学生の時は、中学生が大人に見えた。
中学生の時は、高校生に憧れを抱いていた。
高校生の時は、早く大学生になりたいと思っていた。
大学生の今思うのは、二十歳ってそんなに大人でもないんだなってことくらい。
コンビニで目に止まったチューハイをカゴに投げ入れた。
「……」
店員は特に年齢確認はしてこなかった。僕って結構年下に見られることが多いんだけど、良いのかよ。まぁめんどくさいからされなくていいんだけどさ。
「ざっす」
お釣りをポケットに捩じ込んでコンビニを出た。
春のまだ冷たい夜の空気が全身を包み込む。
ビニール袋をぶら下げて、酔ってもないのにふらふらと歩く。
「あーあ」
明日は一限から授業がある。
早く寝ないとな。
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