第10話 心臓メトロノーム

私の心臓は、メトロノーム。


誰かが設定した速度で、一定のテンポを刻む。


時に早く、時にゆっくりと。


そして、誰かが針を止めてしまえば、私の心臓も止まる。


その「誰か」は、この世で一番意地悪な「神様」だ。


私の心臓をメトロノームにしたのも、その神様。


私は神様が嫌い。




今日も友達がストーリーを載っける。


ある子は友達とショッピング。

ある子は彼氏と水族館デート。

ある子は制服ディズニー。


キラキラしたエフェクトなんて使わなくても、彼女達の日常はキラキラ輝いている。


なのに、私は何?


今日も一人ベットの上。友達との繋がりはこのスマホだけ。


薄汚れたベッドに、薄汚れたパジャマ。

腕に繋がれた点滴のチューブ。それが命綱。


神様、お母さん、どうして私をこんな体に産んだんですか。




ネットの人は「神様なんて居る訳ないだろ」と馬鹿にした。


お母さんは「ごめんね、ごめんね」と泣きながら何度も謝った。


友達は「神様が居るとしたら私がぶっ殺してあげるよ」と笑った。




メトロノームの針が狂った。


「早く!先生呼んで!」


慌てた様子の看護師さん。私はテンポが狂ったメトロノームの針を必死に掴もうとした。


ついに壊れた私のメトロノーム。


こんなぐちゃぐちゃなテンポで誰が演奏してくれるの。


もう止めてよ。


神様がゆっくり降りてくる。


「よく頑張ったね。」


そう言った気がした。


誰のせいだと思ってるのよ。


あーあ、もっと友達と遊びたかったな。

普通に体育の授業に参加したかったな。

薬なんかに頼らないで生きれる強い子になりたかったな。


次は手抜かないで作ってね?


メトロノームは、テンポが狂っちゃうんじゃ使い物にならないんだから。


壊れたメトロノームの針は、もう動かない。

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