真心の意外な特技

「ねぇ、やっぱり機嫌なおしてくれない? おねーさん、何でも買うよ」

「もので釣られてあげませんー」

「そういわずにさぁ~」


 不用意な一言によりまたしても真心を不機嫌にした女神が真心を構いまくり宥める姿を空は苦笑いと共に眺めていた、そんな三人は校舎内から外に出てグラウンドの出し物を見ていた、グラウンドにもいくつか出し物があり、その中心となるのは運動部が多い、野球部のストラックアウト、サッカー部のPK対決など様々だ。


「あ、真心ちゃん、あのストラックアウトで勝負しましょ、勝ったら機嫌なおして」

「え~、私この手のは正直自信ないというか、無理ゲーなんですよ」


 そう言いながら、野球部のストラックアウトで勝負をするわけだが。ぶっちゃければ真心はこういったスポーツ競技はとことん向いてないのだ、なにせ。


「……えっと、ざ、残念だったね(おい、なんで大人の距離でやらせてんの)」

「(いや、だって、この子うちの高校の制服着てるじゃん!)」

「(だとしても、この小ささじゃあの距離届くわけねーだろうが!)」

「あの~、聞こえてますよ」

「「「あ」」」

「とりあえず、残念賞頂きますね」


 そう、真心の身長は周りよりも小さい、それこそ平均を頭一つ下回る程に。

そうとなれば、一般人と同じ距離からボールを投げても、それが届く事は無い。

筋力等もその体格通りで非力なのだから。


「なんか、ごめんなさいね真心ちゃん」

「いえ、お気になさらず、もう……諦めた方がいいのかな、身長」

「ま、真心ちゃん、げ、元気出して、そうだ! ほらあれ、真心ちゃんあれなら得意だよね」


 怒りを通り越し落胆してしまう真心に居たたまれない気持ちになる女神様ちなみに女神さまは全て打ち抜いて豪華景品であるプロテイン三か月分を抱えていた。

空はそんな真心を励ますために別の出し物の方へと向かう、そこにあったのは。


「金魚すくいね、真心ちゃん得意なの?」

「お、やってく? ポイ1つ300円ね」

「捕っても水槽準備してないんだけど」

「そういう時は取った数に応じて景品あげるよ、このお菓子セット」


 出し物は生物部のそれで育てた和金による金魚すくいであった。

救ったのを戻す代わりにお菓子セットと交換してくれるようだ、一匹も取れなかった時は先ほども貰ったこういった時の定番である棒菓子を一つ進呈するとの事。


「それじゃ、一回やってみましょうか、1つ貰える?」

「あいよ、頑張ってね、一年生かな? ちっちゃいねぇ」

「それ、気にしてるんですよ」

「おっと、そりゃ悪いねって、上手いねぇ、うちできちんと管理してる和金がいとも簡単に」


 ここの生物部の育てている金魚は夏祭りの出店の金魚なんかよりもよっぽど健康管理に気を付けて丈夫に育てられており元気も元気、むしろ元気過ぎて取れないくらいなのだが、それを真心は器用に掬っていく。


「器用ねぇ、格好いいわよ真心ちゃん」

「前に薄いポイで何度も挑戦してお小遣いをパーにした事があって、それから自分でポイを買って猛練習しました、何号のポイでも今なら最低でも3匹くらいいけます」

「真心ちゃんはこういう器用さとか丁寧さが必要な事は大得意なんですよ」

「やるねぇ、持ち帰るかい?」

「いえ、お菓子セットください」

「ほい、カルシウム入りのお菓子もあるから、背のびるかもね」

「そういうのいいので」


 そうして結局二桁を超えたあたりでポイが破れたところでお終い。

真心は袋一杯のお菓子を手に入れ、他の出し物へと向かうのであった。

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