文化祭二日目

 凛子に纏わりつかれながら菖蒲の出し物などを見た初日が終わり二日目。

真心の午前中は今日も焼きそば作りから始まる、ついでに俊介も一緒だ。


「そういえば、お客さんって誰だったの?」

「おれんところの神様」

「へぇ、伊藤君の所の神様はどんな感じ?」

「……気のいいチンピラ」

「……伊藤君の所のマモノと同じ感じってわけね」

「そういう安達の所の神様は?」

「……株やってるお金持ちなお姉さん?」

「……俗っぽいな」


 ごもっともである。


「こんにちは空ちゃん、あらー、メイド服なんて可愛いわね」

「あ、えっと」

「顔忘れちゃった? 私よ私、ジェーンね」

「あ、ジェーンさん、そうでした、こんにちは」


 真心と俊介が裏で喋っていれば、表ではまたしても空が絡まれていた。

金髪碧眼、秋らしく露出を抑えているが豊満な胸は主張激しい服装をした女神だ。

空も神様とこの場で呼ぶわけにもいかず言いよどむがそこは女神様、機転を利かして偽名を使い、空もその名前で呼ぶ。


「真心ちゃんはいないのね」

「真心ちゃんは裏でお料理作ってます」

「えー、メイド服で接客してくれるんじゃないのー」

「その、真心ちゃんの体格に合うメイド服のレンタルは無くって」

「あ、真心ちゃんはちっちゃいものねー、ならしょうがないかー」


 二人の会話その中でも最後の女神の言葉がというオノマトペが書かれた矢印になり真心に突き刺さる感覚が襲った、実際にはそんな事はないのだが真心の心はそんなイメージによって酷く傷つけられた。


「うう、これからだもん、これから大きくなるもん」

「……マモノの力で背でも大きくすれば」

「それはもっと負けた気がするのー!」


 そんな真心に向かい俊介が明確な具体策を出す、ぶっちゃけ可能である。

背を大きくする魔法を使うマモノを出せばいいのだから、なんだったら逆も出来るし豊胸、ダイエット、なんでもござれのマモノだって作れるだろう、ダンジョントレーナーの想像次第で多くの可能性があるのがマモノであるからだ。が、真心はその力を使い背を大きくするのは負けた気がすると一蹴するのであった。


「真心ちゃん、機嫌出して、ほらたこ焼き奢ってあげようか?」

「ごはん買えばご機嫌になるほど単純じゃないもん」

「それじゃどうしたら機嫌なおしてくれるかな?」

「しーりーまーせーんー」


 あの後、別の女子生徒に料理当番を変わった後、女神が真心に気づくと同時にむくれる姿に先の言葉を聞かれていたのかと顔をしながら、ご機嫌うかがいをしていた。

 まあ、そのご機嫌うかがいは徒労に終わっており、真心は顔を膨らませて不機嫌なままだ。


「真心ちゃん、私も話題振ったのは悪いし、そろそろ、ね」

「むー、空ちゃんに免じて今日はこれくらいで許します」

「わー、ありがとう真心ちゃん! はぁ、でも怒ってる真心ちゃんも可愛い」


 不機嫌な真心の隣には女神だけでなくメイド服姿のままの空も一緒にいた。

元々、真心のメイド服の話を始めたのは空だったので自分にも落ち度があると真心を宥めてやれば、真心は空に甘い所があるゆえか、機嫌を一定まで戻す。

のだが、女神のいらない一言でまたしても真心は不機嫌モードに戻るのだった。

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