文化祭初日

 真心達の文化祭が始まった初日、真心はと言うと。


「私もメイド服着たかったなー」

「くっちゃべってないで手を動かせよな」

「はーい」


 焼きそばを焼いていた、隣では同じように俊介も焼きそばを焼く。

初日の調理係に任命された二人はカーテンで仕切られた調理スペースで来た客への焼きそばを随時作っているところであった。それもかなりの量をだ。

では、何故こんなに繁盛してると言うと。


「あの子めっちゃ可愛くね」

「写真撮らせてくんねーかな」

「珍しいよな、ハーフの子かな?」


 ひとえに空と言う日本では珍しい褐色の肌をした少女がメイド服を着ているという非日常感からであろう、この高校は外部からも問題行動を起こさない限りは入る事を許されている、あまり校則のきつい高校ではなく。その為、物見遊山、ナンパ目的、暇つぶし、様々な理由で色々な人が来ているのだ。


「空ちゃんこんにちは焼きそば貰える、後写真いいかしら?」

「あ、凛子先輩こんにちは、その写真はご遠慮しておりますので」

「あらそう残念ねとても可愛いのに、仕方ないから瞼に焼き付けるわ」

「その、凛子先輩、ち、近いです」

「真心ちゃんと劣らず貴方も可愛いわね、今度家に遊びに来ないかしら?」

「あうあう」


 提供スペースには凛子が空に近づきその顔を持ち上げてじっと見つめる。

今日も今日とてナチュラルに女性を口説いていた。周りの反応はと言うと。

同級生であろう三年生はまーただよという顔、多くの真心達のクラスメイトは凛子の姿を見て格好いい素敵だとか、空が羨ましいそんな感じである。

そんな凛子も接客の迷惑になるのも悪いのでささと身を引き、席に着く。


「おう、伊藤それと安達さん、そろそろ変わろうか」

「頼むわ、昼頃に知り合いが遊びに来るんだ」

「あ、おねがーい」


 裏では俊介と真心の代わりにと二人ほど男子生徒が入って来て変わる事に。

ちなみに真心の仕事は今日はこれで終わり、真心の仕事は全て午前中となっている。

裏から顔を出すと、その姿はすぐにとらえられてしまう。


「あら真心ちゃん、こっちこっち、シフト終わったの? 私は教室の巡回中なのここのメイドさんは皆可愛いわね、特に空ちゃん、あ、でも私的一番は勿論真心ちゃんよこの抱き心地、もう最高」

「凛子さん、暑いです、後、人が見てますので」


 凛子は真心が出てきたのを目ざとく見つけると、足音も無く真心の後ろから抱き着き、おもむろに頭を撫でまくる。


「ねぇ、安達さん、その先輩連れて他の所に行って貰えないかな? その……ね」

「あ、うん、凛子さん、私菖蒲先輩の所行こうと思うんですけど」

「あの白い子ね、あの子もいいわよね、儚げに見えて結構強かそうな所のギャップがとてもいいわ」


 クラスメイトにこれ以上は色々と面倒になりそうだと思われ、制御が出来そうな真心に凛子を教室から出してもらうよう頼む、真心もそれを拒むことなく。

凛子を伴い教室を出ていく、目指すは菖蒲の出し物がある二年生の教室だ。

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