ダンジョンでも文化祭計画 後編

 シスタが次に向かったのは今日も広がり続ける広大な畑の一画の小さな森の一軒家


「シャルル様、いらっしゃいますか」

「おや盟友シスタ、珍しいのニャ、真心様は一緒じゃないのニャ」

「あら、こんばんはシスタさん、どうぞ」


 一軒家から出てきたのは紳士服を着た猫の妖精ケットシーもといシャルル。

その後ろからは自宅から直接シャルルの家に繋いで来たのであろう菖蒲も一緒にいたシスタはお邪魔しますの一言と共に部屋へと入っていく、こじんまりとした小屋の中は二人分の椅子にお茶を入れる為の食器類以外には様々な雑誌、中身は科学雑誌と絵の雑誌が半々が入った本棚などが揃っていた。


「今日は何の用で来たのかニャ? ま、座るのニャ」

「失礼いたします、今日は真心様から聞いた文化祭なるもののお話を」

「それなら吾輩も先ほど菖蒲様から聞いたのニャ、向こうの世界では面白そうな事をしてるのニャ、吾輩も行ってみたいのニャ」

「神様の約定があるので無理でございますよ、ですが変わりにこの島で文化祭をしてみないかという計画を立てております」

「あら、それはとても面白そうですね、シャルルはどう思いますか?」

「ふむ、今一度吾輩らマモノの結束力を高めるのに同じ催しを協力して成功させるのは大きな意味を持つのニャ」

「真心さんはそこまで考えてないと思いますよ」

「ええ、皆様と楽しい事がしたい、その一心だけで御座いましょうね」

「そういう側面もあるってだけで、真心様においてはそれでいいのニャ、だから吾輩含め皆真心様が好きなのニャ」


 シャルルもやはりというか当然の如く菖蒲から文化祭の話を聞いていたのか、面白そうと評し自分も行ってみたいと思い焦がれる、だがまぁしかしと言うべきか神の約定の下、向こうの世界への干渉が出来ないマモノは思い焦がれる事しか出来ない。

だからこそかな、今回の文化祭にシャルルもまた乗り気であった、計画的な一面もあるみたいだが、真心はそこまで考えてないと三人で笑い合う、まぁそこが真心のいい所だとも。こうしてシャルルの協力の話も折り合いがついたのでおそらく次で最後の場所であろう所へと飛ぶことにする。


「あ、しすた、こんばんは」

「こんばんはアンナ、今日も元気そうですね」

「うん、サンちゃんといつもげんきだよ」

「krrr」


 最後に飛んだのは大きな湖の畔に建てられた一軒の小屋の横で一人遊びだろう土いじりをしていた金髪褐色という珍しい姿をした少女アンナ、そしてそれを見守るこの島にて最強の一角を為す雷を操り大空を舞うアンナの忠実な僕たるマモノ、サンダーバードがその土いじりを覗き込んでいた。


「そうですか、真心様から色々お話を頂きましてね」

「まこさまが? どんなおはなし?」

「ええ、文化祭といいまして……」


 シスタはアンナにこれまで話をしてきたマモノ達同様に文化祭の話をし始める。

アンナはその話を聞くだけで目を輝かせ次は次はとシスタに話を急がせる。

やがて話終わるころには日が暮れてしまっていた。


「と、このような感じで御座います、これを島でやると言う事ですが」

「すごい! おもしろそう! やりたい!」

「ええ、既に虎徹様がエルフ様達と、ヴィオ様やエルザ様フェアリー、それにシャルル様と皆様が祭りをしようと動き始めてます、アンナ様も是非楽しみにしててくださいね」

「わたしも、なんか、やりたい!」

「おや……そうですね、では……なんて、どうでしょう」

「それにする!」

「きっと皆様驚きになられるでしょう、それでは手を洗ってお食事にしましょうか」

「はーい」


 どうやらアンナも祭りを楽しむ側ではなく参加する側で出たいのかシスタの知恵を借り何か出し物をする事に決めた、こうして島を上げての一大イベントの計画が進み始める、そして現実では真心の学校の文化祭の当日がやってくるのであった。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る