毒使い虎徹

「虎徹様、敵が見えて参りました」

「ふむ、シスタ殿、内訳を頼むでござる」

「槍兵3000、弓兵3000、盾兵2000、工作兵2000でございますね」

「攻城兵器の類は?」

「ございますね、トレビュシェット、攻城塔、破城槌盛りだくさんです」

「大砲や爆弾でないだけましでござる、こっちは3000、まーた3倍以上でござるな」


 安住城はかつての土塁を積んでハリボテ同然のちゃちな天守だけの見た目を替えていた、虎徹とシスタが立っているのは、堀の前に立てられた10mを超えるかという程の城壁であった。改修した土塁の上に更に城壁を建てたのだ。

建材は以前にゾンビと一緒に堀を埋めた大岩と歩き茸の巣を増やすときに出た土だ。

更にハリボテ同然の建物全ても改装され立派な天守閣が出来ていた。


「敵、トレビュシェットの投石を発射してきました」

「ふむ、大分遠くから飛ばしてくるでござる300mは距離があるでござる」

「どうなされますか?」

「トレビュシェットが突破しようとした壁の部隊は退却、それ以外は待つでござる」

「……敵、槍兵部隊と弓兵部隊の一部が攻城塔と共に進軍してきました」

「ふむ、総員! 突出してきた槍兵、弓兵部隊にを食らわせるでござる!」


 トレビュシェットから投石が為される、それにより城壁が若干崩れてしまう。

この投石を受けた虎徹は城壁にいたゴブリン達に退却命令を出す。

 そして次に槍兵と弓兵が来た時、ゴブリンに二つ目の指示を行う。


 その指示を受けるとゴブリン達は城壁に併設されていたであろうカタパルトに謎の壺を乗せ、反対側を思い切り木槌で叩き空へと飛ばしていく。それらは丁度、城壁に張り付こうとしていた槍兵達の下に落ち、盛大に割れる。

 そして盛大に割れると同時に兵士達がどんどんと倒れ伏していくのであった。


 その報告を受けて凛子は驚愕していた。


「何の間違いかしら? こっちには攻城兵器が沢山あるのよ」

「その攻城兵器は城壁を壊すのに至らず、攻城塔も城につけないとの事です」

「詳しい戦況を知りたいわ、ミレーユ、シータを連れてきなさい」

「畏まりました」


 ほどなくして前線からシータが連れられ、現在の状況を教えてくれる。

後方からトレビュシェットの攻撃で城壁はだんだんと剥がせているが。

それ以上に空から謎の壺が飛ばされ壺の中の煙だか何かを吸うと痺れて動けなくなりその隙に矢や投げ槍でトドメを刺され、負傷し動けなくなっているようだ。

死者こそいないが、戦闘が続行できない程の重傷を受けている者も出ているとか。


「煙か……毒かしらね? だとしたら真心たんたら可愛い顔してエグいじゃない、ちょっと興奮しちゃう、そろそろ日が暮れるわね、ミレーユ、アルマとベンナに撤退の連絡を」

「はい、凛子様」


 凛子は日が暮れれば戦いは厳しいと見て、二人に撤退命令を出す。

別段、兵士がいくら死んでも構わない、彼らは自分の異世界に戻ればいくらでも補充できる、だが三人は別だ、補充も替えも効かない大切な存在。

 細心の注意を払い、戦を運ばざるを得なかった。


 しかし、この戦はこの夜、あっけなく幕引きとなる。

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