闇夜の化け猫

「凛子様、ベンナ様が先ほどから嘔吐を繰り返しております」

「ベンナだけではないです、凛子様、兵の中にも同じように」


 凛子が休憩する天幕へ更に頭を抱える報告が為される、兵士の多くが下痢や吐き気、発熱。と病気の状態を訴える報告がミレーユとアルマの二人からなされたのだ。

食中毒? 風土病? 何が原因なのか分からないが、負傷者に次いで更に戦闘が出来る兵が減ってしまったのだ。


「後戦える人員は?」

「後5000ほどかと」

「それだけいれば、トレビュシェットで壊した箇所から雪崩れ込めばいけそうね」

「でございますね、ベンナの解毒についても聞きたいので必ずや突破して見せます」

「アルマお姉さま! 凛子様! て、て、敵襲です!」

「な、なんですって!? て、敵の数は!」

「わ、わかりません、夜の闇に交じって、何が何だか」


 シータが天幕へと転げてしまいそうな程の勢いで入ってくると敵襲の報告を聞かされる凛子は確信してしまう、このダンジョンバトルはもう負けが決まったと。


「ニャッニャッニャッ、今頃敵は吾輩の召喚した猫により大混乱ニャ」

「さてと、吾輩も降伏勧告をする為、向かうのニャ」

 

 闇夜の中、ケットシーは自分で召喚したサーベルタイガーに跨り微笑みを浮かべ

勝利を確信しながら悠然と敵陣へとサーベルタイガーを進ませる。


 これが虎徹とケットシー二人が考えた策、強固な安住城でゴブリン達が籠城し毒で弱らせ。

そして夜になった所を森の中からケットシーが夜行性の猫達に襲わせるという物。


 敵陣は大混乱であった、戦える物が何人かでサーバル、カラカル、オセロット等の大量のネコ科に群れで襲われており、既に何人かはかみ殺されていた。

 ケットシーが乗るサーベルタイガーも勿論襲われそうになるが。

ケットシーが金縛りの魔法を使いサーベルタイガーがそれを引き裂いてしまう。

やがて、一番大きな天幕へと何も言わずに入っていく。


「…………サーベルタイガー、それに貴方は?」

「初めましてだニャ、吾輩は猫の妖精ケットシー、貴方がこの軍の総大将かニャ?」

「ええ、そうよ、百合野凛子、敵本陣の真ん中に何しに来たのかしら?」

「戦を止め、負けを認めるニャ、この勝負、真心様の勝ちだニャ」

「そうね、しかしこの戦運び安達真心、とても戦上手ね、そそるわ」

「毒と夜襲かニャ? だとしたら、それは盟友虎徹と吾輩への言葉になるニャ」

「あらそう、だとしたら、その虎徹と言う輩と貴方、反吐が出るほど腐った性根ね」

「吾輩と盟友虎徹のした事となったら、その変わり身とは、まぁいいニャ、毒は嘔吐の症状が無くなるまで吐いて、その後食事と水分を補給して安静にすればいいニャ」

「そう、案外強い毒ではないのね、それじゃ帰ってくださる?」

「勿論だニャ、猫達よ世話になった杖に還ってくるニャ」


 凛子が負けを認めると、ケットシーは兵士を襲う猫を次々と魔力に戻していく。

そして最後のサーベルタイガーが消えたと同時にケットシーも瞬間移動で逃げ去る。

この日、凛子の負傷者多数、重傷者約2000、死者約2000と大敗を喫したのだった。

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