闘い終わって

 三治は上がってきた太陽を苦々しく見つめていた。


「ふむ、夜が明けたでござるな、とても清々しい気分でござる」


 ゴブリンのそんな一言に対してこっちにとっては憎々しいほどに眩い朝日だと言わんばかりだ。しかしここで何かぼやけばこの全裸の筋肉野郎に切り殺される。

そんな恐怖から何も言えずに顔だけを歪ませる。


「ゴブリン様、真心様の命によりお迎えに参りました」

「おお、シスタ殿、これは助かるでござる」

「口調が随分とお変わりになられましたね」

「うむ、なぜだか、語尾にござるをつけないとむずがゆくなるのでござる」

「それと……今の貴方にはこの姿がお似合いでしょう」

「なんとしっくりくる衣装でござるか、ありがとうでござる」

「うら若き乙女である真心様や空様に男の裸体を見せない為です」


 マインより先に来たのはシスタであった。どうやら真心に言われてゴブリンの迎えに来たようで、その口調を指摘すれば、サムライゴブリンはなぜでござるかなと言いながら答える、そして裸で真心の前には出せないと思ったシスタは指を鳴らすそうすると、ゴブリンに誂えたように剣道の胴着と袴がゴブリンに着させられる。


「ただいま、三治ちゃん、撤退命令は出してきたわよ」

「そうか、僕等もダンジョンに帰るぞ、次は殺すぞ似非侍」

「とっとと帰るでござる、お主の顔はもう見たくないでござる」


 三治は悪びれもせず、最後にサムライゴブリンに悪態をつきながらマインと共に自分のダンジョンに帰ったのだろう、その場から消え去る。

同胞を何人も失った怒りは冷めていない、三治が帰る間際の悪態に苦虫を潰した顔でそう呟く、そしてシスタに連れられ砦へと戻ってくる。


「あ、戻って来た、おーい! ほら、空ちゃんも」

「本当だ、おーい!」


 砦の中は燦燦たる様子であった。折れた剣や槍、弓矢の数々。

地面には血の染みがいくつも転々とある。

ゾンビで出来た橋は岩だけを残し崩れている三治の撤退と同時にゾンビは全部消えたのだ。シスタとサムライゴブリンが正門をくぐり砦に入ってくる。

それと同時に真心と空が駆け寄り、真心はサムライゴブリンにすぐさま声をかける。


「凄い、凄いよ! 覚醒とか、すっごい格好いいね!」

「拙者この地を守りたい一心で戦っただけにござるよ」

「なんか、口調変わってるね、サムライだから?」

「かもしれぬでござるな、されど、拙者は拙者のままでござるよ」

「そっかそっか、おっと、ほら空ちゃん、空ちゃんも」

「空様……拙者、約束を果たすべく死地より生きて帰って来たでござる」

「うん、おかえりなさい、サムライゴブリン」

「……ただいまでござる」


 こうして初めてのダンジョンバトルは勝利で終わったのだった。

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