10話 放出
登場人物多くてすみません。主要人物は作中で何回も出てくるのであんまり覚えなくても大丈夫だと思います。
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三日目の練習。この日は新入生が殆ど加入したと言う事で自己紹介をいつもの公園でする事になった。
「じゃあ、まずオレが行こう!三年の国背です。一応中学生総括をやってます。よろしく。昨日食べた食べ物は餡パンです」
何だその独特な自己紹介。好きな食べ物では無くて、昨日食べた食べ物なのか……それに、晩御飯じゃ無くて朝ごはん?なのか?国背先輩はウケを狙ったのか最初からぶっ飛んだ自己紹介を始めた。
「はい、じゃあ次」
他の学年のウケが悪かったのか、国背先輩は恥ずかしそうに次を急かした。その声に佐救間先輩は苦笑いを浮かべながら立ち上がる。
「三年の佐救間です。趣味は猫吸いです。よろしく!」
佐救間先輩は親指を上に立てて白い歯を光らせた。大喜利かよ!?そして、自己紹介バラバラなのな……。あとこの微妙に反応し難い趣味……どう反応したら良いんだ……。
最初の挨拶は三年生七人が述べた。リーダーの国背先輩を中心に全員個性的な挨拶を述べていた。その挨拶の統一感は全くと言っていい程無く、本当に大喜利をやっている様な感覚だった。若干下ネタも入っていた為、そこも割と楽しめた。大声で趣味はオ○ニーです!って言った
松村先輩は身長は低いが、体付きはガッシリとしている。長い髪を後ろで束ねており、コミカルなキャラからランプの魔人などを連想させる人だ。
「じゃあ、次は我の出番であるか」
「???」
三年生全員の挨拶が済むや否や顔を左手で覆い、立ち上がった人物がいた。絶対ヤバい人だ。
「
「ゑ?我の力が……」
「「鎮まれよ!」」
「ぬわっ!?」
何……?カオスすぎて全く状況が分からないんだけど……。立ち上がった厨二病を患っているのは二年生の戸山先輩だ。黒い前髪で目を隠し、手には常に穴あき手袋を嵌めている。それを独特のキャラで鎮めた二人は
二年生総勢九名の挨拶が終わり遂に俺達の番が来た。明道は相変わらず真面目な挨拶、茂木は下ネタ、材木は……独特な挨拶をこなした。茂木のメンタルの強さにはびっくりする。最初からここまで堂々下ネタを言える奴は滅多にいない。俺はそう思った。材木のワンゲル部で鶏肉のタピオカ漬け饅頭を作りたいって言うのは本当に意味が分からなかった。
そこで俺の番が回ってきた。
「あ、一年の山川進です!自然が好きです。僕は食べ物の好き嫌い、アレルギー等はありません!よろしくお願いします!」
「「よろしく!」」
俺は周囲に拍手と歓迎を受けて照れながら地べたに座る。無難な挨拶だったが、これで良いのだ。特に俺は目立ち訳では無いのだ。一人称を僕に変えているのは先生に対してもそうだが、先輩に対して失礼のない様にと考えての事である。
俺に続いて他のメンバーも次々と無難な挨拶を述べた。やはり最初からぶっ飛んだ挨拶をするのは茂木や材木位しかいない様だ。今年加入した一年生の数は俺を含めて十二人。昨日のクライミングの時に加入した新入生をざっくり説明すると、元からスポーツをやっており、体力がある
「よし、自己紹介も終わった所だしサッカーでもするか」
時は既に五時半を過ぎており、自己紹介を一時間近くしていた事が窺えた。その為、今日のサッカーは控えめになるだろう。サッカーのいつもの流れを知っている俺達はまだワンゲル部のサッカーを体験していない同級生達にルールを教えながらじゃんけんをする事にした。
「おい、お前。じゃんけんしようぜ」
「う、うん」
俺に話しかけて来たのは、早瀬矜恃だ。初対面でお前とは……失礼な。
「じゃんけん。ポン!」
「お前の負けな」
また負けた。俺はこんなにじゃんけんが弱かったのだろうか?その時遠くから声が聞こえた。
「すみませぇえん!
雲井曖気。コけた頰が特徴的な人物だ。元気は良いが時間にルーズな印象を受けた。だが、最初だ。ただ単に入部するのに時間がかかっただけだろう。雲のようにふわふわとした印象を受けた人である。
俺は前回のサッカーから学んで眼鏡を着用していた。運動する時は眼鏡を外しておこうと考えていたがやはり良く視界が見えないとこの前みたいにボールを見失って転んでしまう。そんなヘマはもうしない。
試合開始の合図と共に俺はボール目掛けて走り出した。その瞬間、速瀬の黄色い目が光った。こいつ……!強い!俺はその瞬間底知れない寒気を感じた。速瀬がボールを取ると、その足捌きは颯先輩にも劣らない、一人、二人と一年生を追い抜いていき、上級生すら追い抜いた。
「速瀬!パスだ!」
「いいや。俺がやる!」
颯先輩が速瀬にパスを求めるが速瀬はそれを無視して俺達のゴールめがけてシュートを放つ。個人プレー主義かよ!何かあいつには負けたくない。速瀬はプレイの技術は上手いものの戦術はボロボロだ。
俺は速瀬が飛ばしたボールを高い身長を生かして受け止めて自らの脚に運んだ。
「ナイスだ!山川!」
俺の正面からは青山先輩。左からは材木。材木ならば行ける!俺はそう思って左に向かって進んだ。そして、ボールを遠くに飛ばそうとサッカーボール目掛けて足を全力で振り抜いた。その時俺は周囲など見る余裕が無かった。ただサッカーボールに集中していた。
「うわっ!?」
「!?」
材木の驚いた声が響き、それと同時に俺の頭がボールに弾かれ、後方へとバウンドした。そして、俺の視界は真っ赤に染まった。眼鏡から血が出た。俺はそう感じ、目を覆う。何が起こったのか分からなかった。
「大丈夫か!!!」
国背先輩が顔を覆う俺の元へと駆けつけ、俺の手を退けた。その瞬間国背先輩の顔色が一気に変わった。
「大丈夫です」
「直ぐに保健室に行け!」
俺は顔色を変えた国背先輩を不思議に思い、首を傾げる。
「え、でも痛みは無いですよ」
そう。痛みは不思議と無かったのだ。だが、手を顔から離した俺の手には大量のドス黒い血が付着していた。
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