酉 ―トリ― (3)

 干支えとの酉の話の続きであるが、もともとこの干支の話題は年賀状のネタ探しのために始めたものであった。


 自分は昆虫が専門なので、年賀状に使えるような鳥の写真は持っていない。

 鳥は日本に600種以上がいる。海外の鳥でも年賀状に使っても問題はなさそうなので、ダチョウでもヒクイドリでもハシビロコウでも好きな鳥を使えばいいだろう。


 酉年の年賀状といえば、鳥類が専門の人や調査会社から送られてくる年賀状では猛禽類、オオタカとかミサゴとかが使われていることが多い。

 しかし、通常は年賀状のネタとして使われるのはニワトリである。


 たしかに鶏肉や鶏卵としては身近ではあるが、成長したニワトリを見る機会は現代ではほとんどないだろう。

 昔は縁日でヒヨコを売っていたそうだが、筆者の記憶には金魚とザリガニぐらいしか残っていない。当時は神戸の街なかに住んでいたので、そこで親まで育たれても困るというのもあったかもしれない。

 今でも現場で田舎に行くと、近くの民家から鳴き声が聞こえることはたまにある。都会であれをやられるとトラブルのもとでしかない。


 一度だけ、昆虫調査中に山道を歩いているニワトリに遭遇したことがある。予想外の展開だったので、近くにいた鳥類調査員に聞いてみたが、どこからか逃げ出したか放されたニワトリとのことであった。

 その後、それが鳥類調査結果に加えられたか否かは聞き忘れた。


    ◆


 昆虫調査員である筆者は、干支がその名に入っている虫を年賀状に使うことがよくある。送る相手は選ぶが。

 「トリ」だけでなく、その他鳥の種名を関するものとしては、まずカラスアゲハやツバメシジミなどの蝶類が挙げられる。


 他には、鳥の巣に生息する虫も少なくない。

 例えば、アカマダラハナムグリ(アカマダラコガネ)というコガネムシの一種は、成虫はカブトムシやカナブンなどと同じように樹液に集まるが、幼虫は鳥の巣の中で巣材などを食べて育つ。

 猛禽類の巣を調査したときに見つかることが多いが、コウノトリの巣から見つかった例もあるらしい。

 これも最近減少している種で、筆者は樹液に来ている個体をたまたま一度見つけただけである。

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