KY

 皆さんはKYの二文字を見て、一体何を思い出されるだろうか。


 若者用語というか、ギャルの用語――筆者はそのあたりは専門外であるが――として有名になったので、そちらの方をまず思い出す、というかそれしか知らない人も多いだろう。


 頭文字を取ってKYとなる言葉はいくつもあるが、この場合Kuuki Yomenai、略してKYである。

 いわゆる空気の読めない言動やそれを行う人、もしくは『空気読め』のいう命令の形で使われることもある。


 例によって前置きが長くなってしまったが、いよいよ建設現場などにおける KY の話である。


    ◆


 さて、建設現場や工場などで使われる言葉として、KYもしくはKY活動というものがある。


 それはもちろん空気読めないではなく、ある意味それと対極に位置するものである。


 KYとはKiken Yochi、こちらもまさかの日本語で、危険予知の頭文字であった。


 簡単に説明すると、毎日の現場作業の開始時に、その日の作業から起こりうる事故や危険な状況を予想し、それに対する対策を話し合い、事故を防止しようというものである。


 我々の環境調査の仕事も道路やダムなどの建設の準備段階で発生するものであるため、建設業界に近いシステムが使われている。

 とは言っても、工事みたいに大型重機を使うような作業や、足場を組んでの高所作業はもちろんない。


 というわけで、危険予知のやり方自体は同じだが、そこで挙げられる危険を伴う行動や、それに対する対策が異なってくる。


 具体的には、移動時の車による事故防止、山地斜面における落石・滑落注意、河川における水深や流速などに対する警戒、立ち入り禁止区域の確認、そして、危険生物に対する警戒などが挙げられる。

 時にはすでに工事が始まっている場所の周囲で調査を行うこともあり、そういう場合には稼働中の重機に近寄らないとか、運搬中の荷物の下に入らないとか、普通の工事現場と同じような注意事項も加わってくる。


 そうして、まず走り入る現場の状況から予想できる危険を調査員たちで挙げる。

 そこからそれぞれに対する具体的な対策を考え、実際にどのように対処するかを話し合って決定する。

 最後は会社によるが、指差し確認(ただし対象がその場にないこともある)をしつつ、『●●ヨシ!』などと発声して終わり。

 この指差し確認、最近何故か猫のキャラクターがやっているのをよく見かける。


 このあたりは、長年やってれば経験で危険事項はわかるだろうと思われるかもしれないが、逆に慣れてしまってかえって気が抜けてしまうこともある。

 それ故に毎日の事故防止には、毎日のKY活動が必要であると言えるだろう。


 とはいえ、注意をしているつもりでも周囲の状況に気を取られて警戒がおろそかになる。


 幸い大事には繋がっていないが、足場の悪いところで転んだりは良くある。

 さらには、危険生物。幸いイノシシやクマの被害にはあったことはない。一番注意すべきは蜂かもしれない。二十数年で数回と警戒しているせいか多くはないが、それでも刺されることはある。

 ハチ刺されについては、また別途述べることにしよう。


 








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