蜂刺され
野外で活動をしていれば、危険な生き物に遭遇することも少なくない。
クマやイノシシ、マムシなども危険であるが、今回の話の対象は危険生物にして調査対象、昆虫のハチの話である。
昆虫調査などをやっている以上、ハチ相手の対処法ぐらい心得ているが、さすがに絶対安全などとは言えない。
何度かハチに刺された経験もある。
ただ、これは自分の経験であるが、人によって体質の違いにより異なった症状が出ることがあり、最悪の場合には死に至るので、異変を感じた時は医師に連絡するのが一番である。
また、具体的な対処法については、専門外のためここには書かない。実際の対処法については、専門の書籍かホームページ等をご参照いただきたい。
まあ、一番の対処法というか対策は蜂に刺されるようなところに行かないことであるが、やっぱり昆虫調査員である自分はそういうわけにはいかないのである。
◆
というわけで筆者の蜂に刺された経験のうち、記憶に残っているものをいくつか書いてみる。
なお、大型のスズメバチ類およびミツバチ類に刺されたことはない。これらの種は社会性で、特に巣に近づいたりすれば集団で襲われることがある。またスズメバチは体が大きく、刺された際に注入される毒液の量も比較的多い。これらの種については、ちゃんと警戒して対処している。
ただそれ以外の種については、比較的安全と油断があるようだ。
・キボシアシナガバチ
アシナガバチ類はスズメバチ科であるが、危険度は大型スズメバチ類に比べて下がる。キボシアシナガバチはその中でも小型の種である。とはいえ社会性のため集団でみられることがあり、また単独であっても決して油断していい相手ではない。
アシナガバチ類は木の枝に巣を作る。その時は、ヤブを抜けようとして見づらいところにあった巣に当たってしまったようだ。
幸運というべきか、まだ時期は春で巣の規模は小さく、ハチも数匹がいた程度であった。
ただ不覚にも発見が遅れ、なんだか手がチクッとしたなと思って見た時にはハチは左手の外側、小指の付け根近くに止まって針を突き刺していた。おそらく被害が大きくなったのは、刺されていた時間が長く、注入された毒液の量が多かったためと思われる。
ただ意外にも、その時には痛みは大したことはなかった。傷口を噛むようにして毒を絞り出し、手が少し腫れてきたので冷やしておいた。それで問題ないだろうと思っていたのだが……。
翌朝、左の手首から先が、グローブのように腫れ上がっていた。腕時計の穴2つ分、手首が太くなっている。
前夜腕時計をして外して寝てよかった。さすがに蜂に刺された後は外してはいたが、つけたままだったら血流が止まってもっと被害は拡大したことだろう。とはいえ指が思うように曲がらず、ものが持てない。少し熱っぽくて気分が優れないものの、痛みはすでに引いていた。
昆虫の採集調査については、一応最低限のことはその状態でも何とかできた。
車の運転についてはさすがに危険なので、それ以降の現場中は他の社員に全て任せた。
結局、まともに運転その他作業ができるようになったのはほぼ一週間後であった。
・クロスズメバチ
一般にスズメバチと言われて思い出す黄色と黒の大型種ではなく、働きバチの体長が1センチほどの小型種。多くの種では体の大半が黒色で、白色の細い縞模様がある。
一部地域で食されている『蜂の子』の材料になるハチ、といえばわかる人もいるのてはないだろうか。
捕虫網に入れたものを殺虫ビンに移そうとして、うっかり刺された。
だが、たまたま相性が良かった(?)のか、数十分ほど少し痛かっただけで、すぐに痛みは引き、その後の後遺症もなかった。
・オオモンクロクモバチ
狩りバチという、 獲物を捕らえて巣に運び込み、幼虫の餌とするタイプのハチ。また、社会性のミツバチやスズメバチとは異なり、単独で狩りをする。
昔の図鑑ではベッコウバチ科のオオモンクロベッコウという名で載っているが、十数年ほど前に科全体が改称された。その名の通りクモの仲間を獲物とする。
これも捕獲しようとしてうっかり刺された。痛みはすぐに引いたが、その後1週間ほど
◆
病院に行けば、血液検査でハチ毒のアレルギーがあるかを調べてもらえるらしい。
とはいえ、自分はそれを受ける予定はない。以前は仕事柄検査を受けておいた方が良いかと考えたこともあるが、結局アレルギーだからと言って仕事をやめるわけにもいかないのである。
ここまで数十年やって来たので、体力がなくなるまでは今まで通り注意しながら調査するしかなさそうである。
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