酉 ―トリ―
十二支シリーズ、10番目はトリ、つまり鳥類だ。
鳥類と言うと、分類学的には脊椎動物門
最新の分類によると鳥類が恐竜の末裔であるという話は結構広まっているが、鳥と恐竜の境目というのがはっきりしていないようだ。まあ、まだ見つかっていない絶滅種とか、あるいは化石を残さずに消えてしまった種などもいるだろうから、そのあたりの分類はこれからも変わるだろうし、永遠に全貌が明らかになることもないのかもしれない。
恐竜の中でも鳥の祖先とされるのが、獣脚類の一部だ。獣脚類というとティラノサウルスなどの大型肉食恐竜をまず思い出すだろうが、鳥類の祖先はそれとはまた別のグループだ。
このため、これらの恐竜から見ると、同じ爬虫類である現生のトカゲやヘビ、ワニやカメよりも、鳥類のほうが近縁ということになる。
鳥類を鳥綱ではなく、爬虫綱に含めるという意見の学者までいるらしい。
ただ、繰り返すがこのあたりの上位分類は専門分野によって見解が違ってしまっている。
wikipediaをみても、鳥類を調べると鳥綱の上に獣脚類という分類群があるのに、獣脚類をみると爬虫綱竜盤目獣脚亜目となってそこに鳥類が含まれる、などということになっている。
ややこしいので、分類の話はこれくらいにしておこう。
◆
さて、筆者は昆虫担当なので直接関わることは少なかったが、環境調査にはもちろん鳥類の項目もある。
鳥類全般を対象とした調査だけでなく、重要種のみを対象とした調査もある。その中でもよく行われていたのが、ワシ・タカ類――ただしトビは除く――を対象とした猛禽類調査だ。
猛禽類は生態系の頂点に立つ捕食者なので、個体数は非常に少ない。
昆虫類と違い、絶滅が危惧される猛禽類が例えば道路建設予定ルート周辺で巣を作っていることが判明した場合、ルートが変更されることすらありうる。
というわけで、一般種調査や専門家への聞き取り調査などで猛禽類の営巣の可能性があるとされた場合、営巣地もしくはその可能性のある場所の周辺で猛禽類調査が実施されることになる。
単に対象種がいるかどうかではなく、繁殖期の前、主に交尾期から巣作り、そして子育ての時期に調査が行われる。
範囲も巣の周りだけでなく、その周辺の餌場というか狩場の状況も合わせて調査が行われる。
当然広範囲を一人ではカバーしきれないので、数人、現場によっては十数人で巣の周辺を取り囲むようにして調査定点が配置される。
フリーランスになってからは鳥類調査に参加していないので、近年はどう変わっているかは不明であるが、少なくとも携帯電話がなかった時代には、あるいはその後も現場では電波状態の悪いことも多いので、地点間の通信にはトランシーバーが使われていた。
ただし、これだと同じ周波数を使った場合、機械があれば誰でも聞けることになる。盗聴というと聞こえが悪いが、道路工事ほかの開発では、反対派もいたりする。そうでなくても、誰かに聞かれてネットに上げられたり、役所や警察などに問い合わせられたら面倒だ。
このため、猛禽調査では暗号が使われている。
暗号といっても、鳥の種名や、行動、方角などが別の単語に置き換えられる程度のものだ。
暗号は調査責任者により決定され、調査回ごとに変更される。そして調査員には対応表が配られる。その単語は、植物や食べ物の名前などが多い。要は責任者の趣味である。例えば、オオタカが桜、ハヤブサが梅などといった感じだ。
変わった例では、暗号にガンダムのMSが使われたこともあった。
これで猛禽が種数、個体数ともに多く見られた日には、調査範囲上空はグフやドムやゲルググが飛び交う戦場と化す。
モビングという言葉がある。
本来は食べられる立場の小型動物が、主に群れで捕食者を攻撃もしくは威嚇して追い払う、という行動だ。
鳥類調査をしていると、主にカラス類が猛禽にモビングを仕掛けていることがよく観察される。
このため、カラス類も先述の暗号に含まれているのだが……。
先のガンダムの例に当てはめると、
余談であるが、筆者はガンダムは初代(アムロ・レイが主人公のもの)を再放送で見ただけで、
それで、昆虫類担当の筆者がなぜこんなことを知っているかというと、会社員時代に鳥類調査の手伝いをしたこともあるからだ。
すでに書いた通り十数年前にフリーランスとなってからは鳥類調査にかかわっていないため、現在どうしているかは不明である。
長くなったので、鳥については複数回にわけることにする。
今回はこのあたりで。
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